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「誰かいるのか!?話しをしていただろう!!?」


ダンブルドアに杖を向けたドラコは言い放った。場所は天文台。思い出のある場所だからこそ、なおさら感情が高まってしまう。


「独り言じゃ・・・。時には独り言もいいものじゃよ。キミは思案してみたかね?」

「・・・・」

「ドラコ、キミには人は殺せぬ」



澄まして言うダンブルドアが気に入らなかったのか、ドラコはますます感情が高ぶった。



「僕がしてきたことを何も知らないくせに!」

「ケイティベルを使ってネックレスを届けようとしたことか?蜂蜜酒を毒とすり替えたことか?失礼じゃがどれも生半可だったので本気ではないと思ったのじゃ」

「・・・僕は選ばれた!あの方に!!」



ドラコは自身の袖を捲り闇の印をダンブルドアに見せた。薄い暗闇にドラコの腕の闇の印がやけに栄えて見える。

そのとたん下から聞こえた物音にダンブルドアは耳を傾けた。


「お仲間がいるようじゃの、どうやって?」

「姿をくらますキャビネット棚だ!!ボージンアンドバークスとここを繋いでいる!」」

「よく考えたのぉ」

「・・・・」

「ドラコ、その昔、ある生徒が道を誤り、悪の道を走った。ワシはキミを助けたい」

「助けなんていらない!!」

「ドラコ・・・レディーはどうしたのじゃ。彼女をおいていけるのかのぉ?」


レディーの名前を出した途端にドラコは杖を下げた。瞳には涙が貯まっている。天文台の床に、雫が垂れる。
肩が震えたドラコを見たダンブルドアは悲しみと憤りが困惑したような表情を見せた。


「レディーのなかにもう僕はいない・・・」

「・・・どういうことじゃ」

「忘却術を使った。僕の記憶は全て消してきた。たった一人しかいないのに…愛していたのに…僕は忘却術を使ってしまった。レディーの記憶から僕は消えてしまった。もうあの頃へは戻ることができないんだ!!あの頃へ…」

「ドラコ・・・」

「好きで、離れたくないのに、僕の力だけじゃ守りきれないから…こうするしかなかった。僕と過ごした全ての記憶を消せば、僕を追い掛けることもない」

「・・・Ms.レディーは、キミにとっての光じゃった。その光なら、ワシが守ってやれる。ドラコも、キミの家族ごとじゃ」

「黙れ!わからないのか!?あなたを殺さないと・・・僕が殺される」



ドラコは再び杖をあげた。杖の先は奮え、人を殺すことをためらっている。
ドラコは変わっていた。この6年間で。ある女性の存在によって。レディーだ。レディーはドラコに、彼が知らないうちに、人を慈しむ心を培わせていた。それが闇の一族の多い家系の中で育ったドラコの中に残った善だったのだ。


「ドラコ・・・キミは優しくなった、レディーと接しているうちにのぉ。だから今ワシを殺すことを躊躇っておるのじゃ」

「レディーの名を出すな!!」


そう言った瞬間、ベラトリックスの恐ろしい声が響いた。階段を上がり、たいそう喜んだ顔をしている。



「よくやったドラコ」

「・・・」



それからの僕の記憶はとても曖昧だった。僕は結局ダンブルドアを殺すことができなくて、代わりにスネイプが留めを刺した。

信じたくなかった。
この場所はレディーとたくさん思い出を作った場所なのに、今ここで人殺しが起こってしまった。泣きたい衝動に刈られたけど、ベラトリックスに腕を捕まれ天文台を後にした。これで本当に最後。レディーをもう一度だけでいいから抱きしめたかった。


森の中を駆けぬけ、ホグワーツで過ごしたこと全てが鮮明に思い出された。
一年生で出会い、喧嘩を通して恋だと気づき。三年生で付き合い、四年生で抱いた。五年生で大喧嘩し、互いの絆を確かめた。そして今だ、僕は彼女から僕を消した。

僕はレディーがクリスマスプレゼントにくれたロケットペンダントを見た。中の写真は、四年生の時にランドールが撮ったレディーのウェディング姿のもの。
この写真があれば、大丈夫。そう自分に言い聞かせて走る。



「ドラコ!!何をしている!行くよ!」



ベラトリックスの高い声が森に響いた。ハグリットの小屋は赤く燃え上がっている。そしてホグワーツにさよならと小さな声で呟いて、完全に姿を消した。

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