隣り合わせ特別な人に特別に想われたい、なんて勝手な想いなのかな。 ふわりと吹いて来た風に俯いていた顔を上げる。 薬草集めに夢中になっていて気付かなかったけれど、青空だった空は、今にも泣き出しそうな灰色へと変わっていて。 吹いてきた風に混じった雨の匂いに、一緒に来ていた人の姿を探す。 「おい、ヨファ」 探し人の声は思いの外近く、すぐ後ろに聞こえて。 その声に慌てて振り向くと、灰色の空を見上げたままでぽつりと呟いた。 「降られない内にさっさと帰るぞ」 「う、うん」 言おうとしていた台詞をそのまま言われて。ただこくりと素直に頷いて、薬草を入れた篭を抱き抱えて、既に歩きだした後ろ姿を必死に追い掛ける。 いつ降りだすか分からないという空を気にしてか、いつもよりも早足に歩いていく後ろ姿が何だかとても遠いものに感じて。 ──何だか、僕と一緒にいるのが嫌みたいだなんて思ったら、不意に足を止めて、呼び止めたい衝動に駆られたけれど。 そんな事をして困らせるなんて嫌で、黙って後ろ姿を追い掛けていく。 そんな僕の気持ちに呼応するように、ついに空からぽつりぽつりと雨粒が落ちてきて。 あっという間に、それは叩きつけるような強い雨へと変わった。 「シノンさん!」 「っち、しょうがねぇな。あそこの木まで走れ!」 呼び掛けると同時に返された言葉に頷くと、指を指された木まで一直線へと駆けていく。 シノンさんが指さした木は他の木よりも大きく、しっかりと枝を伸ばしていて。 強い雨を凌ぐには絶好の場所だった。 「随分濡れちまったな…」 うるさい雨の音に溶けるように呟かれた言葉に視線を向ければ、濡れて額に張り付いた髪を鬱陶しそうに払うシノンさんの姿があって。 雨に濡れた髪は艶めいていて、滴る雫で濡れた唇に目が釘付けになる。 綺麗、と思わず声に出しそうになって慌てて口元を押さえて。ドキドキと煩い心音が雨に交じって耳に響く。 ──あぁ、このまま止まなかったら、ずっとこうしていられるのに…なんて。 そんな事を考えて、少しでも長く降りますようにと願いを込めて、曇天の空を見上げた。 雨濡れシノンさん。 完全に自分の趣味です(笑)水も滴るツンデレ美人ですから!←← |