×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


突然だが私は迷っている。

なんてことはない、おばあちゃんにいつものように怒鳴り声で起こされたのだが、今日はわけが違った。入学式なのだ。ホグワーツ魔法魔術学校の。私のおばあちゃんはそこで先生をしていて、しかも寮監で、すごく偉いらしい。すなわちそんなおばあちゃんの孫が入学式に遅刻など「けしからん」とのことなのだ。
そんなわけで必死になって準備をして家を飛び出たわけだが、道が書かれた地図を途中で落としたらしい。


おばあちゃんから、困ったときは人に聞くのよと、耳にタコができるほど聞かされていたからその辺にいたマグルに「9と4分の3番線はどこですか?」と尋ねたら、首を傾げながら


「全くこれで二人目だよ訳の分からない駅名を聞いてくるのは」


と言われなんの解決もないまま置き去りにされた。困ったときに人は助けてくれないし、誰だその訳の分からない駅名を聞いた奴は。と、思わず駅員の後ろ姿を睨みつけた。

さていよいよ困った。このままではホグワーツ魔法魔術学校入学どころか、魔法の世界への入り口も見つからないまま駅で一年待ちぼうけになってしまう。小言のうるさいおばあちゃんが何というだろうか。


「キャリーは重たいしフクロウはバサバサうるさいしどうしようって言うのよ」


ちょっと静かにしなさいよ。と、言ってもわからないであろうフクロウを叱りつける。前から気になっていたがこのフクロウの表情は一体なんだ。なぜ首を傾げるんだ。フクロウを凝視している自分の首まで曲がってしまっている。


「あんた首痛くないの?」


アリアのフクロウはホーと適当に相槌を打って毛づくろいを始めた。一発小突いてやろうかと思ったが可哀想だからやめた。なんだかんだ私にも善の心がある。自分で自分に感心していると後ろからドン!と音が聞こえた。背中に誰かぶつかったのだ。狭い駅構内だからぶつかるのもわかるが、誰だぶつかったのは。顔くらい見ておかないと。そう思いアリアは勢いよく顔を向けた。


「いてぇぇ」

「何よあんた。私の方が痛かったわ」

「すみません、急いでて」


あれ?と思った。目の前にいる男の子は自分と同じようなスーツケースを持っているのだ。それもフクロウも連れている。


「あなたホグワーツに行くの?」

「え!じゃあ君も!?早く行かないと汽車が行っちゃうぜ!」


早く行くぞ!と、男の子はアリアの手を取って勢いよく走り出した。だから人にぶつかるんだと言いたかったがまぁ良しとしよう。ところでこいつの名前はなんだ。背は小さめ、顔はそこまでイケメンとは言えない。


「ねぇあなた名前は?」

「シェーマス・フィネガン!君は!?」

「アリア・マクゴナガル」

「そっか!まぁいいよ早く行こう」


そう言ってアリアたちはホグワーツ行きの列車に向かって足を急がせた。


(駅では走らないように)


---


「ま、間に合った〜」


ヒーヒー言いながらシェーマスは席に座った。そしてようやく目の前にいるアリアをしっかり見たのだ。シェーマスは目を見開いた。思っていたよりもずっと美人な女の子がいたからだ。


「うわ、君美女だったんだね」

「ありがとうもっと言っていいよ」


アハハと笑うアリアはトランクを荷物置きに置いた。その瞬間汽車が動き、アリアはバランスを崩した。拍子に、狭い通路で誰かの背中にお尻をアタックしてしまったらしく、背中側から「痛!」と声が聞こえる。今日はぶつけられるしぶつけるし、とんだ日だと思いながら「ごめんなさいね」と手を差し出す。


「マルフォイ大丈夫か?」
「お菓子あげようか?」


マルフォイと呼ばれた男の子の後ろにいた小太りな男の子達が心配そうに声をかける。いやもしかしたら本当は心配などしていないのかもしれない。なんたってお菓子を食べたまま話しかけているからだ。


「お菓子なんかいるか!くそ!なんで僕がこんな惨めな思いを…」

「ごめんなさい、許してね」


ごめんごめんと手を差し出したが、マルフォイと呼ばれている男の子には振り払われてしまった。全くもって失礼だ。いやぶつかったのは私なのだが。マルフォイと言う男の子はふん!と言って席に座った。最悪だった。マルフォイの席が私とシェーマスのいるコンパートメントの向かいのコンパートメントだったのだ。マルフォイはブツブツ言いながら窓の外を見ている。


「気にするなよ。あぁ言う家系のやつなんだ」


シェーマスがとりあえず座ろうぜとアリアを慰めた。あぁ言う家系とは何なのだろう。眉を寄せてシェーマスに小声で尋ねた。


「ねぇ、あぁ言う家系ってどう言うこと?」

「魔法界じゃマルフォイは有名な名前なんだぜ?アリアマグル生まれか?」

「いいえ、両親とも魔法使いだけど知らない。でもあんなやつ知らなくていいや!」


そう言ってニコリと笑うと、シェーマスもそうだな!と言って笑ってくれた。シェーマスはいい人だ。そこからは何気ない会話をして過ごした。しばらくすると「そろそろホグワーツに着くぞ」と野太い声が列車に響く。やっと魔法魔術学校に着くのだ。一体どんな生活が待っているんだろう。


「それにしても見ろよこれ」


マルフォイ達の会話だ。チラリとその様子を見ると、マルフォイは紙切れを汚いものを持つような手つきで持っていた。アリアがよく知る紙。


「家から駅までの地図だ。古ぼけた紙。駅で拾ったんだが、さぞかし頭の悪いやつらしい。あんな簡単な駅で地図とは」


マルフォイはそのまま手で紙を握り潰した。アリアが朝落としてしまった紙だったのだ。そんなことを知らないシェーマスは何のことやらとまた窓の外を見たが、アリアは違った。席を立ち、シェーマスが気づいた時にはマルフォイに殴りかかっていたのだ。


「「うわぁぁぁ」」


クラッブとゴイルの野太い叫びが響き、列車に乗っていた生徒たちが何だ何だと集まってきた。そんなことを気にもとめず、アリアはただマルフォイに「誰が方向オンチだ」と言ってビシバシ叩いたのだ。


「何するんだこの暴力女!!」

「誰が超ウルトラ方向オンチだってぇ!?」


そこまで言ってない…!!


(入学式、大波乱)


prev next
back