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もうそろそろ夜の消灯時間になる。生徒たちは談話室から部屋へと移動し、体を休めるために眠りの準備をし始める頃だ。
ルームメイトたちの夜のお喋りの時間は楽しい。みんな話があって夢中になってしまう。でも今日は、今日だけはそんな話に混じることができずにいた。


「レディーってば今日やけに静か」

「どうしたの?さっきから窓の外ばかり気にして」



ルームメイトの子達が窓に虫でもいる?と言って窓を覗いた。オルガは察しているようで黙っている。
残念だけど虫じゃない。今日は流星群の日。


「ちょっと出てくる」


そう言うと「今から!?」とルームメイトが声を上げた。適当にローブを羽織って部屋の扉に手をかける。


「くれぐれも、先生達には見つからないようにねレディー」


オルガはそれ以上は何も言わなかった。放って置いてくれる親友の優しさに微笑みながら私は部屋を出た。

流星群まであと少し。


---


天文台までの道のりを、先生たちに見つからないように移動した。途中フィルチを見かけたが何とか見つからずに済んだ。あいつ鈍感ね、なんて思いながらもコソコソと移動する。

天文台までなんでもない距離なのに、異様に遠く感じる。

暫くして、無事に天文台に着けば、疲れたのか体の力が急に抜けてしまった。



「つ、疲れた」



膝をついて下を向いていた顔を上げると、視界一面に広がる星に目を奪われた。
目の前の漆黒空には、たくさんの星が光っては落ちていく、フェンスまで体を近づけて星を見つめ、自然と出てきた歌を歌った。

エジワールの家にいた時よく聞いていた曲だ。親が相手をしてくれない時は、いつも屋敷しもべのカロンと遊ぶか、テレビを見てやり過ごしていたっけ。



「私たちの関係って、今は最悪。前は仲良かったのに…」



堪えきれなく溢れた涙は、頬を伝い落ちていく。本来ならば隣にいるはずのドラコは今いない。

彼とはまだ仲直りは出来ない。

アンブリッジが居なくなるまではハリーと交流する必要があるし、仲直りがいつになるかわかりもしない。

自分ではオルガに「時間が解決する」と示唆したことを言ったが、本当は不安で仕方ないのだ。頬を叩いた私のことを彼は許してくれるだろうか、ムキになったことが今になって後悔として現れる。


でも本当は、今すぐにでも会って、訳を説明して、許しあって、抱きしめてほしい。


フェンスに顔を伏せていると、後ろから声がした。よく知っている声だ。
こんな夜に、会いたい人物ではなかった。




「よう、意地っ張り」




振り向いた視界にうつる暗い階段から姿を現したのはランドールだったのだ。


---


ため息をついて「仕方のないやつ」と言いながらレディーの元へと足を進めた。


「おー!星綺麗だな!!」

「な、何しに来たのよ」


レディーは涙を含んだ目を擦る。ランドールはフェンスに腕を預けて星を見た。



「レディーを口説きにきたのさ」

「…愛の妙薬なら勘弁よ」

「ははっ、冗談だよ」



ドラコと同じようなこと言いやがる。と、ランドールは思ったが口には出さないことにした。
容姿のいいランドールは艶やかに笑った。そんなランドールにレディーは微笑しながら星を見つめる。



「…あんたらしいわ」



ランドールは体の向きを替えずに、目だけレディーに向ける。



「お前たちの関係、最悪だとは思わないよ」

「…ランドール歌聞いてたのね」

「ああ、俺も好きな曲だ」

「よく家で聞いていた曲よ。ドラコも、この曲好きだった。悲しい曲だけどね」

「レディーはドラコをどう思う?」

「そうね…自信家で、威張ってばっかりで、気が強くて、でも本当は情けない。ドラコと一緒にいると楽しくて、優しい気持ちになれるわ」



星がまた一つ落ちた。レディーの表情は、酷く切なげで星と一緒に消えてしまいそうだ。
綺麗な横顔だとランドールは思った。でも彼女は別の男のものだ。自分のものじゃない。
それも、最近気兼ねなく話が出来るドラコのものだ。



「ハハッ大好きな証拠だ」

「そうね、大好きよ。素直な彼はね。でも今はそうじゃない」

「じゃあ、別れたいと思うか?」

「…馬鹿ね。思うわけないじゃない。ただ、ちょっと距離が空いただけ。今会えるなら、仲直りがしたい…」

「そっか。きっとドラコも同じこと考えてるはずだ」



な、ドラコ?と、ランドールが微笑んだ。そして体の向きを変え後ろを振り向く。
つられるように振り向くと、そこには会いたいようで会いたくなかった人物がいて、悲しそうな顔をしながらこう言った。



「すまないレディー」



ランドールに次いで来たのはドラコだった。彼はそう言った後に、私に近づいて、そっと冬の夜に冷えた体を優しく抱きしめたのだ。




(どうしてここにいるの?)

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