change the world苦手なものはきっと、いつまで経っても苦手なままなんだって。 ─どこかでそう思っていたはずなのに。 ぼんやりと愛馬─ヒューイの世話をしていると、聞き慣れた声が後ろから聞こえてきた。 「あ、フロリーナさん」 その声に振り向くと、はしばみ色の髪をしたよく知った顔の青年─ウィルさんが立っていた。 姿を見た瞬間、びくりと身体が強ばるのが分かって。 ぎこちない動作で軽く頭を下げて、挨拶した。 少しでも距離を取ろうと、ほぼ無意識に身体が2、3歩後ろに下がる。 そんな私の様子を見て、傍へと近づこうとしていたウィルさんは、ぴたりと近づくのを止め、止まってくれた。 「ゴメン、ゴメン。弓兵が怖いって言ってたよな。これ以上は近づかないからさ」 安心してよ、と笑ったその表情に少しだけ、身体の緊張が解ける。 出来るだけウィルさんが持ったままの弓を見ないようにして、ありがとうございますと返した。 「………」 「………」 それきり、お互い黙り込み、ぷつりと声が途切れる。 何だか気まずくて、何か喋らなきゃと思うのに、何も言葉が出てこなくて。 はぁと大きくため息をついて、下を向いた。 ─…男の人はやっぱり苦手だし、弓なんて全然駄目なままだ。 「…そっか!」 思考の海に沈みかけていた私の耳に、ウィルさんの明るい声が飛び込んでくる。 驚いて、顔を上げた瞬間、弓が視界に飛び込んできて、思わず叫びそうになって口元を押さえる。 そんな私の様子に気付いていないのか、ウィルさんはぱっと笑った。 「友達になろうぜ!そしたら、きっと弓も怖くなくなると思うんだ」 名案だろ、と笑うその顔をきょとんとした顔で見つめる。 ─確かにそう言われれば、そんな気もしてきて、曖昧に頷き返す。 「えっと…は、はい…」 良く分からないままに頷いた私に、にっこりと笑ってウィルさんは高らかに宣言した。 「じゃ、今日から友達な!あ、でも友達なら『さん』付けで呼ぶのってなんか他人行儀だよなぁ…。あ、じゃあフロリーナって呼んでいいかな?おれの事はウィルで良いからさ」 一気にそこまで言って、お日さまみたいに笑うウィルさんにつられて、こくんと頷いた。 「じゃ、改めて。これからよろしくな、フロリーナ」 「は、はい。ウィル……さん」 やっぱりそう簡単には慣れなくて。 思わず付けてしまった言葉に、ふっとウィルさんが苦笑した。 それが何となく気恥ずかしくて、熱を持った頬を押さえながら、そのまま視線を下に落とす。 ─その瞬間。ウィルさんの手にしっかりと握られた弓が視界に飛び込んできたけれど。 …どうしてか、不思議と怖くなかった。 end. 烈火クリア記念で、何で支援がないんだ!と不服に思った二人。に支援的な話を書いてみた感じです。 余力あれば、三部作位で続き書きたいですね! |