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オカエリナサイ




自分を犠牲にしているのに、それを周りに悟らせようとはしない。そんな貴方を私は誇りに思うのです。











部屋の主である王が出掛けてもう一週間。ニンゲンと何か取り引きをするとしか聞いていないが、何か危険な事をしているのは間違いなさそうだ。
その証拠に同じ鳥翼族であるフェニキスの民から攻撃を受けた同志もいたし、王が出掛けられる数日前、フェニキスに身を寄せている鷺の王子が王に直接抗議に来られたという噂も流れていた。

そんな中でまたニンゲンとの関わりを持つことは、同族の怒りを買うだろうことは容易に想像出来た。セリノスの一件以来、ニンゲンに対する感情は鷺の王子を擁護しているフェニキスが一番強い。
勿論セリノスの一件に関しては、キルヴァスも快く思っていない者がほとんどだ。しかし、今はニンゲンとの取り引きが無ければ、キルヴァスはあっという間に貧困に苦しむことになるだろう。それを分かっているのは、国の文官ではない。王であるネサラ様自身だ。

だからこそ、周りにどう言われようと国の為に飛び回ってくれている。それが誇らしいと思うと同時に、胸が締め付けられるようだった。

「…今日は帰られるかしら」

ぽつりと呟いた言葉は静かな部屋に霧散する。主のいない部屋は寂しげで、静かな空気は決して嫌いではないはずなのに、今は少しだけ苦しく感じた。

「…ネサラ様」

溜め息混じりに呼んだ名に応えるように、開け放っていた窓から翼の羽ばたく音が聞こえる。その音に慌てて振り返ると、舞い散る黒の羽と共に部屋の主が立っていた。

「よう」

久しぶりに見る姿に一瞬言葉を失う。微笑んだその表情に笑顔を返しそうになって、誤魔化すように咳払いをした。

「…王。窓は入り口ではありません。ちゃんと城門からお入りになって下さい」

ぴしゃりと言い放った私の言葉に、ネサラ様は肩をすくめると、そっと私の頬に触れた。長く綺麗な指が、頬を愛しげに撫でていく。
その優しい感覚に全身が喜びに震えるようだった。

「そう。その顔が見たかったんだ」

耳元でそう囁かれて、ぞくりと背筋が震える。言いたい言葉は山程あったはずなのに、気付いたら腕を伸ばして、王に抱きついていた。

「…お帰りなさいませ。ネサラ様」

ご無事で良かったと言おうとした私の唇をネサラ様の唇が優しく塞いでいく。
久しぶりに触れ合ったその熱は心地よくて涙が溢れる。それを悟られないように、自分を抱き締めてくれている大好きな人を、ぎゅっと強く抱き締めた。



end.








悩んで悩んでこういう結論に。ネサラ様が別人28号ですいません。夢主がツンデレで何かすいません;;
そして、甘いんだか切ないんだかですいません←

綾さま、リクエストありがとうございました!