十.伽羅の座敷 下*

*露骨な性描写あり。注意。


一瞬の静寂に包まれた座敷。
誰も、沖田さえも声を発することはなかった。
その静寂を切ったのは銀時だった。

「千草!」

クマを踏み台にするかのように、その巨体に足を乗せ、ひらり跳躍する。床に転がる死屍累々になりかけのやつらを飛び越え、ぐったり横たわる千草のもとへ着地すると、血のついた木刀を投げ捨て、変わりに千草の肩を掴んで抱き起こした。
気を失っているのか瞼が落ちている。だが、相変わらず身体は熱い。小さく開いた唇からは荒い息が漏れていた。

「お見事」

ひゅうと沖田が口笛を吹いた。

「お見事じゃねぇよ。ふざけてねぇで、こいつを何とかしねぇと。解毒剤みてぇなもんとか押収してねぇの?」
「残念ながら、薬はねぇんです。ひとつわかっているのは、この伽羅に混ざった媚薬はちょいと厄介でしてねぃ。記憶が残らねぇ副作用があるらしいんです。少量だと一時的な記憶が消える程度らしいんですが、大量に媚薬を摂取すればそれだけ、記憶がぶっ飛んじまう。それこそ、記憶喪失や、運が悪けりゃあ廃人にまでなるらしいこともあるそうで。しゃぶみてぇに使っているところもあるそうでさ。だから、こいつらはこれを女どもに嗅がせて、記憶を無くしてラリった状態で売り飛ばしていたらしいんでさ。全く、反吐が出るほど胸糞悪ぃ話でさ」
「……そりやぁ、くそみてぇな話だな。つうか、沖田くん。いいの、俺にそんな情報をべらべらと喋って」
「別に。こんだけの騒ぎ、マスコミどもが嗅ぎ付けて、明日の朝刊の一面を飾るはずですぜ。お手柄!真選組と、天パ男!!ってな見出しで」
「おいおい。その天パって」

言い返そうとして、銀時は口をつぐんだ。
誰かこの店に入ってきた。新しい気配はふたり。微かな殺気も混じっている。足音はない。場馴れした奴等か。
咄嗟に転がっていた木刀を広い握り締めた。

「旦那ァ」

頭上から沖田の笑い声が降ってきた。

「安心してくだせぇ。敵ではねぇです。……まぁ敵より厄介ですがねぃ」

うわ、こりゃあ派手にやらかしましたね

なんて何処かで聞いた声がした。距離はまだある。

ーーあれ、この声。なんだっけ……やま……じみー?

おい、神山ぁ。総悟は上か?
はい!

更に声があがる。

ーーんん??
この腹立つ声はあの前髪Vの字野郎か?

「沖田くんさ、もしかして、ふくちょーさんも一緒だったりする?」
「俺らは土方さん指揮のもと、ここに討ちいったんで。あーあ、土方さんがこの状況みたらなにを思うか。そりゃあ楽しみでさぁ」

銀時の顔からさっと血の気が引いた。
沖田ならまだいい。この状況を楽しんでいるだけだから、いくらドSとて後先弱味に漬け込んではこないだろう。多分。
しかし、真選組の副長はそうはいかない。真選組お抱えの医者が大切にしている助手が媚薬に呑まれたのだ。
しかも、向こうは千草に気がある素振りをみせているような奴で。
それが気に食わない相手と一緒に出逢い茶屋にいたと知れば、それはもう大変面倒臭いことになりかねない。


ーー逃げるが勝ちだな。

しかし、逃げ道はひとつしかない。そこには銀時が最も会いたくない奴らがいるわけで。
さて、どうしたものか。
思考を巡らせていると、沖田が旦那、旦那ぁとまた秘密を含んだ声で囁いてきた。

「ここぁ、一応要人御用達でもある店ですからねぃ。もしもの時の為に逃げやすい造りになっているんでさ」

沖田が指で示した先は障子窓だった。

出逢い茶屋というのは、人前で大っぴらに合えない男女の逢瀬が目的の場所でもある。
既婚者同士や有名人が不倫をするのに昔からよく使われているのだ。
その為、なにかあった時は何時でも逃げれるように逃げ道があるのが基本で。

