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Alstroemeria









戦場で姿を見る度に、初めは違和感があった。

少し前までは戦場になんて出てこなかったし、そういう場所からは遠ざけなきゃいけないって思っていたから。


だから、同じように戦場に立とうとする度に、後ろに下がってろと言うのが当たり前だったし、まして隣で戦われるなんて、ケガしそうで気が散ってしょうがなかった。


それなのに──…。


「ボーレ?どうかした?」

ふと隣から聞こえてきた声に視線を向ければ、不思議そうに俺を見つめるミストの瞳にぶつかった。

「いや、なんでもねぇ」

「もう…。すぐ傍までデイン軍が来てるんだから、しっかりしてよ」

「言われなくても分かってるっての!」

むっとした表情で口を尖らせたミストにそう返すと、グッと愛用の斧を握り締める。

もうすぐ戦いが始まる。

隣には、顔を合わせればこんな時でも、ついつい軽口を叩いてしまう相手。


──…少し前までは、後ろに下がってろと言っていた相手。


だけど、今は……。


「よっし、行くぞミスト!」

「うんっ!」

こうやって隣で共に立って、戦うことが当たり前になって。

誰よりも傍で守ってやりたいと思うようになった。


「離れんじゃねぇぞ!」

「分かってるってば!」

駆け出した足が軽いのは、隣にコイツがいるから。

きっとそうなんだ。




end.


花言葉シリーズです。珍しくボーレ視点。
まっすぐなボーレが書いてて楽しいです。

【Alstroemeria】
 花言葉:幸い