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「ドラコ離して」


そう言うとドラコはゆっくりと体を離した。わけがわからないが、一つだけ確かなことは、彼は今私に謝ってくれたことだ。
ランドールは得意げに笑いながらウィンクをした。


「な、ドラコ。いるって言ったろ」

「お前に言われなくても来るつもりだったさ」

「おいおい、本心聞けたんだから感謝してくれよな」


ランドールは腰に手を当てわざとらしくため息を吐いた。
そんな彼等にレディーは眉を寄せる。


「ランドールこれは一体どういうことなの…?」


レディーがランドールへと詰め寄った。彼は怖い怖いと言いながら後ろにどんどん下がっていく。もうフェンス沿いだ。これ以上下がったら天文台から落ちる。



「怒るなよレディー、それが…」


---

30分前のことだ。生徒たちは時計を見ながら自室へと帰っていく中、ドラコはまだ談話室でひとり本を読みふけていた。
そんなドラコの姿を見たランドールは彼の背中へと抱きついたのだ。

ドラコはそれをたいそう気持ち悪く思い顔を思い切り叩いた。



「いて!!」

「なんの用だランドール。この間からやけに絡んでくるな」

「なぁドラコ、今日流星群なんだろ?一緒に見に行こうぜ」

「なんでお前なんかと」



ドラコは呆れてため息をついて腕を組んだ。そんなドラコにランドールは人差し指を顔の前へ差して動かした。


「約束してたんだろ?レディーとさ」

「…お前がなぜ流星群のことを知ってる…」

「さっき女子生徒が話してるの聞いたから」

「ハァ…」

「なぁ行くだろドラコ!レディーの代わりに俺と!」

「誰がお前なんかと行くか」



ドラコはこれ以上話をしてられるかとまた本を見始めた。ランドールはそんな彼の耳元に近づき、話は変わるが…と小声で話し始めた。


「レディーには謝る気になったか?」


ドラコはまた本を閉じた。後ろにいるランドールへと目をやり彼を見つめた後、また前に向き直ってゆっくりと縦に頷いた。

ランドールはニカリと歯を出して笑い、じゃあ行くのは決定だ!とドラコの腕を掴み立たせた。


「なんでお前と行くんだ!」

「ちょっと作戦があるんだよ!」



---


「ってわけ」

「それでその作戦って?」

「嘘さ!作戦なんてない。今日は流星群だって女子生徒が言ってるのを聞いただけ。レディーはドラコとの思い出の、流星群のよく見える天文台になら行くかなって思って。勘でここにドラコを連れてきただけ」

「「…」」

「そしたら見事にレディーがいてくれたってわけよ!お前ってつくづく意地っ張りな、まぁドラコもそうだけど」



レディーと話しをしていたランドールは、ドラコへと顔を向けた。ドラコは鼻で笑っている。



「黙れランドール、さっきからペラペラと……レディー?」



俯くレディーの足元には涙がこぼれた後があった。ドラコはゆっくりとレディーに近づき、ランドールは「お邪魔は退散するよ」と言って階段へと姿を消した。


二人だけになった天文台で泣き続けるレディーに、ドラコはまた抱きしめ背中をさすった。


冷たい身体だ。レディーはいつもこうだ。でも、それは誰のせい?
そんな思いが頭の中を回る。



「すまなかったレディー」

「…馬鹿」

「ああ」

「意地悪」

「知ってる」

「嫉妬深いよ」

「それも知ってる」

「叩いてごめんなさい」

「あれは僕がわるかったんだ」

「……好きなの」

「…僕もだ」



そう言うと二人は自然と顔を見合わせてキスをした。星がまた光って落ちていく。



「レディー、僕の今回の勝手を許してくれるか?」

「ええ許すわ…でも、もう選ばれし者がよかったとか…、言わないで…」

「あぁ、絶対に言わない。自分の言ったことがどれだけ愚かだったかわかった」



涙をいくら流しても止まらないのはドラコを愛している証拠なのだろうかレディーの頬を伝う涙は止まることを知らなかった。



「僕はレディーが好きだ…これからもずっと。だから他の女にブレることはない」

「私だってそうよ。不安に思わないで、ドラコ以外には興味ないんだから」


レディーをドラコは思い切り抱きしめ、頬を押さえて再びキスを何度も落とした。


「レディー傷つけてごめん。愛してるよ、この世の誰よりも」



二人の間には静かな時間が流れた。暫く星に目を向けていたレディーは口を開く。


「仲直りね!」

「そうだな」



二人はクスクスと笑い始めた。もう心に蟠りはない。喧嘩をするたびに強い絆で結ばれていっていると感じることができる。



「ねぇドラコ。来年も、再来年も、一緒に星を見れるかしら?」



ドラコはレディーの背中に腕を回すと、おでこにキスを落としながら「絶対に」と言って微笑んだ。
そんな会話をする二人は、寄り添って流れ星が朽ちるまでそこにいた。

素直な気持ちをぶつけ合った二人の見た星は、二年前よりもずっと綺麗に光っていたようだ。



(ずっとずっとこのままでいられたら)

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