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smile to you




国を復興させることが出来るのか。
復興させたとしても、王として認めてもらえるのか…。

本当はずっとずっと不安で仕方がなくて。
不安に圧し潰されそうになるのを必死に押さえてた。

















慌ただしくも何とか出航出来てから、数時間は経っただろうか。
船室で今後のことも含めて一通り話し終えて甲板に出ると、すっかり港は小さくなっていた。

無事に出航出来たのだと、今更ながらに実感を持って感じられて、強張っていた体から力が抜けるのを感じた。

―それと同時に、体を優しく撫でていく潮風の優しい香りに気付いて。
じっくりと見ている暇のなかった海を改めて見つめる。
遠く水平線まで続いていく深い青は、物語や絵画の中でしか見たことがないもので、こうして眺めているだけで自然と心が弾んだ。


「綺麗…」


「嬉しそうだな」


感嘆混じりに呟いた言葉にふと隣からよく知った声が聞こえて。そのよく知った声に独り言を聞かれていたのが恥ずかしくて、ろくに視線を合わさないまま、羞恥で顔が熱くなるのを感じて、慌てて視線を下に落とした。


「あ、あのアイク様…私、船旅は初めてで…」


咄嗟に口をついて出たのはそんな言葉で。
こんなこと言ってどうするのと自己嫌悪に陥りそうになったところで、いつもよりも楽しげな声が頭上から落ちてきた。


「あぁ、俺も同じだ。…綺麗なもんだな」


ふっと顔を上げるとアイク様は優しげな微笑を浮かべて、海を見つめていて。
それに倣うように私もまた海へと視線を移す。
ゆらゆらと揺れる波に、太陽の光が反射してきらきらと輝いて、まるで宝石のようで。
ずっと眺めていたいと思うような美しさに、自然と笑みが零れる。


「…その方が良い」


「え?」


ふと隣から掛けられた言葉に首を傾げる。
意味を図りかねて戸惑う私にアイク様は微笑んで言葉を続けた。


「あんたは笑ってる方が良い」


「…え?」


思いもがけない言葉に一瞬反応に遅れる。そんな私に微笑みを向けたままで、アイク様は更に言葉を続けた。


「いつも気を張ってるのか、硬い顔してるからな。そうやって笑ってる方が良い」


そう告げられた言葉は私の中にすぅと吸い込まれていって。


ずっと心の何処かで、しっかりしていなければと張り詰めていたものがゆっくり解けていくように思えて。

私は私らしくしていても良いのだと言ってもらえたみたいで、不意に泣きそうになったけれど、それをぐっと押し込んで、精一杯の微笑みを浮かべた。


「…ありがとうございます、アイク様」


そう言葉を返し、しっかりと前を見据えて、目の前の強い眼差しを受け止めて。
不意にこの人のように強くなりたいと思った。どんなに不安でも私らしくいれる強さを持てるように。


…大事な人にこうして微笑みを向けていられるように。



END



微笑む姫が好きだー!!と叫んでみる。ふんわり微笑む姫は本当に美人だと思う。



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