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恋愛アンバランス




理由は驚くほど単純で。

素直になれない気持ちが、邪魔をしているだけ。












チクチクと破れた服を繕っていく。
当て布をして繕った使い古した服は決して綺麗ではなかったけれど、着れればそれで良いんだと服の持ち主──ボーレが笑って言っていたのを思い出して、小さく笑みを零した。

着れればそれで良い、だなんてボーレらしい言葉だけど。

「あんまり褒められてる気がしないよね」

そうぽつりと呟いて、繕ったところを確認してみる。
今回は破れた所が酷かったから当て布を使って繕ったけれど、上手く出来たようで、すっかり穴は綺麗に隠れてしまっていた。

「よし!」

これで大丈夫と意気揚々と裁縫道具を片付ける。
あと少ししたら、訓練の終わったボーレが帰ってくるだろう。

─…上手く出来たなって褒めてくれるかな?

ふっと湧いた考えに少しだけ沈黙して。小さく笑って首を横に振った。

「言ってくれる訳ない、か…」

今までだって言ってくれなかったのに、言ってくれる訳ない。
それを淋しいとは思うけど、失敗してしまった時も変わらず笑って「ありがとう」って言ってくれるから。

その言葉だけで充分だって思えるの。

貴方の服を繕うのが嬉しくて楽しいのは、きっとその言葉があるから。

「こちらこそ、ありがとう」


─…私を頼ってくれて。


それが何よりも嬉しいなんて、面と向かって言えないから。

腕に抱いた服に、小さく口付けを落とした。




end.




普通に恋人というか夫婦っぽいことをしてる二人が好き。
ボーレとミストは互いに支えあってると可愛いと思います。