サンザシ | ナノ







「どうした?クリス外ばかり気にして」

自分ではそんなつもりもなかったが、結城に声をかけられはっとした。

「いや、何でもない」

「今日来てないね、あの美術部の一年」
小湊に言われて結城もそう言えばそうだなと頷く。

「苗字だっけ?今日はいないね、どうかした?」そんな風に聞かれても、俺は答えを持っていない。
「あぁ、知らないから気になってるのか」勝手に納得する小湊の鋭さに押されて反論も出来ずにいたら「そんなに気になるなら連絡先くらい聞いておきなよ」と言われてしまった。

ほら、練習戻るぞと結城に背中を押されながら、そう言われてみれば連絡先を知らないなと思った。









「クリス先輩こんにちは!今日もよろしくお願いします!」
次の日、何事もなかったように元気に挨拶をしに来た苗字に昨日はどうしたんだ?と聞けば、昨日は一年は課外授業だったので学校には来ていなかったと言われてしまった。

野球部一年は普通に課外授業後部活に参加していたので、全く気づかなかった。

どうかしました?ときょとんと首を傾げられ、元気なら良いんだと言えば、後ろで小湊が笑う声が聞こえた。

アイツ知っていたな…

「クリス先輩?なんだか怖い顔してます…」

「いや、なんでもないんだ。そうだ苗字良ければ連絡先を教えてくれないか?」

そう聞けば、苗字は驚いたように目を見開いた後、ぱぁっと効果音が聞こえる程の笑顔を見せて「はい!是非!」
と喜んでいた。

「練習始まるから後でな」

「はい!練習頑張って下さい!」見送る笑顔がいつもより可愛く見えたなんて、小湊にバレたら大変だな、と思った。







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