この茶屋の逃げ道は障子窓の向こう。緩やかな屋根の作りになっているので、屋根を伝って、備え付けの梯子を使えば地上に降りることが出来る。

なるほど。この男はどうやら逃がしてくれるらしい。

「お前、ほんとにどっちの味方なの」

千草を肩に担ぎ、訝るように言った。

「実は山崎が向かいの建物からずっとここを見張ってたんで。だから、旦那がここにいるこたぁ既に知られてると思いやすぜ。んなわけで、俺が止めるのも聞かず、旦那が勝手に飛び出しちまったって土方さんに報告しときやすぜ」
「おい、殆ど俺が悪もんじゃねぇかっ!」

銀時が窓枠に足をかけた丁度。

「そぉぉごぉぉ!てめぇ、なに派手にやらかしてんだぁぁぁ!」

地を這う鬼のような声と共に、鬼のような形相をした土方が、白刃を振り回しながら姿をみせた。

「げ、土方」
「げ、じゃねぇよ、この……って、てめぇ万事屋!!なに野村連れて逃げようとしてんだ!」
「……ボクハヨロズヤナンテナマエジャアリマシェーーン!」

軽々と窓から飛び降り、勢いに任せて屋根の上を走る。確か、備え付けの梯子があったはず。
が、梯子は朽ちていた。

話がちげぇぇ!

ツッコミを入れながら、銀時は方向転換し河岸に生えて茶屋にまで腕を伸ばす木に飛び移る。

こいつぁ、すげーや、流石白夜叉!

頭上からからかう声が聞こえたが、反論する余裕はない。
幸いにも足を乗せた場所から地面との距離はあまりない。

「千草ちゃん、落ちんなよ」

返事はない。
肩に担いでいた千草を横に抱いて、跳ねるように飛び降りた。





銀時は千草を抱えて、路地裏を猫のようにするすると進む。
かぶき町近辺は銀時の縄張りである。
どこの道を通って、何処に出るか。そんなの銀時にとっては朝飯前だった。
しかし、顔が知られているのも厄介なもので。道行く先々で怪しい風貌の男やら、煙草を吹かせた女、おかまから声を掛けられることもしばしば。

「銀さん、ちょっと寄ってかないかい。って、なんでぃ。女連れかよ。それにしても、その嬢ちゃん、顔赤いな」
「あらぁ。パー子さぁん。今日は女の子連れてるのね」
「だああ!うるせぇ、うるせぇ!くっつくなよ、俺ぁ忙しいの!ちょ、てめっ!こいつに触んじゃねぇ」

亡者のようにわらわらと伸びる手を交わし、銀時は夜の闇をかける。

「千草ちゃーん。おい、千草」

繰り返し名を呼んでみるが、反応すら返ってこない。
こりゃやべぇよ。
これは早急になんとかしないとヤバい状態になりかねない。


ーー媚薬の効果を薄れさせるには、どーいう手を使うか。旦那ならよく知っているはずですよねぃ。

窓から逃げる直前。にんまりと笑った沖田に囁かれた。面白いことが起きることを期待して止まない悪戯好きな子どものような顔の裏に、悪魔を見た気がした。

可愛い顔して、末恐ろしいガキだせ。

銀時は錆びれたホテルの前で足を止めた。金が無いので安い値段設定の場所だが、こういったところは受付のスタッフが余計な詮索をしなくていい。

「いっちばん安い部屋、空いてる?」
「……床に吐いたら弁償して貰うよ」

掠れ声の女がすり硝子越しに部屋の鍵を寄越した。およそ、酒に酔った女を連れ込んでしっぽり。なんて思っているぐらいだろう。
鍵を受け取り、エレベーターに乗る。
 
ーーま、しっぽりっちゃあしっぽりなんだけどな。

エレベーターを降りて直ぐの部屋。48号室。
しんしん、しんぱちぃーってか。ぱっつぁん、こんなところまできて新八を発揮するんじゃあねぇよ。
心のなかでひとり漫才を繰り広げ、片手で器用に鍵を開ける。
中はこじんまりとした殺風景な部屋だった。簡易なベッドひとつと、テーブルにソファアがあるだけ。
流行りのお洒落な内装とは程遠い、まさに事をなすだけの作り。
自分たちが先ほどまでいた茶屋のほうが、もっとずっと洒落ているぐらいだ。
千草をベッドへと降ろし、その横に腰をかけると、スプリングが嫌な音を立てて軋んだ。

