はい、やってきましたよー青学、と心中で呟いて名前は校門の前で大きな溜息をついた。これから約2週間ここで生活しなければならないかと思うと、とても不安で仕方がない。頼りにした向日の話は全然だったし、唯一跡部から簡単な説明を受けたくらいで、その辺にある学校と大差ないだろう。名前は取りあえず、自分がジロジロ周りから見られている視線を忌々しげに思いながらも職員室へと向かった。



はじめまして



『失礼します。氷帝学園から来ました遠野名前です』

 ガヤガヤと先生方で賑わっていた職員室に入れば、近くにいた数名の教師の目が名前に向けられた。そして「ああ、交換留学の」と快く校長室へと案内され、それはもう長い校長の話を聞かされた。HRギリギリに校長室から出る事ができ、最早この時点で名前は限界がきていた。

『マジで話長すぎ…こんなんで夏に外で朝会なんて開かれたら何人ぶっ倒れてもおかしくないよね』

 ブツブツと文句を語りつつ、もう一度職員室へと通された名前は背の高い男子生徒がいることに気づく。背を向けられていても感じる威厳に、少し跡部を重ねてしまう。だが、彼が振り向いたと同時にそれは違ったと思った。

「遠野さん、彼が教室まで案内してくれるから」
『あ、はい。有難う御座います』
「じゃあ手塚君、頼んだよ」
「はい」

 手塚と呼ばれた生徒は一礼して職員室から早々と出て行く。それに名前は急いで着いて行けば、外で手塚は待っていた。そして名前を一瞥すると背を向けて歩き出した。その態度が大いに気に食わなかった名前は眉を顰めたままその後ろについていく。

「遠野、といったか」
『うん、そう。氷帝学園3-A所属、遠野名前。よろしく。えーっと…』
「手塚国光だ。生徒会長とテニス部部長をしている。よろしくな」
『…跡部と被っている』
「? 跡部? 跡部と知り合い、いや…氷帝なら知っていて当然だろうな」
『手塚は跡部と知り合い? あ、テニス部だから知ってるか』
「ああ。アイツはカリスマ性に富んでいて、そして色んな意味で凄い
『金持ち発言から上から目線やらなにやらね』

 はっと鼻で笑った名前に手塚は物珍しそうな表情になる。それに名前は小さく首を傾げれば、手塚は「いや…」と遠慮がちに言葉を発する。

「跡部に対して鼻で笑った奴を見るのが初めてでな」
『そりゃそうだろーね。アイツはなんだかんだで人気あるし。でもわたしアイツ嫌いだし』
「跡部が嫌いなのか?」
『そりゃもう、入学当初からね。アイツが嫌いという説明文で表すなら第一章から第五十章くらいで』
…説明しなくていいぞ
説明する気力もねぇよ

 手塚に対してツッコんだ名前に、すれ違った生徒はびくっと肩を揺らした。名前はそれを視界の隅で捕らえていたが、「まあ、いっか」と受け流した。

『青学って強いんだってね。テニスよくわかんないんだけどさ』
「そうだな…今年は特に強くなれるだろう」
『へぇー。いい新入部員でも入ったの?』
「ああ…あれは青学の柱になる」
え、人柱? 手塚何気に酷いね
違う

 なんだか手塚とは変な付きあいになりそうです。By, 名前



11/11/13

暴れん坊な遠野妹が青学でわちゃわちゃA



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