探求好奇心知らないことを知りたいと思うのは、当然のことなんだろうか? じゃあ、この事は? 知りたいこと、だったのだろうか。 「…っは」 身体の中に侵入してくる異物感に思わず眉を顰める。吐き出した吐息はやけに熱っぽく、空中に霧散して部屋の温度を上げているように感じた。 「…ケビン。大丈夫かい?」 まだ入りきらない所で侵入を止めた熱量の主は、気遣うように俺の頭をそっと撫でた。 優しく髪を撫でていく、その指先が心地好い。その優しい熱に応えるように小さく頷くと、口元を押さえていた手を伸ばして、オスカーの頬を撫でる。 「俺は大丈夫だ」 途中で止めているオスカーの方が辛いような気がしてそう言うと、先に進めと促すようにじっと瞳を見つめる。 普段は穏やかに細められている深い緑の瞳はそれでも心配そうに俺を見ていたけれど、それにふっと笑って見せると、いつもの穏やかな笑みを浮かべて小さく俺の額に口付けを落とし、止まっていた熱の塊をぐっと深く押し込んできた。 「ぅあ…っ!」 じわと目元に浮かんだ生理的な涙が頬を伝うのを感じる。その雫を拭おうとした手をオスカーはやんわりと押さえると、ぺろりと舌で涙を拭われる。 頬を這っていく舌の暖かい感覚が、ぞくりと甘い痺れになって背筋を抜けていく。思わず上げそうになった嬌声を飲み込むように口元を押さえると、その指先に唇が押しあてられた。 「手、どけて」 声が聞こえないと笑うオスカーに、むっとした表情を向ける。見せたくないんだと言おうとした矢先に、指先に触れていた唇が開いて、指を甘噛みされた。 指先に感じる硬い歯の感触に驚いて、腕に込めていた力が抜ける。 それを見越していたかのように、器用にオスカーは俺の手を退けると、ぐっとそのまま手首を押さえられ手の自由を奪われる。それと同時に、入れたまま止まっていた熱量を動かされて、びくんと身体が跳ねる。 「は、ぁっ!」 ゆっくりと動き始めた熱に神経が集中する。捕まれた腕が痛いような気もしたけれど、下腹部を動く熱に気をとられて気にならなかった。 「あ、は…ぁ…」 途切れるような呼吸と時折漏れる高い声は自分のものじゃないみたいだ。 抑えようと思うのに、次第に動きを早めていく熱量に思考は絡め取られていく。 「あ!っう…」 ぐちゅ、と出し入れされる音が静かな部屋に響く。その音はまるで、繋がっているのだと証明されているようで恥ずかしくて堪らない。 ばくばくと落ち着かなく鳴る心音に合わせて上がっていく体温で、顔が熱くなっていくのが分かった。 「恥ずかしい?」 くすりと微笑まじりに耳元で囁かれた声に、ぞくりと身体が震える。次いで、ぐっと深く突き入れられて、はっと呼吸を吐き出した。 「あ、たり前だろうが…っ」 言葉を発している間も止まない挿入に、ぞくぞくと快楽が身体を駆け巡る。 今自分がどんな顔をしているのか。そんなこと分からないけれど、見たくもない。自分ですら知らない顔をしているに違いないのだから。 「ケビン…っ」 ぐち、と響く淫縻な音の合間を縫うようにオスカーの声が耳に届く。 その声に気恥ずかしさで反らしてしまっていた視線をオスカーに戻す。 そこにはいつもの穏やかな笑みはなく、余裕のない呼吸を繰り返す真剣な顔の好敵手がいた。 「…オス、カー」 名前を呼んで近づいていた顔にそっと唇を寄せる。 ──…こいつのこんな顔を見る羽目になるなんて、出会った頃は思いもしなかった。 ただ、勝ちたくて。 ただ、隣で戦っていたくて。 それだけだったはずの想いは月日と共にたくさんの感情を持つようになった。 ─…好きで。 ──…大事にしたくて。 初めて身体を開いた日は、死ぬほど恥ずかしくて、オスカーを見ている余裕なんて全くなかったけれど、最近は少しづつ奴の顔を見れるようになってきた。 訓練の時とは違う、耐えるような余裕のない表情や向けられる熱い真っ直ぐな視線。 それらはきっと、こんな関係にならなければ見ることもなかった。勿論、知る由もなかっただろう。 けれど、俺は知ってしまった。 知りたいと願ったかと言われると自信はない。けれど──… 「…愛してる」 言葉にしたこの気持ちに嘘はないから。 だから、俺しか知らないオスカーを誇りに思おうと。 今にも手放しそうになる意識の中、強く強く、そう思った。 end. ケビンさんにこんな葛藤があったら良いなという妄想。こういう関係になりたかった訳じゃないけど、現状が嫌な訳じゃない…みたいな。 ケビンさんの好きは月日と共に大きくなっていきそうで可愛いよね!という話。 2010.11 |