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グリフィンドールの談話室で、シェーマスはハリーと共にトランプ遊びに夢中になっていた。明日は休日。天蓋付きのベッドで寝転んだり、あぐらをかいたりしながら、金曜日の夜を満喫してる真っ最中だ。
ロンがカードを投げ、また負けたと唸ると、ネビルが眠そうな目をこすりながらカードを拾っていく。

「そんなもんロンに拾わせればいいのに。おせっかいだな」

シェーマスがネビルの丸まった背中を見ながら笑った。おせっかいと言えば…と、ハリーは思い出したように呟き、揃えたトランプをベッドの上に置いている。


「おせっかいなハーマイオニーから聞いたんだけど、マルフォイに告白したアリア、留学するらしいね」

「え」


トランプを片手に持ち、かぼちゃジュースを飲んでいたシェーマスの口から、ジュースが決壊した。ネビルはタオルタオルと言って慌てているが、シェーマスはそれどころではなかった。


「大広間で言ってたんだ。スネイプに呼び出されて留学の話が出たけど、ハーマイオニーは断った。でもアリアは賛成さ。マルフォイにフラれたせいかな」


フハハと笑うハリーとロンは、バリっとお菓子の袋を開けた。今夜はちょっと食べ過ぎな気もする。二人はフラれて他国へとんずらかと高笑いしている。


「え、なんでアリアが」

「あれ?シェーマス仲いいんだっけ?」

「いや、仲がいいというか、電車で一緒だったっていうか」

「マルフォイなんかに好意を抱く女子と一緒だったなんて災難だね。顔は可愛いけどさ」


ロンが肩をあげながらやれやれと呟く。口の周りがお菓子の砂糖だらけだ。


「だいたい本当なのか、その噂」

「アリアの留学?」

「違うよ。マルフォイに告白したって」

「本当なんだろうよ。自慢してたぜマルフォイのやつ」


ハリーとロンが交互にシェーマスの問いに答えていく。シェーマスが顔を俯かせても、2人は全く気付かずマルフォイの真似をして盛り上がっていた。


なんだよアリアのやつ。友達だと思ってたのに。留学の話も、マルフォイの話も僕には黙りっぱなしで、ナイショってわけだ。


(つまらない つまらない)


___

朝の4時45分。スリザリンの談話室は地下にあるため、窓の外は見えないが、きっと空はまだまだ暗いのだろう。朝方の鳥がコーラスを始め、湖のマーピープルが起き始める頃、アリアも一人目を覚ました。ルームメイトはまだ夢の中だ。家から持ってきたというクマのぬいぐるみを抱いて眠っている。イギリス人がテディベアを持って寝るというのは本当のことだったのかと思った。

そろりそろりと、日本の忍者のように部屋からでた。今日は休日。よほど真面目で丁寧な暮らしをしたい生徒でない限り5時に談話室にくることはない。まだ冷える階段を歩くと、灯りのついた談話室が見えた。肖像画もまだ寝ていて、とても静かだ。


「誰もいない」

「いる」


背の高いソファーから声が聞こえるので、近くに行ってソファーを覗いてみると偉そうな足が組まれている。まだ一年生の小さな足を、精一杯背伸びさせて、ドラコ・マルフォイは私を見つめていた。
これまた偉そうに「そこに座れ」と言い、顎でソファーを指した。


「ステファニーに伝言を頼んで何の用かしら」

「…」


静かな空間が苦しい。ステファニーでもいてくれたらこのシラけた空間だってどうにかしてくれていたはずだ。


「…すまなかった」

「は?」

「だから、勘違いしてすまなかったと言っているんだ」


罰が悪そうに顔を俯かせ、手のひらを口につけて黙ってしまった。さっさと返事をしろというように。


「あなた素直に謝る能力なんてあったのね」

「バカにしているのか」

「いいえそんなこと」


ふっと笑うと、マルフォイも安心したように微笑んだ。さっきまでの冷たかった部屋が、何だか少しだけ暖かくなったような気がした。

初めて彼のまともな表情を見た。いつも機嫌が悪そうで、人をバカにしたような表情をしているからだ。


「大丈夫よ。忘れるから」


マルフォイの表情が一気に曇った。また温度が下がった気がする。また気分を害すことを言ってしまったのだろうか。

男の子はこういう回答に困ってしまうのだろうか。

何かまずいことをした時に、忘れてもらった方が楽になるのではないのか?


ぐるぐる考えていると、鼻で笑いながらマルフォイはアリアを睨んだ。


「ほう、忘れてくれるのか」

「…何か不都合なの?」

「いや。ずいぶんお優しいんだと思っただけさ」

「…」

「忘れる…ね。人は嫌な思い出は忘れないというが。そんな簡単に忘れられるとは」


煽るように捲し立ててくるマルフォイに、アリアは腹が立っていた。何が気に入らなかったのかは知らないが、そんな言い方をする必要ながあるのだろうか。

談話室の肖像画も起きてきて、険悪な雰囲気を感じたのだろうか、額縁の端からこっそりと様子を伺っている。


「僕にも教えてくれないか?その忘れるコツを」



マルフォイがソファーから立ち上がり、見下してくる。ローブに手を突っ込み。そりゃもう偉そうに。一年生のくせに。全然迫力もないくせに。


「偉そうに…」

「は?」


バンと足音をさせて立ち上がると、マルフォイは驚いたのか一歩後ろへ退いた。暖炉の木もバチと音をさせ、談話室にこだました。


「いいわ教えてあげる。簡単なことよ」

「おい何だ…」

「留学よ!2年はいないわ!コツが分かった?留学先はイルヴァーモーニー魔法魔術学校!アメリカよ!あなたのことなんか2年で忘れ去ってやるわ!おめでとう!!!」


アリアの迫力にやられ、マルフォイはソファーに追い込まれて情けない格好になっていた。怒ったアリアはローブをマントのようにはためかせ、部屋へと消えていった。談話室に残ったのは、暖炉の木が燃える音と、肖像画のため息。そして、マルフォイのクソという悪態だけだった。



(どうしてこうも絡まってしまう)

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