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トワ




変わらないものなんてない。

それはきっと、誰もに言えることなんだ。








「永遠の愛って信じる?」

不意に浮かんだ言葉を口にすると、ちょうど部屋に来ていた客人である同僚は訝しげに眉をひそめた。

「何だ?急に…」

何かあったのかと語る真っ直ぐな視線に薄く笑みを返すと、数日前に部屋に飾ったばかりの花に視線を向けた。白や赤、黄色にオレンジ。鮮やかだった色はドライフラワーにして、少し色褪せてはしまったけれど、美しいことに変わりはなかった。

「その花は確か…。お前の弟の結婚式の土産、だったか?」

私が国に帰ってきてすぐに、彼に話した話を思い出しながら尋ねるケビンの声に小さく頷く。



一週間前、無事に結婚式を終えた弟のことを思い出す。
妻となるミストの手を握り、笑う弟はとても幸せそうで、見ているこちらまで幸せになるようだった。
傭兵団の皆に祝福され、永遠の愛を誓う姿に感慨深いものを感じた。

─…傭兵団に来たばかりの頃は、まだまだ小さい子どもだったのに。

私がしっかりと育てていかなければと思っていた存在は、もうしっかりと自分の足で立ち、守るべき存在を見つけたのだ。

それを嬉しいと思う反面、どこか寂しいと思うのは感傷だろうか。

「…オスカー?」

物思いに耽ってしまっていた私の耳に、静かに声を掛けてきたケビンの声が響く。慌てて微笑もうとした矢先にケビンの手が私の手を握っていた。

「ケビン?」

彼から触れてくることなんて滅多にない。何かあったのかと首を傾げた私の瞳をじっと真っ直ぐに見つめてくる赤い瞳にどきりとする。その視線に吸い寄せられるように唇を寄せようと身体を少し寄せたところで、ケビンの声が静かに私の鼓膜を震わせた。

「オスカー。もう、お前も自分の幸せを求めて良いんだぞ」

「えっ?」

言われた言葉がうまく自分の中で飲み込めなくて、きょとんとした顔でケビンを見つめる。ケビンは相変わらず酷く真面目な顔をして、私をじっと見つめていた。

「お前の弟も、もう家庭を持ったんだ。…だから、お前だって…その、伴侶を持っても…」

「伴侶」という言葉を言うのに、少し躊躇ったように感じたのは私の気のせいだろうか。ケビンはそれだけ言うと、ふいと視線を外して俯いてしまった。気まずい空気が流れたような気がして、そっと俯いてしまったケビンの肩に手を置く。呼ばれたのかと俯いていた顔を上げたケビンの頬に、触れるだけの口付けを贈る。ケビンは、一瞬きょとんとした顔をしたけれど、すぐに何をされたのか分かったらしく、顔を真っ赤にして口付けられた場所を押さえた。

「なっ、な…!」

何だ、ということが言いたいらしい可愛い同僚の反応に、ふっと笑みを零す。くすりとだけ笑うと、ふっと笑みを消して真剣な眼差しでケビンを見つめた。私の真っ直ぐな視線を受けて、ケビンの顔も真剣なものへと変わる。少し緊張している様子のケビンの手をそっと取ると、薬指にそっと口付けた。

「君はずっと一緒にいてくれるかい?」

「…?そんなもの…今更聞かなくても分かってるだろう」

何を当たり前のことをと言いたげに吐き出されたため息に、酷いなぁと笑うとケビンの顔が近づいてきて、ちゅと軽く音を立てて、頬に口付けを贈られる。

突然のことに驚いていた私の表情を見て、ケビンは満足そうに笑った。

「俺と貴様は永遠の好敵手だからな」

そう笑う君の姿は眩しくて、思わずつられて笑った。

変わらないものなんてない。年月と共に、様々なものが変わっていく。だから、「永遠」なんてないのかもしれない。でも、君とならそれを信じられそうな気がするんだ。

一秒、一秒をずっとずっと重ねていって、永遠を築いていこう。





END.








永遠の愛を誓いましょう的な。オスカー兄さんは弟の幸せを優先してそうなので、ボーレの結婚はオスカー兄さんにとっても大きい出来事だったんじゃないかなと。
薬指に指輪は流石に無理かなーと思ったので、代わりにチューを(笑)誓いのキス、好きですvv



2010.12.6