こりゃあ、激しいプレイでもすりゃあお陀仏だな。もっとマシなとこにすりゃあよかったぜ。

「おーい、千草。千草ちゃーん。起きろ、ぶっ飛んでんじゃねぇぞー。」

千草の頬をぺちぺちと軽く叩きながら、銀時は肩を揺らした。
刺激を送り続けて漸く、千草の瞼が持ち上がる。

「……ぎ、ん…さ、ん?こー、」
「こー?こーひー?」
「こ、こ…どこです?」
「んー、と。ラブホ」
「らぶ……ほ」
「そーそー、ラブホテルね。安心しろ。さっきの茶屋みてぇに裏で何かあるような場所じゃねぇから」
「…そ、ですか…」

言葉足らずな喋り方は媚薬のせいだろうか。

「なぁ、千草ちゃん」

指の背で熱を持った頬を撫ぜると、千草の肩がひくりと跳ねた。

「千草ちゃんさ、どーやら、媚薬を嗅いじまったらしいんだよね」
「び、やく……?」
「そ。あの部屋、伽羅の匂いがしたろ?伽羅に媚薬が混ざってたらしいんだよね」
「……ぎんさんは、なんとも、ないん、です?」
「なんもねぇよ」

媚薬はなんともないが、千草の蕩けきった顔をみていたら股間に熱を帯びてきてしまった。
ちんこ勃っちまいそうなんだけど。
なんて言葉を呑み込んで、銀時はごく真剣な顔を作りながら続けた。

「その媚薬っつーのは、女にしか効かないらしいんだよね。どーやら、わるーいことに使われていたらしいぜ。千草ちゃんと俺はたまたまそのわるーい現場に居合わせちまったってわけよ。……こーなったのは、俺の責任でもあるからよぉ……」

自分でも驚くほどするすると言葉が出るもので。銀時は千草の頬をなぜる手を止めて、熱を孕んだ深紅の瞳を向けながら、鼻先が触れる距離まで顔をぐんと近付けた。

「責任持って俺が苦しみから解放してやらぁ」
「か、かいほー?どうやって?」

普段の千草からは想像出来ない舌足らずな喋り方が可愛く思えて。蕩けた瞳のなかに自分の顔が映り込むのをみて、気持ちが弾む。
それを必死に圧し殺し、平静を装っていつもの気怠い表情を作った。

「媚薬の熱をとって下さいって、万事屋銀ちゃんへ依頼すりゃいーだけのことよ。俺はあくまで万事屋として依頼を引き受けてやる」

千草は銀時から視線をずらし、狼狽した。

「……ぎんさんは、」
「ん?」
「ぎんさんは、いいんですか?」
「千草ちゃんがいーなら、俺は別に構わねぇよ。言ったろ?こーなっちまったのは俺にも責任があるって」

銀時にとって女を口説くのは朝飯前だ。
いや、時々原始人並みの口説き方をして平手打ちをくらうが。
自他ともに認める口先から生まれてきたような男だ。
今までだって千草の心の隙に入り込むために、嘘偽りで固めた言葉を囁いてきた。
だが、どうしてだか今は反吐が出るような甘い台詞を言えなかった。
鼻先にかかる千草の熱い吐息。
潤んだ瞳。
火照った身体。
全てが銀時を狂わせる。
身体中を巡る血が熱く沸き上がり、今すぐにでも目の前の女を張り倒し、泣き叫びのも構わずに肉欲をぶち込んでやりたいと黒い感情が渦巻いてしまう。

違う、違う。
そんなんじゃダメだ。そんなんじゃただの強姦じゃねぇか。

理性を総動員させて必死に堪えた。

「ぎんさん、」

そんな銀時を他所に、千草はそろりと伸ばした手で銀時の着流しをきゅっと掴んだ。
小さな唇を震わせながら、銀時を見上げる。

「……ずっと、からだがあつく、て…。へ、へんなんです……よくわからないけど、じんじんして……いらい、します……ぎんさん、たすけて」

くらりと目眩がした。

「……千草ちゃんさ、あまり俺を煽らないでくれ」
「……?」
「……天然かよ。……くそっ……。まぁ、いーや。依頼はちゃーんとこなすから。ほんじゃ、汚れるし着物脱いじゃおっか」
「や、まっ」
「待たねぇよ」

