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「・・・レディー」

「・・・誰?いつもいつも、なんでそんなに悲しそうなのよ」

「さようならレディー」

「待って!貴方誰なの!?」




「!!」

「あらレディーおはよう、今日は早いわね」


体を勢いよく起こしたレディーにオルガは笑いかけながら挨拶をし、‐魔法薬学‐と書かれた本を机の上に置いた。
外では小鳥がチュンチュンと鳴いていて朝ということを告げている。


毎朝その夢で目が覚める。
ホグワーツに入ってから毎日そうだ。一年生の頃から、馴れることもせず頭を悩ませる。

でも、そんな夢も少し進歩した。
今までは誰が言っているかはわからないままだったが、今日、六年生になって初めて見た夢でようやく人影がハッキリしてきた。


その人は高い背で、右手には杖を。場所は保健室、自分の腕には見慣れないブレスレット。その人は酷く寂しそうで、いつだって泣いてる。



「レディー朝食食べに行きましょうよ」



明るい色のピアスをするオルガは、今だベッドの上にいるレディーに振り向いて言ったが、レディーは手を合わせて申し訳なさそうに手を合わせた。


「悪いわねオルガ、今日はパス」

「なんで?」

「ちょっと保健室に用があるのよ、授業には間に合わせるから」

「わかったわ、じゃあ授業で会いましょ。具合でも悪いの?」

「そういうわけじゃないんだけど、ちょっと調べごとよ」


レディーが微笑むと、オルガはじゃあ後でと言いながら部屋から出て行き、それを確認したレディーはトランクから服を引っ張り出し足早に部屋から出ていった。


‐‐‐‐‐‐


保健室に行くと誰もいなかった。マダム・ポンフリーはいると思っていたのだが朝食に行ったのだろうか?本当に誰もいない。

綺麗な白いベッドが何個も並んで物凄く新鮮な気持ちになれた。


適当に歩いて、夢で見たベッドを探した。探すといっても全てが同じベッドなので探しようがないが、レディーはユックリと感覚を頼りに歩いた。

夢で見たのはこの場所だ。たくさんのベッドが陳列されているのはここしかない。

一周をしようとしたとき、一つのベッドの前で止まった。


「ここだ」


シーツを手で触ると涙が溢れた。なぜかはわからない。ただ涙が頬を伝った。


「あらエジワールじゃありませんか」


マダム・ポンフリーの声がすると、レディーは袖で目をゴシゴシと拭き振り返った。


「どこか怪我でも?」

「いえ、何でもないんです!朝からすみません」

「嘘ねエジワール」

「え・・・?」


マダム・ポンフリーは近づいてレディーの手を握った。優しい顔だ。何人もの生徒の怪我や、心のケアをしてきた人。



「貴女は怪我をしてる、私には治せない怪我ね?」

「・・・」

「それを治せるのは一人だけよね?ドラコ・マルフォイはどうしたの、いつも一緒にいるのに」

「・・・っ」



レディーは手を振り払った。マダム・ポンフリーは驚いてレディーを見たが、涙をこぼしながら走って行ってしまった。



「エジワール!」

「レディー・エジワールには告な事が起きましたな」

「あらダンブルドア校長」

「おはようマダム」


突然現れたダンブルドアに驚きながらもマダム・ポンフリーは挨拶をすると、入り口付近を見つめるダンブルドアに聞いた。



「エジワールはどうしたのでしょう?涙を流して行ってしまったわ」

「レディーは一つの希望なのじゃ。ドラコにとっても、わしらにとっても」

「?」



目を閉じ、まるで人を追悼するような表情のダンブルドアに、わけのわからないポンフリーは、不思議そうに首を傾げるのだった。


‐‐‐


―バンッ!!


寮に戻ったレディーは力いっぱい部屋のドアを閉め、荒い息でドアの前でしゃがみ込み丸まった。



「あ゙ー!もう・・・!!」



近くにあった魔法薬学の本をベッドに投げつけ、ベッドにダイブすれば目の前には時計。8:40と指す時計に睨みをきかせた。


「授業、50分からだったっけ」


枕にうつぶせになると、ため息を吐き捨て渋々用意を始めた。

首には自分で買ったネックレス。ドラコからクリスマスプレゼントで貰ったネックレスに一度手が触れたが、躊躇したので止めてしまった。


「…おかしい……」


箱に入った沢山のブレスレットを見てレディーは不思議に思った。

夢で見たあのブレスレットは見知らぬものだった。誰かに貰ったのだろうか、はたまた自分で買ったのだろうか。
ますます増える疑問に頭を左右に動かすと、教科書片手に部屋を飛び出した。


魔法薬学の教室まで距離がある。急がなきゃ。
あぁでも教室にはドラコがいる。会いたいけど、会いたくない。


「…」


冷静になって考えたら。…もしもドラコが死喰い人になっていたとしたら。ホグワーツは学校に死喰い人を入れてることになる。



(それって、物凄く危険なんじゃないだろうか)
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