Darin my Luv見えなくたって、触れなくたって。 確かに信じられるものがある。そう思えるのは、きっと貴方だから。 「〜♪」 昔、お母さんがよく聞かせてくれた呪歌を口ずさみながら、一つ、また一つと花を摘んでいく。 「良い天気」 花を摘む手を休め、空を仰ぐ。澄み渡る青はどこまでも続いていて。時折吹く穏やかな風が奏でる草の音が心地良い。 しばらく瞳を閉じ、じっとその光景に浸っていると、かさり、かさりと草の音に交じって、誰かが近づいてくる音がした。 ふと、その足音に聞き覚えがある気がして、視線を向けると酷く真面目な顔をした恋人がこちらに向かって歩いてきていた。 「ボーレ、どうしたの?」 そんな真面目な顔して、とからかうように問い掛けるが答えはなく。 代わりにぐっと肩を掴まれ、じっと真直ぐな瞳に見つめられる。 その真剣な眼差しにどくりと大きく心臓が跳ねる。 どきどきと聞こえてしまいそうな位、大きな音の心臓をぎゅっと押さえて、ボーレの言葉を待つ。 意を決したように、小さく息を吸い込んで、ボーレはようやく閉ざしていた口を開いた。 「きょ、今日は良い天気だな!」 「え?あ、うん」 「じゃなくて!あー…な、何してたんだ?」 「お花摘んでたの」 食堂に飾ろうと思って、と持っていた花束を見せるとぎこちない相槌が返ってきた。 ──何かヘン。ていうか、すっごくヘン。 明らかに様子のおかしいボーレに、首を傾げる。 大体こういう時は何か言いにくい事を言おうとしている時だ。 もしかして、また何か砦の備品を壊したとか、誰かの私物を失くしたとかだろうかと考えを巡らせていると、ぐっと肩を掴む力が強くなる。 少し痛いくらいのそれに、抗議しようと口を開いたところで、遮るように口付けられる。 「ん…っ」 急な行動にびっくりして、身体を強ばらせた私にそっと優しい声が頭上から落ちてくる。 「…ミスト…」 ──私の、名前。 その声が酷く愛おしそうに聞こえるのは、私の願望だろうか。 「絶対、お前を幸せにするから。だから、一生俺の傍にいてくれないか?」 真剣な声と眼差しに、息をするのも忘れる。 言われた言葉が、すごくすごく嬉しくて。気付けば笑みが零れていた。 「うん…。ずっと一緒にいよ…?」 嬉しくて、嬉しくて。 零れ落ちそうになる涙をこらえて、そう言葉を紡ぐ。 ──そんなこと、改めて聞かれなくったって、わたしの答えは一つだけ。昔から何も変わっていない願い。 …貴方とずっと、一緒にいたい。 「っしゃあ!!ミストっ!花はもう良いよな?」 「え?う、うん!」 「みんなに言いに行くぞ!」 「きゃっ!」 がっと勢い良く抱き上げられ、思わず花を落としそうになる。 それを慌てて握り直すと、抱き上げたボーレの顔をじっと見つめる。 恥ずかしさのせいか、僅かに赤くなった顔には、子どもみたいな満面の笑みが浮かんでいて。 それにつられるように、私も頬を緩ませた。 「な、ミスト!」 「なぁに?ボーレ」 「今日、良い天気だよな!」 「うんっ」 笑いながら頷いて、木々の間から見える空を仰ぐ。 ─ねぇ、お父さん、お母さん。 「…ボーレ」 「どうした?」 ──すごくすごく大好きな人が出来たの。 「…ずっと、一緒だよ?」 「当たり前だっ!お前が嫌だって言ってもいてやるからな!」 「あははっ」 ──その人といると幸せで。笑顔になれて。 きっと、これからも幸せでいられる……一緒に幸せになれる、一緒に幸せになりたい人を見つけたの。 「お、もうすぐ着くな」 「ドキドキするね」 「まぁな。でも、驚かせてやろうぜ?」 「うんっ」 空は青くて、どこまでも澄んでいて。 その空の向こうにいるはずの、お父さんとお母さんに笑ってみせた。 ─私、今すごく幸せだよ。 ──…ねぇ、見てる? 「おーいっ!みんな集まれー!!重大発表だ!」 「騒がしい野郎だな。何だよ?」 「どうしたの?」 ─お父さん、お母さん。 ───生んでくれて、ありがとう。 end. 何か書き上げた瞬間恥ずかしさで憤死しそうになったのが思い出されます(笑) ちなみにこの後は、フツーに皆驚くことなく祝福されたと思いますよ。だってボレミだもん(何 |