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「前にクディッチワールドカップで見た時に気付いたんだ、レディーとマルフォイ家の息子が付き合ってるって。君たちとってもお似合いだと思ったよ」


人差し指と人差し指を合わせて指同士でキスをさせる仕草をして見せたルーファスに、レディーはなんだか嬉しくなって微笑んだ。


「それなのにまさかその娘と結婚するなんてね、思ってなかった。だってキミに恋人がいるのに結婚だよ?笑えないか?好きな男がいるのに」

「ほんと、他人からすれば笑い話でしょうね。私は笑えなかったけど」

「僕はその恋人に呪われる人生にしたくないんでね」


結婚なんてしたら今にマルフォイが押しかけてきそうだ。と笑い飛ばして言った。レディーはルーファスに心を開いてきた様子で「彼、臆病なところがあるから押しかけはきっと出来ないわ」と微笑んだ。


「面白いわ。私貴方の名前を知っていたんです。どこで知ったか覚えてないけど、名前を聞いた時に懐かしい感じがしたの」

「そりゃレディー、僕らは昔に会っているからね」

「はい?」



ルーファスはテーブルに置かれている紅茶に手を伸ばした。目の前にいるレディーはどういうことかと顎に手を当て、頭をひねらせている。



「覚えてないのも無理はない。あれは三年前、ホグワーツの入学前のことだ」

「入学前?」


ルーファスは思い返しながら三年前の話を始めた。


---


その日のダイアゴン横丁は入学式前の準備をする客で非常に賑わっていた。皆肩をぶつけないように人を避けながら歩いている。

レディーもそんな人ごみの中にいて、妹のアロマがローブの新調をしている間、杖を買ってくるよう母親に言われ、オリバンダーの店を訪れていた。

レディーはどうしようかと思い店内の杖を見ていると、一人の男が声をかけた。


「やぁお嬢さん。杖はもう決まっているのかい?」

「あー、オリバンダーさん?」

「残念だけど、オリバンダーはあそこにいる爺さん」


ルーファスは接客をしているオリバンダーを指差し笑った。レディーは誰だこの人といった表情をして首を傾げている。



「僕はルーファス・ランペル。お嬢さん名前は?」

「レディー。レディー・エジワールです」

「そうかレディー、杖はまだみたいだね、爺さんを呼ぼう」


ルーファスは大声でオリバンダーを呼ぶと、オリバンダーは接客を終えた後で両腕に杖をたくさん抱えて歩み寄ってきた。


「やぁルーファス君じゃないか久しぶり。そちらは妹さんかね?」

「残念だけど妹じゃないんだ。まぁいい、爺さんこの子の杖を見てやってよ」



ルーファスはオリバンダーの耳元で「とびきりいいやつを」と囁いた。オリバンダーはわかったよと笑い店の奥に杖を取りに行った。


2分程でやってきたオリバンダーは三本の杖を持っていた。

まず一つ目を渡されたが、特に何も起きずオリバンダーは首を傾げてその杖を取り上げた。

二つ目の杖は呪文が何も通じず、これもダメだと取り上げられた。

三つ目の杖を渡される前、オリバンダーは眉間にシワを寄せてレディーに渡してきた。何だろうと思いつつも杖を握りしめると、杖が風を起こすように光を放った。

ルーファスはヒューと口笛を吹いて口角を上げ、オリバンダーはレディーに語りかけた。


「愛と救世主」

「愛と…救世主?」

「この杖はあなたにそう伝えている。あなたは、ハリーポッターのような偉大なことをするわけではないが、きっと誰かの救世主となる。そして、愛も教えてくれるだろう。ワシにはわかる」



レディーは小声で愛も…と呟き、ルーファスを仰ぎ見た。

彼は笑顔で「杖が見つかって良かったな」と笑うだけだった。


---


「あなたあの時の!そうか、だから貴方の名前に聞き覚えがあったのね…」

「思い出したか?」


レディーは納得した。クディッチワールドカップの時、何故ルーファス・ランペルと言う名を知っていたのかを。


「僕は興味を持った人にすぐに声をかけてしまってね、君に興味を持ったのは他でもない、魔力が強いと思ったからさ」

「私が?そんなことないですよ、別に呪文も大したもの使えないし…」

「潜在能力ってやつさ。レディー、キミはあの母親を超えるよ。わかるんだ」


ルーファスは勢いよく立ち上がり窓を開け、部屋に風を入れた。カーテンが舞い上がり揺れている。
カロンは部屋の中で舞った紙を拾い集め始めた。



「さぁレディー!今日から練習だ!」

「は?えっと…なんの?」

「何言ってるんだ魔法のだよ。24日にダンスパーティがあるんだろ?トライ・ウィザード・トーナメントのしきたりなんて知ってるよ。そしてレディーはその日にマルフォイとダンスをするために戻りたいはずだ」


まるで名探偵と言わんばかりにレディーが思い悩むことを当てていく。しかしなぜ魔法の練習をするかが不思議でしょうがなかった。


「待って、どういうことなんです?魔法の練習?そんなことをしなくてもルーファスさんが婚約を断ってくれれば丸く収まると…」

「よーーく考えろ、レディーの母親の目的は君をエジワールの名から外すことだ。つまり僕が婚約を断ったところで君がホグワーツへ帰される事実は無くならない」



レディーはなるほどと納得したように頷いた。この人はふざけているようでちゃんと考えているとわかり黙って話を聞き続けた。


「今日は15日、24日の夜までにホグワーツへ戻ることも考えての計画でいく。24日、結婚式の途中で式場をぶっ壊してレディーをホグワーツへ逃がそうと思う」

「式場を…」

「ある程度力をつければレディーはサリアに怯えることもなくなるだろ?何かあっても対処できるし。そのために、24日までの9日間で魔法をきちんと練習するんだ」



ルーファスがレディーに近づいた。ソファに座っていたレディーも立ち上がり、ルーファスを真剣に見つめる。



「普通に考えれば、僕は当日レディーを逃がすことが出来るだろう。だけどそれじゃ意味ないんだ。レディーが母親に怯えている以上同じことがまた起きる。そうならないように僕がキミに魔法を教えよう」

「それを学べば…私はもう怯えずに済みますか?」

「あぁ才能があるんだ。9日もあればかなり上達するよ」



ルーファスが安心させるように肩に手を置いた。レディーはうつむき9日という短い期間に焦りを感じている。
そんな様子を見て安心させるように話しかける。


「合言葉を忘れるなレディー」

「ドラコと約束をしたんです。一緒に踊ろうって。だから絶対に戻りたい、ホグワーツに!」

「うん。その気持ちがあればきっと大丈夫さ」

「でも、私を逃した後ルーファスさんはどうなるんです?」


母に酷い目にあうんじゃと、声がだんだん小さくなっていく。


「僕は大丈夫、これでも家じゃ一番強いんだ。喧嘩をかけられて負けるような男じゃないよ」



ルーファスが腕を曲げて余裕余裕と笑うと、レディーは再び泣き出しその場に崩れてしまった。
ルーファスはぎょっとしてレディーを心配する。


「ちょっと、どうしたんだよ」

「ありがとう…ありがとう、本当にありがとう」



泣きながらお礼を言い続けるレディーに、ルーファスは笑いながら頭を撫でていた。




残り9日間で僕はレディーを強い魔法使いに育ててみせる。
この子の魔力は、例のあの人に近いものがあるんだから。


(その理由は全くわからないけどね!)

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