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菩提樹




─彼女は渡り鳥のようだと思う。

自由奔放で、どこまでも羽ばたいていってしまいそうで。



…なら、自分は。

──…僕は彼女にとって、何になるんだろう?












女神ユンヌに導かれ、メダリオンを巡る戦いからもう二年─…。


皆、それぞれの道を歩きだしていた。

僕もまた傭兵団を退き、傭兵団の近くの村にひっそりと孤児院を建て、そこで子どもたちと暮らしていく生活を始めていた。



たまに訪ねてきてくれる傭兵団の皆や、ケビンさんやマーシャさんたち騎士団の皆。


─…そして、ふらりと武者修行の旅の途中に寄っていってくれる誰よりも愛しい人。



そんな人たちが来るのを楽しみにしながら、子ども達を育てていくのが日課になりはじめていた頃。



…ふと、夜中に来訪者が訪れた。







子ども達も寝静まり、ちょうど玄関からすぐの居間で本を読み始めた頃、コンコンと玄関の扉を軽くノックする音が、静かな夜に響く。

こんな時間に誰だろうと疑問を抱きながら、そっと扉をあけると、よく見知った顔が、ワインを片手に上機嫌で立っていた。


「ワユさん!」


「こんな夜中にごめんね、キルロイさん。つい、お城で飲み過ぎちゃってさ」


へらっと笑ってみせたワユさんをとりあえず部屋の中へと招き入れる。

ワユさんは小さくお邪魔しますと言うと、ぺこっと頭を下げ、部屋の中へと入っていった。







「じゃ、ま。再会を祝して」


乾杯とグラスを鳴らす。
カンと軽やかに音を響かせると、一気にワユさんは飲み干してしまった。


「はーっ!やっぱおいしい。これね、今年クリミアで作られたやつなんだよ」


「へぇ…」


にこにこと上機嫌で語るワユさんを見つめながら、グラスを傾ける。
すっと喉を通り抜けていくワインは甘く。確かに美味しかった。


「クリミアに行ってたんですか、ワユさん?」


「うん。ケビンさん達と一回やり合ってみたくってさ」


相変わらず上機嫌だけれど、瞳はすっかり剣士の目で。強い光の宿る瞳に思わず惹き付けられる。


「ホントは、何日かクリミアにいたら、すぐにガリアに行こうって思ってたんだけど…」


ケビンさんがなかなか帰してくれなくて、と笑って付け加える。
何となくその光景が浮かんできて、ふっと笑みを溢した。


「ケビンさんは熱心だからね」


「そうなんだよね。でも、おかげですごい良い訓練になったよ」


腕も上がったしね、と笑うワユさんにつられて、微笑を浮かべる。
相変わらず、変わらない彼女が眩しかった。


「あー…ごめん、キルロイさん。ちょっとお願いして良いかな?」


「何?」


お願いなんて珍しいと思いつつ、申し訳なさそうに片手を上げてみせるワユさんに問い掛ける。


「お水、もらっていいかな?」


見るからに酒が回っている様子にその言葉の意図を察して、くすっと微笑む。


「分かった。ちょっと待ってて」


そうとだけ告げると、水を汲むべく部屋を後にした。






「お待たせ。持ってきたよ」


言いながら、部屋へと入るとワユさんは机に突っ伏していて。

もしかして、寝てしまったんだろうかと、持っていたカップを静かに机の上に置くと、そっと近づき顔を覗き込む。


「ワユさ──」


名前を呼んでいる途中で、不意に起き上がったワユさんに唇を塞がれる。

そのまま押し倒されるよう抱きつかれ、深く口付けらる。ふらりと足元がふらつき、床に座り込んだ。


