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スーパーノヴァ




こんな話を聞いた。

星というものは光を放つと同時に日々大きくなっているらしい。
そして大きくなりすぎた星は爆発してしまうのだという。
衛星もろとも消し去る大きな爆発、残るものは消えきれなかった塵と、星の核がブラックホールになると、つまりそこに光は無くなるのだという。
勿論、太陽も例外ではない。爆発してしまうと、僕らが今暮らしているこの世界ももろとも消し去ってしまう。その時は一刻一刻迫っているのだ。
いつかはわからない、もしかしたら明日かもしれない。いや、今かもしれない。
この世界が無くなれば、隣にいるこの人もいなくなってしまう。当然僕も。

そう思うと急に胸の奥に針が刺さったような、妙な気分になった。


少し見上げて、シノンさん。と小さく名前を呼ぶと、顔だけこちらに向けてくれたのがわかる。

僕が余程情けない顔をしているのか、シノンさんは何も言わずに頭に手を置いてくれた。


「もしも明日、世界がなくなってしまうなら…シノンさんはどうする?」

五秒ちょっと、彼はぽかんとしていた。
しかし直ぐに眉間に皺が戻ってきた。


面倒くさい、とでも言いたげに彼は溜め息をつき、ぶっきらぼうに言い放つ。

「さあな。そん時次第だろ。」

真面目に聞いてるんだよ?と言うと、彼の眉間の皺がより一層深くなる。
横目でこちらを見たかと思い見つめ返すと、既に彼の視線は夜空に吸い込まれていた。


「…何考えてんだか知らねえが、絶対明日なくなるって決まってんなら足掻いても仕方ねえ。いつも通り、やりたい事をする。」

「そっか…、そうだよね。」


彼らしい言葉に少し心が軽くなっていくのを感じる。
にっこりと微笑むと、不器用ながら彼も口角を上げてくれた。

その表情を見て軽くなった心はまた沈んでいく。
唯、僕は唖然としていた。
彼が滅多に無い、泣きそうな顔をしていたのだ。


世界が無くなればこの下らねえ戦争もなくなって逆にいいかもな、と呟く彼の視線は足元の弓にある。


ぎゅう、と彼に抱き着く。彼の背はいつも自分が見て想像していたものよりも大分細く驚いた。


「な、…おいっヨファ!何してんだよ?」

彼が僕を振り払おうと体を左右に揺する。
しかしその抵抗を無視する様な形でぐっと腕に力を込めて声を張り上げた。

「…っ僕は…!」

ぴたりと彼の動きが止まった。


「…僕はシノンさんといたいよ…。世界が終わっても…ずっと…。」

だから、そんな悲しい顔をしないで。
最後の言葉だけはどうしても喉をすり抜ける事が出来なかった。
言ってしまえば、彼が悲しい顔をしているのを認めさせてしまう気がしたから。

頬を背に押し当てる。
こつ、こつ、こつ、と脈の音が聞こえる。
早くもなく、遅くもない心地好いリズムだ。


暫くこうしててもいい?と尋ねたが返ってきたのは肯定でも否定でもなかった。

「知るか。勝手にしろ。」

シノンさん、それは肯定と受け取ってもいいのかな。
しかし確認も取れないので勝手により腕に力を込める。

布越しだが、彼の体温は暖かった。



大きくなりすぎた星が爆発してしまう様に、大きくなりすぎたこの気持ちも爆発してしまうのだろう。
そうすればやはり今の“いつも通り”の生活はなくなってしまう。

どうしよう。
自然に目が細くなる。

けれど、抱いてしまったものはどうしようもない。
伝えたくて仕方がない。
もう、伝えるしかないんだ。

──シノンさん、あなたが好きです。


ゆっくりと目を閉じる。背中越しにから伝わる温度が限りなく愛しい。
どうか、僕の想いも温度と共に伝われ。


ふと夜空を見上げると、すうっと弧を描いて流星が溢れ落ちた。
どこかで爆発が起きたのだろうか、なんて。
それはぼんやりと見たことのない彼の涙の様に見えて、心臓が疼いた。
夜空に見とれていると、言いたかった言葉はいつの間にかどこかに消えてしまっていた。








スーパーノヴァ
(願わくはあなたと明日も)(なんて)



end.




緋色様から相互記念に頂きました!無理押し通してヨファシノ書いて頂いちゃいました♪
いやー、とっても素敵なヨファシノでもうドキドキです!ヨファが可愛いっ!シノンさんがカッコ可愛い!
も、幸せです。ホントありがとうございました!!