『今回の内容は、四天宝寺の怪談及び七不思議の解決です』。その言葉に心なしか一同の表情に「ああ、やっぱり」と現れていたのは仕方ないだろう。



「四天宝寺の怪談…」

「及び七不思議……ねぇ」



 白石と千歳が繰り返すように呟けば、一氏が顎に手を添えて思い出すように視線をやや上に向けた。



「怪談はともかく、七不思議いうたら、あれやな。【校庭に出現する墓地】【体育館の一人バスケット】【校内大激走レース!テケテケとトコトコ】【真夜中に華月で一人漫才する校長の銅像】【無人の放送室】【女子トイレの花子さん】……やろ?」

「すご…流石は四天宝寺! やっぱり笑いも入ってくるんですね!」

「え? そこなん?」



 花菜の目の付け所に一同は苦笑するしかない。すると、ふと気づいたかのように財前がそれを囁くように口にした。



「六つしかないやん…」

「……確かに、一氏はんが言ったのは、全部で六つだけやな」

「でも、七不思議って確か、七つ全て知ったら死んじゃうとかって言いますよね?」

『花菜の言う通り、七つ知ったら死ぬっていうのが多いですかね。まあ要約すれば、七つ目が厄介で殺されるってことですよ』



 平然とそんなことを口にする清花に、周囲の空気が凍結したような気がした。静寂と無言に包まれる室内で、メリーさんがからからと笑う声が木霊する。



「まあでも、伯爵と一緒にいれば死ぬことはないわよ。伯爵にとって七つ目なんか逆に血祭りだったものね」

「いったいお前は何してきたんや…」

『まあ、色々と』



 一氏の訝しがる視線ににこりと笑みを返す清花。そしてかたん、と席を立った彼女は『そろそろ行かないとまずいですね』と告げた。



『あまり長いことコチラにいると、邪気に汚染されて呑み込まれてしまう可能性が高いので。それに外でも刻一刻と時間は流れています。急いだ方がよろしいでしょう』

「はあ……やるしかなかね」

「わーい! 悪霊退散やー!!」



 はしゃぐ金太郎を宥める花菜と白石。清花は右耳の対極図を模したピアスに触れると、彼女の両肩に黒と白の淡い光が灯り、そしてぽんっと何かが乗っかった。



「狐やー!!」



 金太郎の喜びゲージがぐん、と上がったのはいうまでもない。彼女の肩には猫並みの大きさの子狐が二匹、右に白・左に黒と鎮座している。清花は白い方が加えている帯紐を貰い受け、黒い方から巾着を受け取った。



『白い方がしらべ、黒い方がかなでといって、わたしの式神です。中級霊くらいには匹敵する強さをもっていますから、なにかと心強いかと思います』



 それから、と言葉を繋ぎ、彼女は巾着袋の中からそれを取り出した。手にしていたのは先端に勾玉のついたブレスレットだった。



『魔除けの勾玉です。効果のあるタイガーストーンとオニキス、それから水晶で作ってあるので効力抜群だと思います。これを身につけてください』



 そういい各々にブレスレットを手渡し、清花は全員がそれを身につけたのを確認すると続けた。



『あと、これから皆さんには護身法をお伝えしておきます』

「うわぁ…なんか、本格的ですね」

「なんかちょっとワクワクしてきたわぁ」

「ふふっ、恐怖心が和らぐのはいいことよ。怖いと思えば思うほどに隙ができて相手につけいられるものだから」



 メリーさんの言葉にその通りと清花は頷けば、怖くない怖くないと口にする一部(花菜に金太郎、それから小春と一氏に謙也)を除いたメンバーは複雑そうな顔をしている。実際に目にしなければ怖いも糞もあったもんじゃないのだから、当然だろう。



『ではまず、護身法ですが…九字、って聞いたことあります?』



 清花が問えば、小春と財前以外がその言葉に不思議そうな顔をする。



「【臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前】って聞いたことありまへん?」

「あ、それのことですか」

「なら聞いたことあるわな」

「九字護身法いうて、九字を切るとも言われとるんよ」

『それが手っ取り早く簡単に覚えることができます。退魔の早九字とか、刀印とかって言われているんですけど、』



 清花はそういい人差し指と中指を立て九字を唱えながら、横・縦の順番で線を引くように指を動かして見本を見せた。千歳が「こぎゃん、ひゃあんごつとね」と感心すれば、納得したように一氏も頷く。



「まあ、これなら気軽にできるしええな」

「これもスピードスターなら秒速っちゅー話やな」

「心底どうでもええですわ」

「財前!!」

「二人共落ち着いてくださいっ」



 財前と謙也の中に花菜が割って入り、白石に至っては先を越された為か「なかなかやるなぁ」と感心している。普段通りの四天宝寺が見受けられるようになって、清花は心なしかほっと安堵の息をついた。
 このまま負の念が強まるようなら、と危惧していたがその心配はいらないようだった。ただし、油断は禁物だと清花は気を引き締めて彼らへと「では、行きましょうか」と声をかけた。
 かくして一同は図書室を出て、四天宝寺の怪談及び七不思議解決の旅へと出発する。





四天宝寺の怪談及び七不思議

第二章 四天宝寺の怪談




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -