My only shining starまっすぐな瞳で、私の手を強く握ってくれた温もりがどれほど私を救ってくれたか。 きっと貴方は知らないでしょう? すぅと息を吸い込んで、アミーテを鞘から抜き放つ。 そのままぴっと真直ぐに天にかざし、目の前に置かれた訓練用の丸太を見つめる。 地面にすっと立てられた木は太く、一撃で薙ぎ倒すことは難しいように思う。 ──でも、あの人なら。 アイク様ならきっと綺麗で力強い、あの太刀筋で薙ぎ倒すんだろう。 そっと瞳を閉じれば、その光景が浮かんできて、その太刀筋を頭の中で描くと、すっと瞳を開けた。 「はっ!」 掛け声と同時に剣を横に凪ぐ。ぐっと木が斬れていく感覚を手に感じながら、地に向かって落ちて行く木片にもう一度斬り返す。 パキンと音を立てて、木片が地面に転がるのをしっかりと目で追って。 無事、三つに割れた木片を確認して、ほっとため息を零す。 「見事なもんだな」 「─!アイク様」 思いもがけない声が後ろから聞こえてきて、慌てて振り返る。 そこには穏やかな笑みを浮かべたアイク様が立っていて。 思わず、見られていたという羞恥でかぁと顔が熱くなるのを感じた。 「綺麗な太刀筋だった。腕を上げたんだな」 「そ、そんな…。アイク様に比べたらまだまだです」 誉められたという恥ずかしさのあまりに、俯いてそう言った私に至極不思議そうな声音が返される。 「俺は俺だろう?エリンシアとは剣の扱いが違う」 だから、太刀筋も違って当たり前だと言葉を続けられて。 その言葉にはっとして顔をあげると、アイク様の真っすぐな強い眼差しにぶつかる。 ──あぁ、アイク様の太刀筋があんなにも力強いのは、きっとアイク様自身が強いからなんだ。 そんなことを思って、ぎゅっとアミーテを握り締めた。 ─…私にはアイク様のような強さはない。 それがきっと太刀筋にも現れているんだ。 「…良い太刀筋では、無いです。私は……弱い」 女王としての自信も、皆を守る強さも私にはまだまだ足りない。 ──…アイク様のようにはまだなれない。 「そんなことはない。あんたは十分強くなった」 沈んでいた私に、強く優しい声が響いていく。 見つめた先にあった真っすぐな青い瞳は、嘘を言っている瞳でも媚びるような瞳でもない。 ただ、真っ直ぐで強い眼差し。 「瞳が、変わった。あの戦いの時よりも、強くなった」 「…アイク様…」 「あんたにはあんたの強さがある。誰と比べてるのかは知らんが、あんたはあんたの強さを貫けば良い」 ──真っ直ぐな強い言葉はすとんと私の耳に、そして心に落ちてきて。 ぎゅっと強く握り締めていた手が自然と緩んでいた。 「…そう、ですね」 ──私は、私の強さを持てば良い。 「アイク様…」 「何だ?」 ──いつだって、私を導いてくれるのは貴方の言葉。 きっと、そんなこと貴方は知らないだろうけど、それで良い。 ──私がどれだけ貴方の言葉に、存在に救われたか。 私だけが知っていれば、それで良いから。 だから──…。 この言葉に私の想いの全てを託そう。 「ありがとうございます」 そう言って、真っ直ぐな瞳に微笑みを返した。 end. 剣の訓練シーンが書いてて楽しかった記憶が…(笑) 暁のエリンシア様は強くて、でもまだちょっと儚いところが可愛いと思います。 |