11月の夕方
※花END後
晋作さんがあたしの首もとに顔を埋める。晋作さんの肩の向こうには雲ひとつない青空が広がっていた。この時代もあたしがいた時代も青空だけは変わらない。
「…晋作さん」
「なんだっ?」
「ふふっ、なんでもない」
「む、おかしな奴だな」
晋作さんはガバッと起き上がってあたしを抱き上げて自分の膝の上に乗せた。後ろからあたしを抱きしめて耳元で「杏絵…」と囁いた。
「俺はお前がいれば幸せだっ!」
無邪気な笑顔でそう言いながら晋作さんはあたしを抱き上げた。クルッと向きを変えてまた膝の上に座らせた。
「…お前は?」
さっきまでの笑顔は消えて真面目な顔で、少し寂しそうな顔をした。
「あたしも晋作さんがいれば幸せ」
この言葉に嘘はなかった。晋作さんと一緒に居れれば良い。晋作さんを優しく抱きしめた。さっき晋作さんが全てを込めてくれたように、今度はあたしが全てを込めた。晋作さんに伝わってほしい、あたしの気持ちも…
「あたし…分かったかもしれない」
「なにがだ?」
「あたしがこの時代に来た理由」
抱きしめていた腕を話して晋作さんと目を合わせる。
「あたし、きっと晋作さんを助けるために来たんだよ」
晋作さんは目を真ん丸にして少し驚いた顔をしたけど、すぐクシャッと笑顔になって「そうかもしれないなっ」と言った。
あたしは晋作さんの顔を両手でそっと包んだ。
そしてどちらともなくもう一度口付けを交わした。
「晋作さん、寒いからお布団に戻ろう」
空はあたしがいた時代と変わらない。空はもうオレンジ色に染まっていた。
11月の夕方
(ただただ愛している)
2010.12.22
赤キク(愛しています)
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