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色ハ匂ヘド




アイツの言葉はまるで毒だ。

ゆっくり、ゆっくり身体を廻って、知らない間に意識を絡め取られてる。











暴力は嫌いだ。

けど、一番嫌いなのはそれを制御出来なかった俺自身。でも、そんな自分自身と同じくらい──嫌いな人間がいる。

それが、目の前でムカつく笑みを貼りつけて笑うノミ蟲─…折原臨也だ。

「いーざーやー君よぉ…。だから、何で手前がブクロにいんだよ?」

ぶちん、と頭の中で何かがキレる音を聞きながら近くにあった郵便ポストに手を掛ける。

ノミ蟲─臨也はというと、相変わらず怯える様子も騒ぎ立てる様子もなく、ただにやにやとムカつく笑みを浮かべていた。

「シズちゃん、ソレ投げるの?相変わらずワンパターンで芸がないね」

たまには違うことしてみなよ、と嘲笑う声に完全に俺の中のリミッターが切れる。

考えるより先にポストを引っこ抜くと、それをそのまま臨也に向かって投げ付けた。

ブンと風を切る音と共に臨也に向かって真っ直ぐに飛んでいったポストは目標に当たることなく、硬いコンクリートの壁にぶつかり、ぐにゃりと歪んだ。

「ハズレ。残念だったねぇ、シズちゃん」

寸での所でポストを避けていたらしい臨也は歪んだポストをちらりと見て、おどけるようにそう言った。
その言い草に苛立ちが募って、無意識に今度は手元にあったガードレールに手を掛ける。

ギシギシと鈍い音を立てて、コンクリートから徐々にガードレールを引き抜いていく。その様子を見た臨也はムカつく笑みを消して、真っすぐに俺に向かって走ってきた。


─…どうせ、その手にはナイフがあるんだろ?
刺せるもんなら、刺してみろ。

そう考えてニヤリと笑みを浮かべた俺に、臨也は一瞬だけ猫のように目を細めて。そして、俺の唇に己のそれを重ねてきた。

一瞬何が起こったのか分からず、頭の中の時間が止まる。力を入れていた筈の手からは完全に力が抜けていて、離れていくムカつく顔を睨む事すら忘れてしまっていた。

「あっははは!シズちゃん、その顔最高!」

ぽかんとしたままの俺に、ムカつく位上機嫌なノミ蟲の声が響く。その声に止まっていた思考が再び動きだし、力を抜いていた手に迷いなく力を込めてガードレールを引き抜いた。

「あはは、シズちゃんもしかしてキス初めてだった?」

「ぶっ殺す…!!」

そのまま引き抜いたガードレールを振り回すと、ひらりと軽く避けられ、舌打ちする。

もう一度、今度は投げつけてやろうと振り上げた所で、臨也はいつものムカつく笑みじゃなくて、見たこともないような穏やかな笑みを浮かべた。

「…シズちゃん、それ当たらないよ」

「手前が避けなきゃ当たるだろうが」

殊には当たって半死にしろと毒づこうとしたけれど、穏やかな笑みに邪魔されて思うように言葉が出てこなかった。

「そりゃ避けるよ。だって、」

避けたらまた追い掛けてくれるでしょ?
─…そう呟くように言った言葉は喧騒の中でやけに耳に響いてきて。振り上げたガードレールをどうしたら良いものかなんて考えてた俺に、臨也はすたすたと近づいてくると、ちゅ、と音を立てて唇に口付けてきて。

抵抗も文句も反撃も何も出来ず、再び固まった俺に臨也はただ嬉しそうに笑った。

「シズちゃんのそういう顔知ってるの、きっと俺だけだよねぇ。それってさ、シズちゃんにとって俺が『特別』だってことだよね」

何だそりゃ。どういう理屈でそうなんだよ訳分かんねぇ、馬鹿かコイツ─…いや、馬鹿なんだけどよ。
そんな呟きが頭を駆け巡るのに、やっぱり言葉一つ出てこなくて、何処か上機嫌に去っていく後ろ姿をぼんやりと見送った。


大嫌いなノミ蟲が触れていった唇が、何だかやたらあったかくて。気持ち悪さの中に交ざったほんの少しの心地よさを否定するように、ぎゅっと唇を噛み締めた。



end.






イザシズ第二段やっちまいました。どうしよう、大好きが止まらない…!可愛いよね、シズちゃんという事が言いたかったのに、相も変わらず喧嘩シーンorz
公園デートとか可愛くて良いのになと思うのに、自分には書けないもどかしさ。
ああああ…、ラブラブな二人とかも好きなのに…!
甘い話書ける方、超尊敬…!!



2010.6.28