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部屋のドアが音を立て、レディーは慌てていた。ひとまずクロゼットの中に飛び込み息をひそめる。ドラコはレディーがいたことを悟られないよう、いつもいるベッドへ腰掛け、プルートは「何か食べないか」を聴きに来た程にした。


扉がゆっくりと開く、そこにいたのはドラコの母親であるナルシッサだった。



「母上!」

「あらドラコどうしたのそんなに大きな声をだして」



ドラコが考え込んだようにうつむいた。
母上ならレディーのことを言えるのではと。「母上」と声をかけようとしたその時だった。クロゼットがバン!と音を立てて開き、中から笑顔のレディーが出てきたのだ。



「ナルシッサさん!!」

「レディーちゃん?」



ドラコこれは一体どういうこと?と言いたげな母親と、「お久しぶりです。いろいろあって」なんていって手を握っているレディーを目の前にして、ドラコは頭を抱え壁に寄りかかった。



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「そう…そんなことがあったのね」


プルートが三人分のお茶を運んできた。屋敷に帰ってきたのはナルシッサだけのようで心底安心した。
レディーもようやく服を着替え、ボロボロになっていた服を問答無用でゴミ箱へ捨てている。珍しく黒一色のドレスだ。ブロンドの髪の毛が映えるし。なにより屋敷の雰囲気にあっていると思った。



「ドラコ、ルシウスに言うのは止めておきましょう。あの人は今立場的にも良くないわ」

「え…ルシウスさんそんなに?」



レディーがドラコへと目を向けた。ドラコは静かに頷き、今のマルフォイ家の立場が相当危ういことを悟る。ナルシッサも見えない者にずっと見られているような圧迫感があるのだろう、表情は重い。



「部屋を増やすわけにはいかないから、ドラコの部屋にいてね」

「はい。迷惑かけてすみません…」

「いいのよ。ドラコもこれで食事が摂れるようになるわ」

「どういう…?」

「ドラコはレディーちゃんから自分の記憶を消したことで食事が摂れなかったの。酷く痩せたでしょう?」



レディーがドラコを見つめた。彼は顔をそらしているが、確かに痩せたと思う。以前よりも不健康そうだ。でも当たり前だ。こんな恐ろしい世界にいるんだから。



「食事は屋敷しもべに運ばせるから問題ないわ。あなたのことは決してバレないようにする」

「ありがとうございますナルシッサさん」

「あなたは娘のようなものなのだから、気にしなくていいのよ。それよりも、ここに来てくれてありがとう。落ち着けないかもしれないけど、ゆっくりしてね」



ナルシッサがレディーを抱きしめた。レディーはまた涙をこぼしてしまった。自分は最近本当に泣き虫になったと思う。よく言えば感情が豊かなわけだが、なんだか三年生の時の方が心が丈夫だったような気もする。

チラリとドラコを見ると微笑んでいた。彼のおかげで、私も変わったのだとこの時改めて実感した。



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ハーマイオニー達はある森にテントを張っていた。姿くらましをする際、ロンがバラけて大怪我を負ってしまったためだ。

ハリーとハーマイオニーが何度も分霊箱であるスリザリンのロケットを破壊しようとしたが、一向に上手くいかず、三人の心は分裂しそうになっていた。


上手くいかない状況にハーマイオニーはため息をつき、鉛のような空を見上げた。



「レディー大丈夫かしら…」

「あそこには義兄もいるって言ってた。きっと大丈夫だよ」

「レディーの荷物、全部この中なの」



ハーマイオニーが持っていた巾着をハリーに差し出した。旅の荷物は全てこの中にある。まして魔法省に潜入する際、荷物が邪魔だからと全てハーマイオニーに預けたのだ。



「レディーの日記もここに……」

「ハーマイオニー?」

「ない…!?」

「なにが」

「レディーの日記よ!ダンブルドアから遺贈された!ないの、どこにも。確かに入れたのに!!」



慌てて何度も巾着を確認する。「アクシオ ダイアリー」と呪文を唱えても出てこなかった。
ハーマイオニーはどうしようと腰を下ろし眉を寄せた。


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その日の夜レディーはドラコのベッドで眠っていた。トイレや風呂は面倒だが屋敷しもべが毎度姿あらわしをし、安全な時間に連れて行くことになり、なんとか生活できる環境が整った。


ドラコに抱きしめられスヤスヤと眠る頃、レディーの枕元に魔法がかかったように日記が出現した。まるでグリフィンドールの剣のように。レディーを求めるかのように現れたのだ。



その日の夜、レディーは夢をみた。久しぶりに見る夢だ。4年生で見て以来なかった夢。



「ようやく日記を見つけたのだな」

「あなたは…前、夢に出てきましたね」

「これで過去がわかる。必然的なものだ」

「あなたは、またお告げなの?」

「そう思うなら、きっと……」




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