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部屋に戻れと言われたがレディーはスリザリンの寮へは帰らなかった。
夜見つかったら罰則だというのにも関わらず、レディーの足が進む先は天文台だ。


思い出の場所である天文台。
空にはどんよりとした重たい雲がかかり、今にも雨が降りそうだった。3年生の時にドラコに初めて見せられた流星群が懐かしく感じられる。



「・・・」



冷たい風が吹くと、つけていたピアスが揺れた。レディーはそれに手を触れると一筋の涙を流したのだ。


自分を飾るものは全て、今はあっても意味がないように感じた。
昔は違った。ほんの3年前は。
オシャレをするのは自分の満足のためだけだった。でも今は違って、ドラコが褒めてくれるのが嬉しくて、ドラコが微笑んでくれるのが嬉しくて。でも今じゃそれがないのが余りにも苦しくて悲しくて。


「切ないよ、ドラコ・・・」


私は手摺りにおでこをこすりつけ大粒の涙をこぼしてしまった。
学校の外でディメンターが数多く張っていて、気味が悪い。まるでアズカバンのようだ。



「毎日、昼も夜もこの瞬間でさえ、闇の力はこの城に入りこもうとしておる。
敵は諸君を利用しようと狙っておる。心してもらいたい」




「利用…か…」

「先生に怒られるわよレディー」

「オルガ・・・!?」


ヤッホーと言いながら天文台へと足を踏み入れたオルガは近くの椅子に座った。


「どうしてここが?」

「なんとなくよ」

「・・・」

「帰ろ、レディー」

「もうちょっとここにいるわ」

「・・・ねぇレディー、やっぱりマルフォイはレディーを守るために別れたんじゃないかしら」


沈黙のあと目を伏せて言いだしたオルガにレディーは眉を寄せた。


「マルフォイの父親は死喰い人で、その息子のマルフォイだって死喰い人になる可能性だって充分にあるじゃない」

「あはは…。オルガ、もし貴女が例のあの人だったら、ドラコを死喰い人にするかしら?私だったらもうちょっと役に立つ人にするわ」

「でも可能性を考えて、ゼロじゃないもの」

「・・・・」

「逃げないで受け止めてレディー・・・。マルフォイの闇を受け止めるのはレディーにしかできないのよ」

「・・・そうね、あの馬鹿を受け止められるのなんて私ぐらいだわ」



真剣な表情のオルガに、レディーは目を逸らし、体の向きを変えて空を見上げた。

厚くかかる雲。だがその先にあるのはドラコと見た何万光の光りが輝いている星だ。
そう思うと自然と頬が緩んだ。



「もし、ドラコが死喰い人になってて、私と別れた理由が私のことを守るためだったら」

「だったら…」

「私はたぶんドラコのこと、もっと好きになるわ」

「・・・レディー」


複雑そうに顔をしかめるオルガにレディーは「行こう」と言って手を差し出した。

ディメンターばかり見ていたら幸せが消えてしまうもの。






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