逃げようとする千草の肩を掴んで引き寄せ、ベッドに押し付け、器用に帯を解く。
脱いだ着物と帯はそこら変に放り投げた。
白い長襦袢は汗で肌に張り付き、千草の身体のラインを際立たせている。
恥ずかしげに身体を縮こませる千草だが、下着と尻の形が強調されてしまいそれが逆に銀時の加虐心を煽った。

この女は快楽に溺れたとき、どんな声で啼くのだろうか。
おとなしい女ほど、快楽を知ると乱れ淫靡になるときく。
はやく、はやく。この女を啼かせ淫らな姿をみたい。

沸き上がる欲望を必死に抑えながら、銀時は備え付けのタオルを取って、千草の目を覆った。

「や、な、に?」
「ちょっとした目隠しだよ。これで俺の顔は見えなくなったろ?好きな男に抱かてると思っとけば少しは楽になるはずだぜ」

言って胸がつきりと傷んだ。
千草には好きな男がいるのだろうか。
妙齢の女なんだし、好きな男のひとりやふたりいてもおかしくはないだろうが、そこに自分はいるのだろうか。
もしその相手があのマヨラーだったら……、と考えると妙に苛立つ。

じゃあ、今だけ。この時間だけは俺のもんにしてもバチは当たらねぇよな。

「はぁい、ちょっくら失礼。起きよっか」

千草の肩の下に手を入れ、抱き起こす。
胡座を掻いた膝の上に乗せて、横向きに抱いた。

「なぁ、キスしていい?」

一応、断りは入れるも、千草の返事を聞かずに、しどけなく開いた唇に自分のカサついた唇を重ねた。触れるだけの口づけを繰り返し、角度を変えて深く口内を弄る。

「ん、ふぅ……んんッ」

呼吸をする暇さえも与えなかった。上手く息が出来ないのか、眉を寄せ苦しげにする千草を他所に半襟合わせに手を忍ばせ、乳房を揉んだ。
やっぱ、餅みてぇ。
手のひらに吸い付いて、しかし弾力のある乳房だった。
おっぱいのデカい女が好きだが、こうやって手のひらに収まるサイズもたまらなくいい。
そんな下世話なことを思いながら、硬く尖り始めた頂きを摘む。

「ひゃ、んっ!!」
「千草ちゃん、乳首弱ぇんだな」

耳元で息を吹き掛けるようにして笑い、くるくると捏ね回しながら、もう片手では大腿を撫でた。
下着の上から花弁を押すと、くちゅりと湿った音がして下着に染みを作った。

「ひっ」
「すげ。もう、こんなに濡れてる。千草ちゃん、沖田くんがいるときから、ずっとこんな状態だったの?」
「ち、ちがっ、あ……うっ」
「いやー、千草ちゃん。よぉく頑張ったね。すげぇよ。薬にやられちまってま○こ汁をこんなに滴らせて、よく我慢出来たね。おぼこなのに、えらい、えらい。そんな千草ちゃんにご褒美をやろう」
「ひ、んっ、あ!」

下着の上から爪で割れ目を引っ掻いてやると、染みは更に広がる。
下着のゴムに手をかけ、ずり下ろすと粘りけのある糸を引いていた。
千草が足を閉じる隙も与えずに、即座に手を差し込んだ。
親指と人指し指で花びらを摘み、ぎゅむぎゅむと暖急をつけて揉む。すると、千草の身体がいっそう跳ねた。
蜜に濡れた花びらを丁寧にめくり、潤いに満ちた蜜壺へと指を忍ばせる。
入口を指で擦ってやると、銀時の指を待っていたと言わんばかりに熱い蜜が絡みついてきた。

「すげ、とろっとろ。千草ちゃん、おぼこのくせに淫乱だな。」
「あ、あ、ちが、はぁ」
「違わねぇだろ。さっきから腰が動いてんぞ。そんなにいれて欲しいの?」

とろとろと蜜を垂らすそこに、つぷりと指を差し込んだ。
千草のなかはぬかるんで、それでいて熱かった。沈めた指の先がじんと熱を持つ。

「はぁ……やべ。熱ぃ……。……痛い?」
「ん、へ、へい、きっ」

蜜を絡めながら、くちくちと膣壁を擦り、奥へと指を沈ませる。
奥から湧き水のように溢れでる甘い蜜。くちゅりくちゅりと水音が増し、銀時の手首まで蜜を滴らせていた。
可愛がって、少し解れたところで指をもう一本増やす。かき混ぜ、指を屈伸させ、巧みに指を動かしながら、存在を主張するかのようにぷっくりと膨らむ花芯を親指でくりくりと捏ね回した。

