Winged everlasting最初は、正直頼りないなって思ってた。 だって、肌なんて真っ白だし、前線でバリバリ活躍するような感じじゃないし。 ──でも、違ってた。 あたしは剣の道しか知らなかったから、こんなにやさしい生き方もあるんだって知らなかっただけ。 あなたは、誰かの支えになる生き方を選んだやさしいひと。 そんなやさしい生き方をしてるあなたを守りたいなって、あなたを見てたら段々そう思うようになって。 自分のために強くなる、じゃなくて。 いつもやさしく笑ってくれるあなたの笑顔を守るために。 今よりもっと強くなりたいってそう思ったんだよ。 あたたかな日差しに照らされて、ぼんやりと目を開く。 眠気の残るあたしの耳に小鳥の声が聞こえて、朝が来たことを知らせてくれていた。 「…って朝!?」 その事実に思わず眠気も吹っ飛ぶ。 慌てて体を起こして辺りを見回すと、記憶の中では真っ暗だったはずの世界は、いつの間にか朝の光に照らされてさんさんと光を放っていた。 「えぇえええ!!?嘘!あたし寝ちゃってた!?」 慌てて頭をフル回転させて、記憶を遡る。 確か、いつも通り訓練をしようと近くの丘までやってきて。 寝る前にいつもやる素振りをし終わって…。 「…で。どうしたんだっけ…?」 そのまま帰ろうかと思ったんだけど、疲れていたせいか何だかひどく眠たくて。少しだけ、と自分に言い聞かせて、近くの草むらに寝転んだんだ。 「あー…あのまま寝ちゃってたんだ…」 少しだけのつもりだったのに。うっかり寝てしまうなんて、何だか気が緩んでる証拠みたいで情けない。 はぁ、と大きくため息を付いたところで、ふと膝元に落ちているものに気づいて、そっと拾い上げる。 「これ…見たことある…」 拾い上げたそれは、真っ白なローブで。確かに見た覚えがあるそれに、首を傾げていると、草を踏み分けて近づいてくる足音が聞こえた。 「あぁ、起きたんだね」 おはようと笑顔で微笑みかけてくれたキルロイさんを見て、手にしていたローブの持ち主が誰であるかようやく気づく。 「これ、キルロイさんが?」 「うん。あのまま寝てたら風邪を引いちゃうかなって思って」 大丈夫?と尋ねてくれたキルロイさんに笑ってみせる。 そのまま立ち上がり、ローブについた草を払って、キルロイさんに手渡す。 「ありがと。おかげで寒くなかったよ」 「なら良かった。…本当は起こしてあげようと思ったんだけど、あんまり気持ち良さそうに寝てたから」 起こすのが悪くてと微笑むキルロイさんの言葉に、思わず思考が止まった。 「も、もしかして…。あたしが起きるの、ずっと待っててくれたの?」 「うん。外で一人で寝かせる訳にはいかないしね」 気にしなくて良いよと微笑むキルロイさんに、ひどく申し訳ない気持ちになって、慌てて言葉を続けた。 「お、起こしてくれれば良いよ!ごめんねっ!じゃあ、全然寝てないでしょ?」 「少し寝たから大丈夫だよ」 そう言ったキルロイさんの顔色はいつもよりも少し青白くて。 どう見ても、「大丈夫」なようには見えなかった。 「大丈夫じゃないよ!!早く帰って─」 「ここで良いよ。今日はあったかいし」 そう言って空を仰いだキルロイさんの視線を追うようにあたしも空を見上げる。 さっきは起きがけで気づかなかったけれど、確かにいつもよりも日差しがやわらかくて。 ぽかぽかと心地良いあたたかさだった。 「じゃあ!今度はあたしが見張ってるから」 「うん、ありがとう」 寝て寝てと急かすようにキルロイさんの背中を押すと、苦笑しながらキルロイさんは草むらへと寝転んだ。 その隣にそっと腰を下ろすと、ぽつりと呟く声が聞こえた。 「………最近、訓練ばっかりしてるね」 「うん。強くなりたくって」 「…そっか」 そう呟いた声は寂しげで。どうしたんだろうって気になって顔を覗こうとしたけれど。 キルロイさんは背中を向けてしまっていて、その表情を知ることは出来なかった。 「…ね、キルロイさん」 「ん?」 呼びかければ、ようやくこっちを向いてくれて。 それが何だかうれしくて、思わず笑みがこぼれる。 大好きなやさしいオレンジ色の瞳をじっと見つめて、言葉を紡いだ。 「あたし、強くなるから」 ──やさしいあなたを守れるように。 あなたの隣で、ずっと戦えるように。あなたは、あたしが守りたいから。 だから、強くなりたいんだ。 誰よりも、強く。強く。 「…うん。僕も、負けないように強くなるよ」 「キルロイさんは強くなれるよ」 誰かを守る強さがあなたにはあるから。きっと、きっと強くなれる。 誰かのために戦うやさしさが、きっと力をくれるから。 だから、あたしも負けないように強くなるんだ。 みんなを守るあなたを守る為に。 「…強くなろうね、キルロイさん」 絶対、絶対強くなるから。 だから、あたしにあなたの笑顔を守らせて。 END 【Winged everlasting】 花言葉:不変の誓い |