授業が休みの日、図書室へ行こうと私服姿で廊下をオルガと歩いていると、小さな人だかりが出来ていた。
「何かしら?」
興味津々に近寄ると、中心にはウィーズリーの双子が小規模なお店を開いて販売をしていた。周囲の生徒は珍しい商品に目を輝かせながら見ている。
「出たわよあの双子。フレディーとジョージアだったっけ?」
「フレッドとジョージよレディー」
「で?何してるの?」
「去年、ダイアゴン横丁にウィーズリー・ウィザード・ウィーズってお店ができたのよ、そこを経営するウィーズリー兄弟の双子のフレッドとジョージが、学校に商品を売りに来ているの。もちろん授業も受けてるけど」
「へぇ知らなかった。見て行こうか」
「そうね、暇つぶしにはなるかも」
近くに寄って商品を見ると、双子はレディーとオルガに気がつき、嬉しそうに声を張り上げた。
「やあ!君たち!」
「久々に見たよ!」
「一体何を」
「お求めですか?」
素晴らしい掛け合いにレディーは感心して拍手をした。双子の会話は全部こうなるのだろうか?今度パーバティたちにやってもらおう。
「何が売っているの?」
商品を見ながらレディーが尋ねると、フレッドはその商品を持って言った。
「ずる休みスナックボックスさ。ゲーゲー・トローチに鼻血ヌルヌル・ヌガー、気絶キャンディに発熱ヌガー」
「す、凄い名前ね」
頬をヒクつかせてそう言うと、次にジョージが僕の番だ!と言いながら前に躍り出て説明した。
「半分を食べると気絶・鼻血・発熱・嘔吐の症状が現れるが、もう半分を食べると回復するようになっていて、これを使うと授業を抜け出すことが可能になるんだ」
「アンブリッジの授業を抜けるためね、いいもの作ってるじゃないの」
レディーは商品を吟味した。アンブリッジにこれをつかってやりたいくらいだ。もちろん半分は自分のポケットに入れておいて。一生そのままでいて欲しい。
「っていうか」
「キミたち」
「やっぱり」
「「スリザリンには見えない」」
ハモって言う二人に、レディーは複雑な気持ちを持った。苦笑いをしながら商品を元の場所へと戻す。
「でもスリザリンよ。行きましょうオルガ」
二人が去っていこうとすると、フレッドとジョージは慌てながらレディーの手首を掴み足を止めた。
「まってまって!ごめんよ!」
「ごめんごめん!気に障ったなら謝る!」
「ほら、この魔法返しブレスレットとかどう?」
「あー双子さんたち、別に気になんて触ってないわ。結構よ」
レディーが振り向き際に手を振った。周りの生徒も二人の様子を見つめながら手の中で商品を転がしている。
「ねぇ!」
「せめて」
「「名前を教えてよ!」」
レディーとオルガは振り返り、ニコリと笑ってスカートを横に広げた。
「オルガ・スターシップよ」
「「隣の君は!?」」
「レディー・ランペル。元はエジワールよ。じゃあね双子さん」
レディーとオルガ!とフレッドとジョージは声を上げて2人に手を振った。
(あの子達とは)
(仲良くなれそう!)
---
今日の昼食はドラコと摂っていた。いつものようにくだらない会話に花を咲かせながら、口にパンを放り込んでいると、広間前の廊下から激しい口論が聞こえた。
「何かしら?」
何事かと思い、ドラコと共に廊下に出ると、そこには階段で言い争うアンブリッジとマクゴナガルの姿があった。
あのマクゴナガル先生が声を上げて怒ってるってことは、あのピンクの豚さん相当なことしたのね。そうレディーが思った時だ。
「私の生徒に罰則を与えるのでしたら、所定のやり方をしてもらいたいと申しているのです」
「あら、愚かにも私、私の権限に口を出したように聞こえましたけれど。ミネルバ」
アンブリッジは階段を一段上がり、マクゴナガルを見下した。
罰則?一体どんな?
「とんでもないドローレス、問題は残酷なやり方です」
マクゴナガルも負けじと階段を上る。
アンブリッジの顔は引き攣ったままだ。
「あら、お言葉ですが、私のやり方に異義を称えるのは、魔法学省率いては大臣その人に異義を称えるのと一緒です。寛容な私にもただ一つ我慢ならないところがありますわ。忠誠心の無さです!」
「忠誠心の無さ…」
マクゴナガルはそういうと、後退りをして階段を一段下った。
レディーは、普通の人なら足がすくむほど怖く睨んだ。レディーはマクゴナガル先生が好きだ。どの寮にも平等で優しく、賢く、強く、正しい。女性の尊敬すべき人物はまさにマクゴナガル先生のような人だと思っていた。
そんな先生の言葉を受け入れようとせず、大臣大臣とばかり言うアンブリッジに、レディーは酷く腹を立てている。
アンブリッジはまた階段を上り、廊下にいる生徒を見下して強く言った。
「ホグワーツの状況は予想以上に酷いものです。コーネリウスが速やかに対処するでしょう」
レディーの蛇のような目は、いつまでもアンブリッジを睨んでいた。それに気づいたドラコはレディーの手を引き、彼女が落ち着くようにと寮の談話室へと足を運んでいった。
‐‐‐‐
それから何日かした後の昼休み、レディーはドラコと一緒に中庭に座って本を読んでいた。天気も良く、穏やかな空気が二人を包んでいる。
「この本面白くないぞ」
「そうかしら?主人公がちょっと強引でいいじゃない」
本を見ていた目をドラコに向けると、予想以上に顔が近かったことに気づいた。
自然とキスを交わそうとすると、二人の間に風のようなものが割って入って二人を離し、ベンチの端と端に飛ばされた。
「「・・・!?」」
目の前には杖を持って、大層気分よさ気に立っているアンブリッジの姿がある。「はっ」と笑うと、歩いて校舎内へと姿を消した。
ドラコはア然しながらアンブリッジの帰った方向を見ると、隣からの突然の破壊音に肩を跳ねさせた。
レディーは、近くに置いてあったブロンズ像を渾身の力で破壊していた。
パラパラとこぼれ落ちる残骸を前にレディーの理性の糸はついに切れたようだ。
「レディー……?」
冷や汗をかきながらドラコはレディーに慎重に尋ねた。今殺されるかもしれないと恐怖を感じながら肩に触れようとすると、レディーは残骸をバリンとローファーで踏み潰し、拳を固めて言った。
「あのくそ女…絶対叩きのめしてやるわ!!!
ドラコ!スリザリン寮に戻りましょう、こんなところじゃ落ち着いて話しもできないわ!」
「は、はいっ」
レディーの威圧感にやられたドラコは、軟弱な返事をし、すぐに立ち上がった。今の彼女に反抗したら間違いなく首を揺さぶられると感じ、それはもう大人しく従ったようだ。
(許さないから!ねぇドラコ!?)
(ゆ、許せないな)
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