「あああっ!ぎんさ、そこ……あんっ、だ、めぇっ」

与えられる快感に耐えきれず、逃げ場を求めるようにさ迷う千草の手が、すがるように銀時のインナーをきゅっと掴んだ。

「あ、あ、あ…やぁ、ぎんさ、ぎん……ッ」

はしたなく涎を垂らした唇はしどけなく開いて、熟れた舌を覗かせる。
矯声と吐息が入り交じった声で、ぎんさん、ぎんさんと繰り返呼ばれて、銀時は堪らなくなった。

頼む、そんな声で俺の名前を呼ばないでくれ。

「なぁに、イキそ?」
「わ、わかんなっ、なんか、へん……っ」
「そっか。じゃあ、一度、イっちまいなよ。楽になっから」

指をまた一本増やして、奥へと突き進む。三本の指をばらばらと動かし掻き回しながら、花芯を強く摘まんだ。

「ーーッ、っ、ぁあっ」

千草が言葉にならない声をあげたのと同時に、膣を収縮させて銀時の指をきゅうっと締め付けた。

「そ、いーこ。ちゃあんとイケたじゃねぇの」

銀時は蜜壷から指を引き抜き、絡み付いた蜜を舐める。濃厚な蜜の味は、これまで食べた甘味よりも蠱惑的で甘かった。

「千草ちゃんのマ○コ汁、えっちな味がすらぁ」

力なく寄りかかる千草の頭を撫でて意地の悪い言葉を吐くと、千草が小さく震えて「へ、んた……い 」と悪態を返してきた。

「男はみんな変態なんですぅ。まだ余裕あるみてぇだな。ほんじゃあ、言い返せなくなるようなきもちーことしようぜ。第二ラウンドといこうや」
「や、まだ、や…るんですか、?」
「当たり前だろ?その様子じゃあまだ薬抜けてねぇみてぇだし、それに俺も気持ちよくなりてぇんだよね」
「あ、」

千草の身体を軽々とベッドへ押し倒し、頭を押し付ける。
腰を掴んで力任せに引き上げると、銀時に尻を突き出すような体制を取らせた。
流石に恥ずかしいのか、千草が身を捩って抵抗するが力で捩じ伏せた。

「いーケツしてんね」
「ひんっ!」

腰紐を解いて長襦袢をはいだ。
身に付けるのは足袋だけ。
これはこれで妙に背徳的でいい。エロい。
心の中でひとりごちて、舌を舐めずる。
銀時も着流しを無造作に脱ぎ捨て、インナーだけの姿になった。
白くてつややかな尻を撫で、両手で双丘を掴んで左右に軽く割ると、菊の形をしたすぼまりが姿をみせ男を誘うようにひくついていた。
ふたつの柔らかな膨らみの狭間から、滴る蜜は白いシーツの上にぱたぱたと落ちて染みを作る。
えっろ。媚薬効果ってすげーな。あのおとなしそーな千草ちゃんをこんなド淫乱な身体にしちまうんだからよ。媚薬ばんざーい!
胸の内で下衆な台詞を吐いて、舌をなめずる。
ズボンのチャックを降ろし、そそり勃つ男根を取り出した。
サイドボードに手を伸ばし、備え付けのコンドームの袋を口で切って手早く装着する。

「なぁ。千草のエロい姿みてたら、俺の息子さん、こんなになっちまった。もうガッチガチなんだけど」

悪戯心で鈴口をすぼまりに擦り付けると千草の背中がひくりさざめいた。

「ひ、ぎ、ぎんさぁ。……やぁっ」

微かに震えている。きっとこの男根に貫かれると思っているのだろう。
それはそれで気持ちいいかもしれないが、媚薬に任せて処女喪失など、流石にそれは可愛そうだ。

「千草、大丈夫だから。お前の嫌がるようなことはしねぇから……だから、な。身体の力抜けって。このままだと、辛ぇままだぞ?」

極力、優しい声音で囁いて、頭を撫でてやれば、少し力が抜ける。その隙きを狙って銀時は
千草の太ももの間に男根を挟んだ。

「足、閉じといて」
「ぎっ、や……っ、」
「大丈夫。挿れやしねぇよ。気持ちよくなりてぇならさ、俺の言うとおりにして?」
「ん、」

千草は素直に従った。

「そ。いーこ」

項に唇を落として、千草の桃尻を掴んだまま、腰を動かした。

「あ、あ、あ……!」

脈打つ肉棒は蜜に濡れた襞を擦り、くちゅくちゅと音を立てる。
その度に、千草は腰をくねらせた。
恐らく、無意識に刺激を求めていれのだろう。大腿を伝って落ちる蜜の量が増え、銀時の肉棒を濡らす。

