サンザシ | ナノ







放課後苗字に俺の連絡先を教えた…のだが。


連絡が来ない。


自分のを教えただけで、向こうの連絡先を聞かなかった。
一言くらい連絡があるかと期待していたんだが…。

迷惑だっただろうか。先輩に言われたから嫌でも断れなかったのだろうか…いや、嫌がっているようには見えなかったのだが。


「また悩み事?」

「あ、いや…」
鋭いなと、自嘲気味に笑うと「スマホチラチラ気にしてるし、食事中も心ココにあらずだし俺じゃなくても気づくと思うけど」隣いい?そう言いながら小湊が夕食を持って返事を聞く前に座った。


「連絡先聞いたの?」

自分の連絡先しか教えなかったこと、相手から連絡がないことを簡単に話すと、「苗字の方から連絡があると期待してたけどないから拗ねてるんだ」とまたニヤリと笑われる。

「…拗ねてはいない」

「苗字のことだからすぐにでも連絡が来そうなのにね」あぁ見えて何て送ろうか凄く悩んでるのかもね。なんて、自己解決した小湊はそれだけいうと山盛りのご飯を平らげていく。

「そう言えば苗字って御幸や倉持と同じクラスじゃなかった?」

「そうなのか?」

知らないの?なんて言われて、やっぱり自分は苗字のことを何も知らないんだな、と思った。

そう思うと何故だか余計に連絡が欲しいような気がして、なんとも静かなスマホを見つめるしかなかった。






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