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喧嘩を終えて大広間を出る。レディーはミリセントと話をしていた時の笑顔はどこへやったのかわからない程に怒り、親友のオルガに愚痴をはいていた。ローファーをカツカツ鳴らし、上級生の目も気にせずに歩いていく。



「どうしてマルフォイってあぁなの?あいつくらいよ私に悪態つくのなんて!大概の人はレディーさんお綺麗ですねとか、エジワールは天才だ!としか言わないのに」

「嘘言ってんじゃないわよ。というか、もう怒らないでよ。同じくらいの悪口マルフォイにも言い返したんだから」



全くお互い様だ。と言いながらオルガはため息を吐いた。大広間から出てスリザリンの寮へ行く廊下を歩く。周りの生徒も授業の準備をしようとバタバタと走っていて正直うるさいくらいだ。これがホグワーツらしいと言ったらそうなのだが。


そんなホグワーツでは髪を縛っている子が少ない。いや、もちろん居ないわけではない。一つ縛りや、おさげ髪の子はいる。しかしこの学校で唯一ツインテールで縛っているのは彼女くらいのものだろう。

日本から来た魔法使いの子が言ってた。「彼女原宿にいそうだ」って。原宿ってどんなところなんだろう。

そんなことはどうでもいい。その彼女とは、この隣でドラコ・マルフォイの愚痴をずっと言っていたレディーの妹のことだ。


レディーは妹が嫌いで、いつもは無視をしてやり過ごしているようだが、今日は様子が違った。 横を通り過ぎたとき、妹が珍しく声をかけたのだ。



「レディー!!」

「なによ」



まるで人が変わったように妹に冷たく接する。ドラコの愚痴を言っていた時はまだ笑顔があった。この表情を見るとあぁレディーはスリザリンなんだなって感じる。
入学してすぐは驚いたが、今年で三年目なのでもうこの妹への塩対応ぶりには慣れてしまった。
妹の名はアロマ。アロマ・エジワールだ。一つ下の妹だが、まぁなんともぶりっ子な見た目と声で思わず耳を抑えてしまう。



「レディーまたママに手紙出さなかったの?」

「だから?」

「ママが心配するから出さなきゃ!」

「心配…?あなたみたいに成績が悪いわけでもない、魔法が弱いわけでもない、私のどこに心配の点があるっていうの?それに、私が母に愛されていないのを分かっていて言っているの?」



そんなつもりはと、息を詰まらせたアロマは長い髪を揺らしながら大広間へと駆けていってしまった。
しばらく黙り込んでいたレディーだったが、妹が見えなくなった途端「行こうオルガ」と言い寮の方へと進んでいく。ため息をつくオルガは、レディーの手を取った。大丈夫よと声をかける。


「全く、相変わらずね」

「どうしてあれと姉妹なのかしらね…」



オルガにまぁまぁと言われたが、レディーは自分で出した言葉が本当に不思議で仕方なかった。

まずレディーはスリザリンだが、妹はグリフィンドールだ。 そして母親と父親もグリフィンドールであったし、家系のなかでスリザリンは見られない。
そして瞳の色。妹はブラウンだがレディーは翡翠色だ。髪色も違う。要はレディーと妹、似通った点が一つもないのだ。

レディーはこれが不思議で不思議で仕方なかった。


(私ほんとにここの家の子なの?)


―――――



クラッブとゴイルがギリギリまで食事をするため未だマルフォイたちは大広間に残っていた。
パンジーはマルフォイにベタベタとくっつき、ひたすら自分の話をしている。
マルフォイは気にもせずに、食べもしないケーキを突っついていた。


「ねぇドラコ」

「なんだパーキンソン」

「レディーをどう思う?」

「は?」


レディーとオルガが大広間をでたのを確認してパンジーはマルフォイに尋ねた。パンジーが突然質問をすることは今に始まったことではないが、内容が内容なだけに驚きを隠せなかった。


