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雪と赤




舞うは粉雪。

白い霞の花のような中で、より一層その色は眩しく見えた。








雪と赤










夜も更けた頃。そろそろ寝ようかと手にしていた本を閉じ、ベッドの脇にある机に置く。そこでカーテンを開けたままにしていたことを思い出して、閉めてしまおうと窓際まで歩いていったところで、はらはらと舞う白に気付いた。

もの珍しさにそっと窓を開けると、凛とした冷たい空気と共に、ふわりと風に乗って粉雪が舞い込んできた。誘われるように自然と伸ばしていた指に触れると白い花のような雪は、ふわりと溶けて水になる。明日の朝には、もしかしたら積もっているかもしれない。
そうなれば、明日の朝は忙しくなるだろうかとぼんやりと考え、窓を閉めようとしたところで、ふと視界の端に舞い散る白に紛れて見慣れた赤が見えた気がして、慌てて視線を外に戻す。

見間違いかとも思ったけれど、確かに視界に舞う白に紛れて見慣れた赤が、兵舎とは別の方向に消えていくのが微かに見えて首を傾げる。こんな時間に何処へ行く気なのだろう。

そんなことを考えて、赤の消えていった方向にあるものを頭の中で思い浮かべてみて、ふっと笑みが口元に浮かんだ。

見慣れた赤のやりたいことがなんとなく読めた気がして、壁にかけてあった上着を羽織ると、枕元に置いたままのランプを片手に、部屋を後にした。





静かな闇の中、ランプの光を頼りに進んでいく。目指す場所は見慣れた赤の消えた先。

積もり始めた地面から鳴るさくさくという音を静寂に響かせながら、とある建物の前で足を止める。そこには、まだ新しい足跡が残っていて、やっぱりと心の中で呟くと、静かに木の扉を開く。

そこは兵士たちの馬が繋いである馬小屋だった。何十頭もの馬が並ぶ中、ある一頭のところで毛布を片手に、馬に話しかけている見慣れた赤を見つけて、静かに歩み寄った。

「雪が降って寒いだろう、流星号。今毛布をかけてやるからな」

そう語りかけ、優しく頭を撫でた主に愛馬である流星号は嬉しそうに目を細めて短くいななく。
そんな愛馬を愛おしそうに見つめる優しい瞳をじっと見つめていると、視線に気付いたのか不意に愛馬に向けられていた視線がこちらに向けられ、同僚はびくりと身体を強張らせた。

「な、お、オスカー!?何故貴様がここに!!」

こんな時間に何の用だと言わんばかりの剣幕に、思わず失笑する。それを言うなら君もだよ、と言いかけて口をつぐんだ。
まだ手にしたままの毛布をじっと見つめると、微笑んでみせた。

「寒いから、毛布を掛けにきたのかい?」

「そ、そうだ。風邪を引かれては訓練に支障が出るからな!」

あくまでも、訓練に支障が出るからだと強調するその様子が何だか子どもみたいで、くすりと笑みを零す。

先ほどの、あの優しい気遣うような瞳を見れば、訓練云々よりも純粋に愛馬を心配してここに来たことくらい分かる。それを必死で隠そうとするようなその言動が微笑ましく思えて、そうか、とだけ相槌を打っておいた。

「早く掛けなくて良いのかい?風邪を引くだろう?」

「う、うむ」

ケビンの手の中にしっかりと握られたままの毛布を掛けるように促すと、ケビンはぎこちなく頷いて、手にしていた毛布を優しく愛馬の背へと掛ける。

そのまま背中をあやすように撫でると、愛馬は嬉しそうにケビンの頬を舐めた。それをくすぐったそうにしながらも、笑顔で頭を撫で返してやる様子を見て、つられるように笑みを零した。

「仲がいいんだね」

「当たり前だ。こいつは俺の大事な相棒だからな」

信頼しあっていて当然だと胸を張ったケビンに、自然と口元が緩む。まるで子どものようなその仕草が可愛くて仕方ない。

そんな私の笑みを肯定の言葉と受け取ったのか、ケビンはにっと笑みを浮かべると、愛馬の背をぽんぽんと叩いて、地面に置いていたランプを手に取った。

「そういえば、貴様はこんな時間に何をしに来たんだ?」

「大事な好敵手の姿が見えたから追いかけてきたんだ」

そう言って微笑んでみせるとケビンは一瞬ぽかんとした顔をして、次の瞬間には顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせていた。

「っ!あ、えっ…!」

「…君の良いところをまた一つ知れて、良かった」

耳元でそう囁くと、今度は耳まで真っ赤にした可愛い好敵手に、溢れる愛しさを込めてそっと口付けを落とした。





end.






ハチミツル様との相互感謝に書かせて頂きましたオスケビです。
カプっていうより仲間!って感じになってしまったかなぁと反省してました;
ケビンに雪って、犬と雪みたいで似合うなと思うんですがどうでしょう?(何)

ハチミツル様、相互感謝です!


2010.10.27