「んんっ」


されるがままになっていた僕からゆっくりと離れると、ワユさんは悪戯が成功した子どものような笑みを向けた。


「へへー。びっくりした?」


「わ、ワユさん…」


久しぶりの口付けの感触が妙に唇に残って、赤面する。上に馬乗りになる感じで、こちらを真っ直ぐ見つめられ、思わず視線を逸らした。


「…ね、キルロイさん。こっち、向いて」


甘えるような声で囁かれ、カッと全身が熱くなる。
そっと視線を向けると、潤んだ瞳にぶつかり、心が奪われる。

その瞳に誘われるように口付け、そのまま舌を絡める。


「ふ…んん…っ」


必死にこちらに応えようと、舌をそっと絡めてくる姿が愛おしくて。

気付けば、床に押し倒すような形で、唇を重ねていた。


「ワユ…さん…」


ゆっくりと離れた唇からは銀糸が互いを繋いでいて。

熱に浮かされ、虚ろな瞳と僅かに乱れた着衣から覗く蒸気した肌に身体が急激に熱くなっていく。

ぐるぐると渦巻く欲望に流されそうになったところで、ぐっと押し留まる。
理性がある内にと、身体を離そうとしたところで、弱い力で、くいと服の袖を引っ張られる。


「キルロイさん…」


行かないで、と潤んだ瞳に訴えかけられる。
でも、これ以上はと口に出そうとしたところで、そっと耳元に顔を寄せられる。


「…朝まで、ずっと…一緒にいよ?」


擦れた甘い囁きに、残っていた理性は弾け飛んで。

ぎゅっと強く抱き締めると、首筋に強く口付けた。







「はっ…や…ぁ…!」


─首に、背中に、胸元に。

身体中の至る所に紅い花を散らすように印をつけていく。

弱い所を刺激するたびに上がる嬌声が耳を刺激した。


「ワユさん、背中痛くない?」


ワユさんを傷つけないようにと、脱いで床に敷いたローブが、動く度にさらりと音を立てる。
気遣うようにじっと見つめた僕の視線をやさしく受け止めて、ワユさんが笑った。


「ん…っ。平気」


その言葉にほっと胸を撫で下ろし、やさしく額に口付ける。

そのまま滑るように唇から徐々に下へと口付けを落としていく。

そっと大事なものに触れるように、舌で胸の突起を撫でる。途端、弓なりに身体がしなり、かさとローブが床と擦れ合った。


「はぁ…っ」


荒い呼吸音を聞きながら、舌先で転がすように胸を突起を口に含む。


「や…っ!あぁ…!」


ビクンと身体が弓なりにしなり、一段と高い甘い甘い嬌声が響く。

そのまま、口で胸の突起を転がしながら、そっと指を腹部へ。
…そして、秘所へと這わせていく。くすぐったいのか心地いいのか分からない、くぐもった声が、触れるたびに上がった。


「─っ!あぁっ!」


そっと秘所へ触れるとそこからはもう愛液が溢れていて。
そのまま指を入れると、つぷりと抵抗なくくわえこんだ。


「はぁ…。ん、ぁ…」


違和感に僅かに眉をしかめるが、瞳に拒絶の色はなく。その様子を見て、そのままゆっくりと指を動かしていく。


「ああっ!」


僅かに悦所に触れたのか、ワユさんの身体が大きく弓なりにしなる。
そのまま、二本、三本と指を増やし、段々と動きを早めていく。


「あ…っ!んんっ、ふぁ…っ!」


悦所に触れるたびに上がる嬌声に、ふっと笑みを零すと耳元へ顔を寄せる。


「ワユさん、気持ち良い?」


そっと囁いたその言葉に、上気した頬が更にかあっと羞恥に染まり、ぽろりと生理的な涙が零れる。
そんな姿が愛おしくて、ごめんと謝る代わりに、そっと涙を舐めとり、頬に口付けた。