「ねぇ、どう思う?」


「別にどうも」


「あの子美人だと思うでしょ?」


「まぁ顔は悪くない」


「恋愛感情で見たことある?」


ドラコはまたも驚いたがすぐに返答した。


「あるわけないだろう、女のくせに口は悪くて、確かに美人だが、何故そんなことを聞くんだ?」


「別に〜」


パンジーはドラコがレディーに気がないとわかると、そっかそっかと言い、嬉しそうに立ち上がりスキップをしながら出て行った。



「…恋愛感情ね」


マルフォイが言った言葉はあまりに小さく、クラッブとゴイルがケーキ食べてお皿を置く音の方が大きかった。


‐‐‐‐‐‐


レディーとオルガは寮の自室に戻っていた。二人の他にもルームメイトがいるのだがもう授業に向かっているようで部屋にはいなかった。

今日最初の授業の為に移動をし始める。ちなみに魔法薬学、朝からスネイプの顔を拝むのだ。
オルガはため息をついて肩を落とした。



「なんでよりにもよって魔法薬学が最初なのかしら。とっても苦手」

「それずっと思ってた。この際時間割を変えるべきだわ。スネイプに抗議してよオルガ、私は成績落としたくないから遠くから見つめているわ。骨なら拾ってあげるから思い切り挑んできてよ。」



ケタケタ笑うレディーにオルガは「それでも親友なの?」と言い教科書で頭を小突いた。



-----



教室には二人以外みんな集まっていて、スネイプが来るのを待っている状態だった。二人は焦ることもなくゆっくりと椅子に座った。

席はマルフォイの後ろ。座った瞬間レディーが眉間にしわを寄せたのは言うまでもない。


「遅かったじゃないかエジワール、そのノロマな足で何処まで行ってたんだ」


マルフォイは着くと同時にレディーに悪口を言い出した。この教室の席って後ろ向くの辛いのによくやるなぁなんて思いながら、レディーは鼻で笑うといつものように反抗をした。


「おあいにくさま、私はノロマじゃな」

「そうそう!レディーはノロマじゃない!!」



レディーの肩に手が置かれる。この三年間軽々しくレディーの肩に手を置く人物は一人しかいなかった。それを知っているレディーはその人物を睨み、置かれた手を振り払った。



「何すんのよランドール」



レディーに対しオルガは「あら、ランドール。一時間目から授業に出るなんて珍しいわね」と言いながら手鏡で前髪を直している。全く興味がなさそうだ。


「レディー一緒に座らないか?」

「悪いわねランドール、見ての通り私はオルガと座るから」


先ほどからレディーをナンパするように話しかけているのはナイト・ランドールと言うキザな男だ、入学当初からレディーに気があるようで毎日のように話し掛けている。整った容姿だが、入学当初は前髪の長い目立たない生徒だった。



「ランドール、そんな馬鹿かばってばかりいるとお前まで馬鹿になるぞ」



その様子を見たマルフォイが鼻で笑いながらランドールに言った。頬が若干引きつっていることなんて誰も気がつかない。


「好きな子かばってバカになるなら、ずっとバカでいいぞ俺は」

「エターナルバカって呼ぼうか?」


レディーが白い目を向けて席についた。隣のオルガは教科書を開いて準備をしているが、文字なんて一つも見ちゃいない。


「・・・」


マルフォイはその後、急に不機嫌になり前を向いてしまった。レディーは「なによ」と小声で言い、マルフォイの椅子を蹴りまくった。椅子が悲鳴を上げそうなほど。


「何で怒ってんのよ」

「怒ってない」

「なんで不機嫌になってんのよ」

「なってない!やめろ!」



マルフォイが声を上げた時だ。後ろの扉がバンっと開き、先生であるスネイプが入って来て授業が始まった。


「今日の授業では難しい薬を作ってもらう。そうきわめて難しい薬だ。一人でやるのは大変だろう。よって我輩が二人組を作った、その通りに席を移動するのだ」



一気に血の気が引いた気がした。これでマルフォイなんかと組んでみろ、悪口で一時間終わりそうだ。レディーは顔が青くなった。隣にいるオルガはそれを見て笑っているが本人からすれば笑い事ではない。
そんなレディーの心配をよそにスネイプはどんどんと名前を読み上げていく。



「ハーマイオニー・グレンジャーとロン・ウィーズリー」



グリフィンドールの席からはウィーズリーの歓喜の声が聞こえる。学年一優秀なハーマイオニーと組めたのだもうウィーズリーは合格だろう。

そんなことを考えるオルガの横では、その声に耳を傾けもせずにひたすらマルフォイとチームではないことを机の下で手を組み合わせて祈るレディーの姿があった。


(最高に面白い。写真に収めておきたいくらい)
(あぁ神よ。私は何もしていないわ。どうか貴方様のお導きでマルフォイ以外の人と組ませて下さい。あぁやっぱりランドールも無しで)



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