王様、高杉=アニ銀EDの皇帝っぽい衣装
王様に仕える男、銀時=華祭りグッズの中華風衣装
奴隷となったお姫様の話。
唐突に始まって唐突に終わる。書きたいところだけをかいて力尽きました。


某国、某所

露草色の戦装束を身に付けた銀髪の男が暗がりへと続く擦りきれた木の階段を降りていく。
一歩踏み出す毎に階段が軋み、カビの臭さが鼻をついた。

手に持っていたカンテラを掲げる。鉄格子の中を照らすと足枷を嵌められた女がひとり、顔を俯かせていた。男の気配に気付くと女は顔をあげ、男を睨み付けた。

「まだ、そんな顔が出来るのか」

男は嗤笑する。
女は某国の姫だった。この国と戦争をし、女の国は負けた。本来なら王族は皆、処刑するのだが、この国の王は女を戦利品として持ち帰ったのだ。

「……たか……王が呼んでるぜ。全く、こんな汚ぇお姫(ひい)さんの何処がいいんだか」

男は牢の鍵を開け、女を引きずり出す。足枷ががちゃがちゃと煩く音を立てた。

「王に会う前に、あんたのその格好をなんとかしねぇといけねぇな」

鼻筋に皺を寄せ、汚ならしいモノを見るような蔑んだ目付きで女を見る。
元は上等な衣装であったはずであろうが、今やあちらこちら破れている。カンテラの灯りにぼんやりと写し出させる膚は泥や埃で黒く煤けていた。
このような汚ならしい姿で、王の前に出せるはすがない。湯浴みをさせ、女にこの国で一番の上質な生地で作られた着物を与える。侍女に髪を結われ、薄い化粧を施された女はまるで春に降った雪のように儚げで、美しかった。
練り香水を付けているのか、女からは鈴蘭の香りがほのかに漂う。先程まで薄汚れていた女が、たちまち気品溢れる姫になる。男はその美しさに惑されそうになった。王は此に惹かれて女を持ち帰ったのかと息を呑む。
この女を哭かせて見たいと一瞬、思った。
しかし、王が気に入った女だ。手を出せば打ち首は間逃れない。馬鹿な事を考えるな、と男は頭を降った。

女を引き連れて、男は王室へと向かった。

「陛下。連れて来ましたよ」
「嗚呼。此方へ来い」

威厳を含んだ低い声が王室に響き渡る。龍がとぐろを巻いた玉座に座るひとりの男。この国の王である。
金箔の冠を頭に被せ、紫苑色の着物を纏い、金糸を贅沢に使ってあしらわれた蝶の羽織を肩から掛けていた。
若いながらにも一国の王たる威厳をたっぷりと纏っている。
しかし、なにより人々の目を引くのは端麗な容姿であろう。
煙管の吸い口にあてがう唇は形がよい。銀髪の男に比べ線が細い。月夜見の如き妖しさは儚げで美しかった。
王は玉座から立ち上がり、ゆっくりと女へ歩み寄る。
王を目の前にしても女は怯むことはなかった。寧ろ、憎悪に満ち目で王を睨み付ける。

「……人殺し。父と母を殺めたおまえを、私は許さない」

怒気をはらんだ口調で女は静かに言った。すかさず、傍らに佇んでいた男が「王に対して無礼な」と食って掛かるが、王は「よい」と言って男を制する。

王は、煙管の先で女の顎を持ち上げた。切れ長の目を細め、翡翠色の瞳の奥をぎらりと光らせながら「やはりお前を持ち帰って正解だった」と嗤った。



※此処で力尽きました


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