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「さようならレディー」


ホグワーツに入ってからというもの、見る夢は毎日これだ。私の名前を呼ぶその人は、いつも夢から覚める直前で別れを告げてくる。
誰か、わからない。顔は白く、モヤがかかっている。


私、レディー・エジワールは今日もまた同じ夢で目を覚ました。



(あなた誰?)


朝は本当に弱い。夢がどんなものでも眠いものは眠い。無理やり目を開けて横を見ると、ハンガーにかかっているスリザリンのローブ。見慣れた光景に、一度開けた目を閉じてまた開けた。
二度寝は好きだが、美容には良くないらしい。マグルの雑誌にそう書いてあった。寝れば寝るほど肌が美しくなればいいのに、ここは地下室で太陽の光も届かないし、せめて部屋を日の当たる場所へ移してほしいな。

自分の欲はなかなか叶わず、目をこすりゆっくりと体を起こしてみる。目の前にはルームメイト。
ピンク色のインナーカラーが入ったサラサラの髪はよく目立つ。私はブロンドだけど、彼女は黒髪。目が合えば彼女はニコニコと笑って言った。



「レディー朝よ!!」



ルームメイトの名はオルガと言う。オルガ・スターシップ。 おしゃれが大好きで、一年生の頃から私の親友だ。

ベッドに飛び乗るオルガは痩せているが、さすがに足に乗られると重い。


「おはよう。ダイエットに失敗したの?脚が折れる!」



笑みを浮かべながら言い、ちゃぶ台返しをするようにベッドの上にいるオルガをひっくり返した。

よっと言いながら避けて飛び降りるオルガは「太ってないわよ。むしろ痩せたんだから」などと言い部屋の真ん中でポーズを決めている。
寝起きで回らない頭にオルガとの会話は厳しいものがある。しばらくポーッとしているとオルガがまたいつもの笑顔を向けて言った。



「まぁいいわ、行きましょうレディー私お腹が空いたのよ」

「そうね、私はお腹空いてないけどココアくらい口にしておこうかな、やっぱりカボチャジュースにしよう」




最近出たばかりの靴を履いて、部屋のドアを蹴っ飛ばした。勢いが良すぎて靴は廊下に吹っ飛んでしまったようだ。
廊下をたまたま通った女の子の頭に当たり、それはもう何度も謝った。

スリザリンの女子は怖いのだ。


---



騒がしい大広間ついてスリザリンの席へ行く。まだ寝ている生徒もいるのか何なのか、空席がポツポツある。おいしそうな料理が並んでいるが、朝に弱いレディーにとってはどれも魅力的ではなかった。



「おはようレディー、オルガ。今日もおしゃれね」



席を探すレディーとオルガにミリセント・ブロストロードが話しかけた。寮の中でも比較的仲のいい彼女に二人は笑顔を向けた。



「おはようミリセントあなたもその髪飾り素敵よ」

「レディーに褒めてもらえるなんて光栄だわ。ねぇダフネ」

「ほんとよ!ミリセントよかったわね!」



隣に座っていたダフネに顔を合わせる。スリザリンの女子生徒の一部から二人はとても人気があったのだ。スリザリン一の美人であり、話が面白く、笑顔の絶えないレディーは男女共に好かれていた。



「やめてよ二人とも、そんなに褒めないでちょうだい。私すぐに調子に乗っちゃうの。これ以上服装で校則違反したらスネイプに何て言われるか」



ケタケタ愉快に笑いながら遠くにいるスネイプに指をさした。レディー、スネイプに睨まれてるわ。なんてコソコソ言うオルガの言葉を聞きもせずに笑いながら朝ごはんを食べるための席を探していた。




「ドラコってホント素敵ね」



なんて言ってるパンジーの隣に腰をかけた。あぁやばい席に座ってしまったとレディーは後悔した。隣からはドラコ好き好きオーラがだだ漏れだ。



「あら、おはようレディー」

「ええおはようパンジー」



こちらに気づいたパンジーが挨拶をしてきた。合わせて挨拶を交わすとパンジーの奥にいる男が声をかけてきた。馴れたけど馴れない男。



「エジワール、相変わらずの間抜け顔だな」



それは取り巻きの中心であるドラコ・マルフォイだった。堪に触った言葉に眉をピクリと動かして笑顔を見せてやった。


「あぁ、おはようマルフォイ、貴方は相変わらず人の悪口を言ってばかりなのね素敵だわ。さすがスリザリン」


半場厭味を込めながら挨拶を交わす。マルフォイはそれに応えるようにして、ほお杖をつきながら言った。



「ふん、僕は嘘をつけないんでね」

「素晴らしいわ!!偉いと思う!私は四六時中嘘をついてるのよ。今言った素晴らしいなんて言葉も嘘ね。ちなみに素敵って言葉も嘘」



こうしてスリザリンの朝に火がついた。レディーとマルフォイの周りから生徒はどんどんといなくなりそこに残ったのはオルガと、マルフォイの取り巻きのみとなった。



「また始まったわ、どうしてこんなに毎日言い合いが出来るのかしら」


オルガは深くため息をついた。言い争いを始めた二人を遠い目をしながら見つめる。思い出すはオルガたちがまだ一年生の頃の話し。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐



ホグワーツに入学して無事スリザリンに寮が決まって、オルガは度肝を抜かれていた。視線の先では入学早々大喧嘩が繰り広げられているのだ。殴り合いなどではない。寮テーブルの真ん中で、新入生をお祝いする先輩をヒヤヒヤさせる口喧嘩。


「僕を誰だと思ってるんだ!」

「知るわけないでしょう、ナルシスト」

「マルフォイ家を知らないなんてお前本当に純血か!?ちなみに僕はナルシストじゃない!」

「正真正銘の純血よ。マルフォイ家なんて知っててどうするのよ。それなら洋服のブランド名を覚えたほうがよほど私のためだわ」

「お前口悪いぞ、女とは思えないな!」

「あんたこそ随分女々しいわね、男とは思えないわ!」



レディーはアハハ、と笑う。言っている内容は酷いものだが本人は笑っていた。それを見た寮の新入生が何人レディーに心を奪われたかなんてわかるわけもない。


そして同時に女の子の視線を集めていたのはマルフォイ家のドラコだった。彼も顔が整っていたし、注目を集めるなんて簡単なことなのだ。
要は二人は美少年と美少女、そんな二人の喧嘩は他の寮をも引き付ける大きなものへとなっていった。



「だいたいねぇ、いきなり声を掛けてきたのは貴方でしょう」


「僕に声を掛けてもらえて幸福だと思うんだな!」


「やっぱりナルシストじゃないの、墓穴を掘ったわね!、それに誰だかわからない男に声掛けられても嬉しくないわ!そうね出来ればイケメン俳優になら声を掛けられたいわね」



スリザリンの生徒はア然、他の寮の人は苦笑い、先生方は呆れ顔。
オルガはただ呆然としながら二人を見るしかなかった。



「お前、これから後悔しても知らないからな!!」

「するわけないでしょう!なんども言わせないでよ!」



こんなことがずっとエンドリピート。
そんなわけでこの三年間、ずっとこんな感じの朝を向かえているのだった。まさか入学式で一番注目を集めたレディーと一番の親友になるなんておもいもしなかったけど。




(私って世界一不幸な少女じゃない?)
(大丈夫オルガ?)
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