帰ってきて、笑顔





目の前で眠っている以蔵はもう丸3日眠ったままだ。新撰組に見つかって捕まりそうになってしまった龍馬さんを助けに行って傷だらけになって帰ってきた。奇跡的に一命は取り留めたものの、ずっと意識を失ったまま。弱々しく聞こえる呼吸だけが生きている事を証明してくれている。

なかなか開かないその瞼を見ていると、悪い予感しかしなくて…。今頑張っている以蔵の方が辛いのに涙が溢れそうになった。


枕元に置いてある桶に手ぬぐいを入れて絞る。少しやせ細った以蔵の身体を優しく拭く。小さな刀傷はもう瘡蓋になっていた。

あたしは何度も以蔵に助けられたのに、あたしは以蔵に何をしてあげられるかな。…何もしてあげられない。だけどあたしは絶対にこの手を離さない。以蔵がいつ目を覚ましても良いようにすぐ傍にいるよ。



「愛してるよ、以蔵」



以蔵の手を取ってあたしの頬に添える。その手は今までと変わりなく温かくて、目を閉じるとすぐ傍に以蔵を感じた。きっとあたしたち、どこにいたとしても繋がってるよね。



「俺もだ」



以蔵の手がしっかりとあたしの手を握っている。



「い、以蔵…?」

「またお前に世話かけたな」



だが、もう大丈夫だ、と起きあがり微笑むその顔はあたしが大好きな以蔵の笑顔だった。思わず涙が溢れる。大好きな笑顔が涙で滲む。そっと抱きしめると、大きな手が髪を撫でる。



「以蔵が死んじゃったらどうしよう、ってずっと考えてて…、でも本当に良かった…!」

「お前を残して死んだりするか。それに…」



以蔵はおでこにちゅっと口付けてあたしを引き寄せた。心臓の音が聞こえる。以蔵はあたしの耳元でそっと囁いた。



「お前を守ると約束したからな…、お前を残して死ねない」



帰ってきて、笑顔
(幸福の再来を噛み締める)


2011.03.21
スズラン(幸せの再来)





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -