男女間の友情は成立するか。(土天)



前触れはあった。
惹かれてゆく工程を、自分で気付いても居た。ただ、それを認めなかっただけで。
友情が何を得て、化学変化を起こすのか何て、知る訳がないから、
恋におちるのは、何時だって唐突だ。











彼女を女として意識した事は特になかった。
最初は記事になる事に関して訊き回る厄介な奴だと思っていたが、コンクールを通して、天羽のジャーナリストとしての姿勢を知ったから。
真直ぐな、頑張ってる奴なんだな、と理解を改めた。
未だにゆめを掴み損ねている自分には眩しいとすら思った。
彼奴は未来を見据えた、奴なんだと。
人の秘密を無暗に暴かないとの彼女の言葉にも好感が持てた。
ほんとかよ、何て突っ込んでは置いたが、眼を見れば解る。

天羽の眼は何時も、本気を語っていた。
ああ、嘘が下手なのが良く解る。バカ正直で、何処か不器用で。だけども、憎めない。


数学の点がヤバくて落ち込む天羽をからかったら、今度は昼休みに盛大な仕返しをやられた。
帰りに加地と3人でゲーセンに寄って有り得ない点数弾き出して馬鹿騒ぎして、補導されたりだとか、ハンバーガー奢らされたりするのがひどく楽しかった。それが極、当たり前の日常だった。
彼女との付き合いはきっと、これからも変わらないのだと、
まるでセーフティロックか何かでも掛けられているみたいに、それ以上は進みそうもなかったし、望んでもいなかった、筈だ。
軽口が利ける、話易い存在、それが彼女だった。

友達として、好きだとは思う。それ以上に何があると言うのか。
ふたりの間に、恋におちる要素等有りもしないのに。









「土浦くんってさ、誰か気になる人とか居るの」




また取材の一環か何かだと思って、ひどく面倒臭そうに生返事を返す。
こいつは偶に、迷惑な企画を繰り出すから、油断出来ないのだ。そう思っていたら、顔に出ていたらしい。
天羽が困ったように違うよ、と苦笑した。
癖なのか胸の辺りで手を組んで指先を動かす。




「たださ、加地くんがやたら告白されてるの見るから、土浦くんはどうなのかなってね」




彼女が嘘を吐いているのは、言葉を選んでいる仕草で既に気付いていた。何だってそんな嘘を並べなければならないのか、理解は出来ないが。





「前にも言ったろ、怖がられてるくらいで、そういう色の付いた話は俺にはないって」
「ふーん、そっか。あれから何もないのかぁ」
「……お前は?」
「え、」
「お前こそそういう話、しないだろ、俺らには」





ふざけた言葉にふざけて返してくれる、男友達みたいな関係なのに、こういう所で境界線が引かれる。
どきりと、一瞬顔色が変わった、気がした。悟られまいと手を無駄に上下に降る行為が意味不明。





「や、やだなぁ。残念だけど私にはないよ、そんな良い話!」
「そりゃ、お互い残念だな」
「まあ、私の放課後は土浦くんの奢りでハンバーガー食べに行くくらいだもんね〜」
「待てこらお前。何決めてんだ」
「という訳で、加地くん誘っといてね!」
「あ!おい…!」




はぐらかされた、か。
何で天羽がそんな話を振って来たのか、とか、どうして、途中でらしくもなく得たい筈の答えを放棄するように逃げて行ったのかを知るには、もう少しだけ時間が必要だった。

前フリが発生した時点で、がちりと、歯車は回る。何かが、動き始めていた。





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