「ぎん、さっ、あ…あっ、あん…っ!」
「はぁっ……すげっ。千草のが擦れてさいこーに気持ちっ…くぁ、」

どうせ、忘れてしまうのだ。
忘れてしまうのなら、いっそ、忘れてしまう前に自分のモノにしたい。
今こうして擦りつけている魔羅を埋めて。
中に吐き出して。
孕ませてやりたい。

一瞬、そんなドス黒い考えが過ぎった。
しかし、頭の片隅にいた理性が警笛を鳴らす。
こんな汚い手を使って手にいれたって、幸せは手に入れられないし、新八や神楽から軽蔑されるだけだと。

「くそ、」

舌打ちし、頭のなかの靄を払うように銀時は腰の動きを早めた。
花弁をめくり、蕾を爪の先で擦る。

「千草、ほらもっと足に力入れて。そんなんじゃあイケねぇよ?」
「ぁ、ああ……ッ!!そ、れ……っ、や……っ!」

部屋に籠る濃厚な密の香りのなか、鈴蘭の匂いが鼻を擽った。
可愛らしい花の形の鈴蘭には毒がある。
自分はきっとこの毒にやられてしまったのではないか。
いつだってこの匂いは銀時を惑わせ、狂わせる。
心地好い酩酊はまるで麻薬のよう。
もっと、もっとこの匂いを嗅ぎたい。
この女を近くで感じていたい。

背後から覆い被さり、シーツを握る千草の手を指を絡めるように握った。それに応えるように、一回り小さな千草が握り返してくる。

「ぎんさ、……これ、たおる、はずして、……かおがみたい、です……っ」

きゅ、と胸が弾んだ。

予想外だった。
殆ど犯されているようなものなのに、こんなにも可愛らしい反応をしてくれるなんて。

なに、このこ……可愛い。

「あ、あ……ぎ、ん…さぁ、」
「なぁ、千草。ちょっとだけ俺の我が儘きいてくれる?」
「あ、あ……っ、な…っ」
「……千草のイキ顔がみたい、」

千草の目を覆っていたタオルを外し、顔を無理やり自分のほうへ向かせた。
涙に濡れた瞳は蕩けきって、恍惚とした顔で銀時を見上げてくる。

また、胸が弾んだ。
同時に臍の下に血が湧いて肉棒を硬く膨張させた。

「やぁ、お、お……きく、なっ……」
「すまたでもわかんだ。えっち。…千草のエロい顔、たまんねぇの。かぁーい……」

耳の裏を舐め、耳朶を食む。
喰っちまいてぇ。誰にも渡したくねぇなぁ。
俺だけのものにしてぇ。


「あ、あ…も、だ、め…い、」
「んっ、いーよ。イっちまって、俺も限界だし……っ」
「ッ……あっ……っ、…!!」
「くっ……ぁ」

きゅっと太腿に締め付けられ、銀時は奥歯を噛み締めながら薄い膜の中にどろどろに濁った白い欲望を吐き出した。
その果てに、幸せなどあるはずもなく。
行きつくあてのない、名前のわからない感情をぶつけるように千草の首筋に噛み付いた。
千草がひ、と短い悲鳴をあげるも構わず、肉を食いちぎらんばかりの強さで歯形を残す。
柔い肌についた歯形と、うっすら滲んだ血を満足げに眺め、舌先で丁寧に愛撫をしたあと、ちぅと吸い付いて紅い花を咲かせた。

ーーこの痕が消えるまでは俺のもんだ……。誰にも触らせやしねぇ。例え、こいつが今日のことを忘れちまっても、俺は忘れねぇよ……。

疲れて気を失った千草の身体をまるで壊れ物を扱うように優しく抱いて、銀時はうっそりと微笑んだ。




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