笑顔に触れたい





いつも通りの昼下がり。いつもと違うのは今日はのんびり出来る事。大政奉還も無事に行われて落ち着いた今日この頃、ちょっとした休日のような感じ…

縁側に座ってうとうとしていると人の気配を感じ、顔を上げると姉さんが何かを大切そうに抱えて歩み寄ってきた。



「慎ちゃん、これ一緒に食べない?」

「なんスか?それ」

「苺大福っ!」



嬉しそうに微笑む姉さんが抱えていたのはたくさんの苺大福。龍馬さんがくれたらしい。そう言えばもう苺の季節か、と思っていたら姉さんが隣に座って苺大福を頬張っていた。



「ん〜おいしい!慎ちゃんも食べて!おいしいよ」



苺大福を頬張りながら俺に笑顔を向ける姉さんの口元は片栗粉で真っ白になっていた。

くっと俺が笑うと首を傾げて瞬きをした。


その仕草がどうしようもなく可愛くて、気付けば唇を重ねていた。唇を離すと口元とは対照的に真っ赤な頬。



「し、慎ちゃん…!」

「姉さん、口元真っ白っスよ」



俺がそう言うと更に頬が赤くなった。ゴシゴシと口元を手で拭う。

苺大福を持って来た嬉しそうな顔も、苺大福を頬張る顔も、こうやって真っ赤になってる顔も、全部俺にだけ向けて欲しくて……



「杏絵さん、俺……」



笑顔に触れたい
(貴女を俺だけの物にしたい)



2011.04.02
イカリソウ(独占欲)





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