必要の部屋へと足を踏み入れると、軍団のメンバーが二人を見つめた。よくここがわかったね!と言いながら拍手で迎えられる。
そんな二人にハーマイオニーが話しかけた。
「貴女たちが最後よ。来れてよかった。最初は失神の呪文からなの」
見るとハリーの周りで呪文を教わろうと群がる生徒がいた。ハリーはレディーを見つけ手招きをしている。
ハリーはドラコとレディーが喧嘩していることを知らないらしい。別け隔てなく接してくる。
「レディー、ちょっとこっちにきてくれるかな?」
「ええ、構わないわ」
「失神の呪文出来るんだよね、手本を見せてくれるかな。僕に向かって撃ってくれればいいから」
「ええ、わかったわ。倒れない程度の強さにする」
レディーが杖を出すと、そこにいた生徒は皆集中して見つめた。レディーら一呼吸置いて杖を構え、少し離れたハリーに向かって呪文を唱えた。
「ステューピファイ!」
呪文を受けたハリーは失神はしなかったものの、まるで背面跳びをするように弧を描いて倒れこんだ。生徒は口を開けて拍手をした。チョウ・チャンが心配そうな顔をしてハリーを見ると、「いてて」と言いながらもハリーが体を起こした。
「い、今のが失神の呪文。レディーはわざと弱く撃ったけど、本当の強さなら相手を失神させる力を持つんだ」
「言葉はステューピファイ。もしもの時にとっても使える呪文よ、習得しておいた方がいいわ」
レディーもハリーに続けてそう言うと、心配そうにルーナが手を挙げた。
「難しい?私にも出来るかな?」
そんな彼女にレディーは微笑んで応えた。
「難しいけど必ず出来るわ。自分を信じていれば必ずね」
ニコリと笑ったレディーに、皆は嬉しそうに微笑んだ。
レディーのことを誤解していた生徒は多かったのだ。彼女はあのスリザリンの生徒だったし、校則違反の常連だから。
流石にディーンとシェーマスから恐怖心は拭えていないが、だいたいの生徒はレディーを信頼しようと心に決めたようだ。
ハリーとレディーも顔を見合わせると笑い合った。
「闇の力に負けないように頑張ろう」
「…そうね」
自分は別にアンブリッジに盾突きたいだけであって、闇の力を破りたいわけではないレディーは、何とも言えない気分になった。
ただ、呪文を覚えようと真剣な表情をする親友の姿を見たら、最後までやらなければと、そう感じた。
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ドラコとレディーが喧嘩をしたことが嘘のように今日は静かだ。スリザリンらしい威厳に満ちた談話室は、多くの生徒が談話を楽しんでいる。
そんな夜の7時、スリザリンの談話室を歩いていると、隣を通った二人の女子生徒の声がレディーの耳へと入ってきた。
「今日の夜、9時頃から流星群みたいよ!」
「へぇ!でもその時間は魔法薬の勉強しなきゃね、卒業まで時間もないし」
流星群の日は今日だったのか、ドラコと行く約束をしたが、仲直りをしていない今は一緒に行くことは不可能だ。またあの綺麗な星を彼と見たかったのに…
「一緒には行けないけど…一人なら…」
レディーがそう呟くと、オルガが息を切らせて談話室へ飛び込んできた。
まだ呼吸が落ち着かないようで肩で息をしている。
「どうしたのよオルガそんなに急いで」
「レディー!マルフォイが尋問官親衛隊に入ったって!!」
「ドラコが?」
「…ハァハァ……そう…」
「へぇ、ドラコは変わり者ね」
「何言ってるの!?レディーの好きな人がレディーの嫌いな人の仲間になっちゃったのよ!!?」
「シッ」
レディーがオルガの唇に指を添えた。静かにしてと、微笑みながら。
そしてオルガの耳元でゆっくりと語りかけるように話を始めた。
「今は、彼の名を言わないで…」
今日は流星群だからね。と、顔を離したレディーの顔は、なんだか消えそうで、寂しそうだった。
そんな二人の姿を、ランドールは遠くから見つめ。何か思い立ったようにその場から立ち去った。
(本当はあなたと星を見たかったな)
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