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starmine




夜空を駆ける流れ星を今、見つけられたら何を願うだろう?



それは、きっと──…












静かな夜。
外を包む暗闇を部屋の中からぼんやりと眺める。
辺りには静寂だけが充ちていて、まるで時が止まっているように感じた。

「あ…」

ふと、何気なく見上げた夜空には、あたたかく優しく銀色に輝く月が辺りを煌々と照らしていた。

「…綺麗」

少しでもその光を近くで感じたくて、窓を開け放つ。
カタリと音を立て、窓を開け放つと、ふわりと優しく心地よい風が頬を撫でてゆく。

──穏やかな夜。
それは、記憶の底にしまっていた─…いや、しまおうとしていた記憶を鮮明に甦らせる。

あの日もこんな月夜の晩で。優しい月の光と穏やかな風が吹く中で、あの人は…






「……サザさん…」

「…明日、ここを発つ」

不意に告げられた言葉に、息が、時間が止まる。
ざぁと強く吹いた風の音で止まっていた時間が流れだしたように感じた。

─分かっていたはずの事実。…予想していたはずの言葉。

それなのに……。

「…泣くな、ステラ」

その言葉に慌てて頬を伝い落ちる涙を拭う。
けれど、拭っても拭っても涙は溢れてきて。

酷い顔をしているだろう自分をこれ以上見せたくなくて、視線を落とす。


──…分かっていたはずでしょう?
互いに歩むべき道が違うことは。


いつか必ずそういう日が来ると。
覚悟していた。分かっていた。


─…でも、本当は……。


「…サ、ザさん…」

途切れ途切れに名前を呼んで、視界の端に映った彼の手をきゅっと握る。

あたたかな、優しい手はすぐに私の手を握り返してくれて。

そんな優しさが、あたたかさが嬉しくて。
また涙が零れた。

「…ステラ。今日は月が綺麗だな」

「え…?」

不意に告げられた言葉に俯いていた顔を上げる。

見上げた夜空には数多くの星とあたたかな光を宿した月が優しく闇夜を包んでいた。

「本当、ですね…」

綺麗とため息まじりに呟いて、空を仰ぐ。
じっと空を見つめていると、きらりと一つの星が瞬いて、すっと光の線を描いて消えていった。

「今の…」

「流れ星、ですね」

珍しいその光景にじっと魅入ってしまう。
消えた光の線を瞳に焼き付けるように夜空を見上げていると、ふと隣から静かな声がした。

「願い事…」

「えっ?」

「確か流れ星には願い事をするんだろう?何か願い事したか?」

穏やかに微笑んで問い掛けられた言葉にしばし考え込む。
そういえば、星を追い掛けるのに夢中で忘れてしまっていた。

「願い事、し忘れてしまいました」

残念です、と笑うと優しい瞳とぶつかった。

「…やっと笑ったな」

嬉しそうな、それでいて大人びた瞳に見つめられ、かぁと顔が熱くなる。

恥ずかしくて。でも、その優しい瞳が嬉しくて。
自然と笑みが零れた。

「…なぁ、何を願うつもりだったんだ?」

「それは……」







ざぁと不意に吹いてきた風に、ふっと意識が戻る。

ついつい思い出に浸ってしまっていた自分に自嘲気味に笑う。

─…ほんの半年前のことなのに、酷く懐かしいだなんて。

「…サザさん…」

─貴方は、今何をしていますか?
大事な人と会えましたか?


「…今日は見れるでしょうか…」


──…あの日のような流れ星を。


もし、見つけられたなら今度もきっと貴方の無事を願うんだろう。


─そして……。


「…どうか、幸せでありますように…」

そう願って、手を組み静かに祈りを捧げた。



end.



シスターじゃないけど、ステラ嬢は祈る姿が似合うと思います。
冒頭は大好きな某曲の歌詞から頂きました。