▼第五十夜 「お守り」
ずいぶん昔の話だが、実は昔、心臓にクナイが突きささりそうになったことある。
敵の実力はたいしたことなかったんだが、どうにもその数が多くてね。
それに持ってる忍具の数も尋常じゃなかった。
だから手負いで逃げている最中、集中砲火を浴びたら、全部を避けるなんてとてもじゃないけど無理だった。
だから、致命傷だけは受けないよう、自分でも相当注意を払っていたんだけどね…。
持久戦に持ち込まれて、一瞬の隙をつかれた。
それまで攻撃を見切っていた写輪眼が、チャクラ切れで戻った、その一瞬だった。
かすったどころの話じゃない。
ベストを貫通して、深々突きささる様子が、ゆっくりと見えた。
ああ、もう死んだな。
オレはその場に倒れ込んだ。
そして薄れていく意識の中で、ちょうど追いついた増援の足音を聞いていた。
あと少しのところで間に合わなかった。
そう思って意識を飛ばしたんだが…このとおり、生きてるんだな。
病院で目が覚めたとき、本当に奇跡が起きたって、看護師には何度も言われたよ。
オレの胸元にあったお守りが、どうやらオレの命を守ってくれたらしいんだ。
上忍昇級のときにお祝いとしてもらった、手作りのお守りだ。
色んなものを欲ばって詰め込んだのか少しふっくらしている。
でもその程度の厚さじゃ、クナイの衝撃を和らげるなんてこと、本当はできないはずなんだよな。
――この命はきっと、色んな人に守られてあるんだって、たまに思いがけないタイミングで教えられるよ。
prev / next
←back