「ワユさん、良い…?」


熱くたぎる己自身を秘所にあてがって問い掛ける。
ワユさんは、潤んだ瞳でじっと僕の目を見つめると、ぎゅっと僕を抱き締め、耳元で囁いた。


「…良いよ。きて、キルロイさん…」


その言葉をきっかけに、ぐっと力を込め、一気に突き入れる。


「─っあ!!」


くんとワユさんの身体が大きく弓なりにしなり、ぽろりと涙が零れる。
それを舌で舐め取り、ゆっくりと動き始める。


「んん…っ。は…ぁん…」


動きに合わせて上がる甘い声に全身が痺れる。
ゆっくり、ゆっくり。
慣らすように動かしていくと、徐々にこちらの動きに合わせるようにワユさんの腰が動き始める。


「…キ、ルロ…さ…!」


吐き出される荒い息の中、途切れ途切れに僕の名前を呼び、手を伸ばす。
その手に指を絡めると、ぎゅっと強く握りしめ、一気に突き上げた。


「─っ!!あぁ!!」


きゅっと中で締め付けられ、意識が飛びそうになる。
欲情の赴くまま、動きを早くしていくと、それに合わせてぐちゅぐちゅと淫微な水音が部屋に響き。


「キ、ルロイ、さん…っ」


「ワユさん…っ!」


互いに名前を呼び、口付けを交わすと、一気に最奥まで突き上げる。


「ああっ!!」


ワユさんがくんと大きくしなると、自身がきゅっと中で締め付けられ。そのまま欲望を吐き出した。







「よっと…」


そのまま意識をなくすように眠ってしまったワユさんを居間から自室へと運び込み、いつも自分が使っているベッドへとそっと身体を横たわらせる。

すやすやと眠る姿はまるで子どもみたいで、そっと笑みを零す。

このまま朝まで寝かせてあげようと、部屋を出ようと背を向けたところで、くいと服の袖を掴まれる。


「…どこ行くの?」


ぼんやりとした虚ろな瞳で問い掛けられ、安心させるよう笑みを返す。


「居間で寝ようと思って。ワユさんはここで寝て下さい」


「やだ」


眠たそうな声で、けれど、はっきりと拒絶の言葉を口にされる。
返答に困って、途方にくれる僕の手をぎゅっとワユさんは握った。


「…さっき言ったでしょ?朝まで一緒にいようって。だから……」


一緒にいて、と言葉に出さずにぎゅっと手を引いて、ベッドの中へと誘われる。
その言葉に微笑むと、誘われるままベッドの中へと入り込み、ぎゅっとワユさんを抱き締めた。


「…そうだね、約束だったね。朝まで、一緒にいよう」


「ん…。いっしょ…に…」


安心したのか再び眠りに落ちてゆくワユさんの額に口付けを落とし。

腕の中の温もりを大事に抱き締めた。





─貴女が渡り鳥ならば、僕は貴女に咲く菩提樹になりたい。


冷たい雨風から貴女を守り、安心して翼を休められるように…。




─…そう微睡んでゆく意識の中、強くそう願った。




end.




【オマケ】



孤児「おはようございます、先生!」


キルロイ「うん、おはよう。みんな良く眠れたかな?」


孤児「うんっ!いっぱいねたよー!」


ワユ 「みんな、おはよー」


孤児「あ、ワユ姉だぁ!」


孤児「いつ帰ってきたの?」


ワユ 「昨日の夜。みんなが寝た後かな」


孤児「そうなんだ。じゃあ、昨日のってワユ姉かなぁ?」


孤児「そうなんじゃない?昨日の夜に来たんだし」


ワユ 「えっと…何の話?」


孤児「昨日ね、夜に女の人のくるしそうな声が聞こえたの!」


ワユ 「Σ!?;;へ、へぇ〜(引きつり)」


孤児「あれワユ姉なの?どこかケガしてたの??」


ワユ 「へっ?あー…そ、そうなの!ここ来る途中にケガしちゃって、キルロイさんに治してもらったんだ。ね、キルロイさん」


キルロイ「Σえっ?;;あ、そ、そうなんですよ(引きつり)」


孤児「先生、杖つかえるもんね!よかったね、ワユ姉!」


ワユ 「あ…、あはは…。うん、そだねぇ;;」


キルワユ(…次からはもっと気を付けよう…)










久しぶりに書いた裏ものでした。多分昔の方がうまく書けてた(笑)
ぐだぐだなオマケ付きでした。オマケが一番書いてて楽しかったなんてことはないですよ、はい。←←