どうしても外せない依頼がある神楽ちゃんと新八君から、風邪ひき銀さんの看病を頼まれたのが今日の朝のこと。
なんでも酔っぱらってごみ溜めに突っ込んでそのまま朝までぐーすか寝てしまったらしい。
なんとも銀さんらしい理由に呆れるどころか、逆に感心してしまう。
「銀さん、お粥出来ましたよ」
「ん」
「食べれます?」
「たべさせて」
口を開けて待つ姿はまるで雛鳥に餌付けをしているような気分になったの。
「味がしねぇ……」
もそもそ食べる銀さんに、餌ではなく、お粥を与えつつも可愛いと思ってしまったのはここだけの話ね。
「お薬ですよ」
「苦いからやだ」
「やじゃないです。飲まないと治りませんよ」
「わーったよ、飲めばいーんだろ。飲めば」
ピシャリと言えば、銀さんは渋々薬を飲んでくれた。
「うぅ……苦ぇ。苦ぇわ……薬って、何でこんなに苦ぇのかねぇ。どーせならいちごミルクの味にでもしてくりやぁ、飲みがいがあるってぇもんなのによぉ」
薬の苦味で顔をくしゃくしゃにして文句を言う姿はまるで子どもだわ。
「良薬口に苦しって言うじゃない。もう、子どもじゃないんだから文句言わない!」
「へぇ、へぇ。わぁーったよ。厳しいこって」
「銀さん、汗ふきますね」
「んー」
熱でぼんやりする銀さんの上体を支えて起こす。
「だめだわ。指がうまく使えね。ぬがして」
「はいはい」
甚兵衛の紐をほどくと、逞しい身体が露になった。透明な滴が筋肉の隆起に沿って流れ落ちていく様はやけに官能的で。思わず生唾を飲み込んだ。余計なことを考えないよう、頭の中で某ネコ型ロボットの歌を口遊みながら、銀さんの身体を拭いた。だけど、耳に掛かる吐息の熱っぽさや、汗ばんでいて体温が高い肌に、いやでも数日前の蜜事を思い出して、頬がかぁっと熱くなった。
――なに考えているのよ!
慌てて邪念を振り払う。
「どーした?」
熱っぽい声で囁くように名前を呼ばれ、ぞくぞくとした快感に襲われる。
「な、なんでもないですっ」
銀さんに悟られたら、絶対に助平なことに持ち込まれる。神楽ちゃんや新八君がいつ帰ってくるかもわからない昼間からえっちをするなんてまっぴらよ。まして、銀さんは風邪を引いている訳で。無理をさせたら余計に風邪を拗らせ兼ねない。必死に平素を装うけれど、先ほどから下腹部が疼いて仕方がなかったの。
「嘘はいけねぇな」
手首をむんずと掴まれ
「さっきから、もの欲しそうな顔しやがって」
硬く脈打つそこに導かれる。
「欲しいんだろ?」
お腹に響く低い声で囁かれ、耳をねぶられるだけで蜜が零れ落ちる。心地よい酩酊感に私の決心はいとも簡単に崩れるの。
「ほしい、の」
銀さんのカタチが、欲しくて、欲しくて。熱い息を吐いて彼を見上げれば、銀さんは
「俺ぁね、風邪引いてしんどいからよ。欲しいんならおめぇが動いてね」
と、にんまり笑って私を溶かしていくの。


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