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「バチルダ・バグショットさん…?」

「そう。その日記のことを知っている」



あまりに怪しい老婆にドラコはレディーを自分へと抱き寄せた。レディーは気にもせず老婆へと問いかける。見た目は100歳を超えている。普通なら死んでいてもおかしくないような年齢だ。



「なぜこの日記のことを…」

「私はこの谷にずいぶん長く住んでいる。その日記の持ち主は、昔この谷に住んでいた」

「一体それは誰なの…」

「来なさい教えてあげよう。その日記を持つものなら、なおさら」



バチルダと名乗る老婆は先に歩み始めた。後をついてこない二人に振り返り、日記のことを知らなくていいのかと、問いかけてくる。
レディーはドラコと顔を見合わせ、バチルダについて行くことに決めた。



---


着いたのは古い家だった。バチルダは家の電気を付け、ソファーへ座るように二人を促す。
適当にお茶を出され、5分ほど待つとバチルダはある写真を持ってきた。



「この人は?」



レディーは手渡された写真を見ながらバチルダに問いかけた。癖のある毛に、聡明な顔立ち。誰がどう見ても美形な顔だ。



「ゲラート・グリンデルバルト。知らないかい?」

「グリンデルバルトって…」

「知ってるのドラコ?」



ドラコが顔を青ざめさせた。バチルダは頷き、若かりし頃のゲラートじゃと言って微笑む。レディーは訳が分からずドラコの袖を握った。


「誰なの?」

「例のあの人が現れなければ、史上最悪の闇の魔法使いであったと言われている人さ」

「…!」



レディーが息を飲んだ。写真を持つ手に力が入る。それにしてもなぜこの写真がこの家にあるかが不思議だ。



「ゲラートにとって私は大叔母。甥っ子だが孫のようなものじゃ」

「…それで、グリンデルバルトとこの日記となんの関係が…?」

「この話をするのは二度目になる…」



バチルダが日記を見つめた。意味深な発言だ。以前私以外の誰かにもこの話をしたということだろうか…。



「…一体どういうこと?」

「いや、何でもない気にするな。まずゲラートのことを話す必要があるな…」



バチルダは呼吸を落ち着かせた後、思い返すように語り始めた。



「あれはもう何十年も前のこと。ゲラートはダームストラング専門学校の学生じゃった。しかし16歳の時、同級生を魔法で怪我させたのが原因で、このゴドリックの谷にいる私の元へ逃げてきた。そして、この谷に住んでいたダンブルドアと親しくなった」

「ダンブルドア校長もこの谷に住んでいたの!?」

「そうさ。そして、ゲラートはもう一人の女性と親しくなった」



バチルダが息を飲みレディーを見つめた。レディーの翡翠色の瞳が真実を知りたがっている。



「その名はビアンカ。ゴドリックの谷で最も美しく、強く可憐な魔法使いの女性じゃ」

「ビアンカ…」

「ゲラートとビアンカは19歳の時に出会った。本当に恋に落ちたかは定かでないが、ゲラートが20歳になった時、二人の間に子どもが宿った。その子の名は
『クラリス』
後に ハウエル家の息子と結婚した魔女じゃ」



レディーとドラコが目を見開いた。
ドラコはバチルダとレディーを交互に見つめている。


「…C.Hだ」


ドラコが呟くとバチルダはその通りと言いたげに頷いた。レディーが整理しきれない頭でか細く

「クラリス・ハウエル」

と呟いた時だった。日記が周りを包むような光を出したのだ。

レディーとドラコは思わず目を瞑った。少しして光が引いたことを確認し目を開けると、全く開きもしなかった日記の最初のページだけが開いている。レディーは思わず胸を押さえた。


「開いてる…」


日記を開く鍵はこの日記の持ち主の名前だった。レディーがその先をめくろうとせず固まっていると、バチルダはお茶を飲みながら答えた。


「昔、その日記を持って私のところへ訪ねてきた男がいた」


突然話を変えたように話し始めたバチルダに、レディーとドラコは首をかしげた。バチルダはお茶をテーブルへ置き、懐かしむようにその名前を口にする。



「その男はロデオ。ブロンドの髪に翡翠色の瞳をした、ホグワーツの生徒じゃった」




それは胸を鋭いもので突かれたときのような衝撃だった。


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