掌編小説 | ナノ


▼第四十五夜 「分家の宿命」

ヒナタ様、先ほどは胸に秘めていたお話をお教え下さり、ありがとうございました。
今では心やすらかにその事実を受け止めることが出来ます。
そして実はその話を聞き、思い出したことがあります。

あれは中忍試験本選前、テンテンに手助けしてもらい、修行をしていたときのことです。
あの頃のオレは、例え自分が分家でも、宗家に自分の才能を見せつけてやりたいと思い、宗家にのみ代々受け継がれる回天を会得しようと躍起になっていました。
とにかくそれだけが頭を支配し、やみくもに修行に明け暮れる毎日。

今思えばあのときはリーが入院し、ガイ先生がそれに付き添っていたから、テンテンばかりに負担をかけてしまったな。
すまなかった、だが感謝している。

連日の修行と、テンテンの力添えもあり、とうとう見よう見真似ではありましたが術は完成しました。
白眼を持つ者のみが身につける事が許された完全防御。
そこにいる意外性忍者に敗られるまでは、それが忍にとっての最強の術、完璧な術のように思えていました。
そして術が完成したとき、オレは視界の隅に映ったそれに、気づきました。
木の影からこちらを伺う誰かがいることに。

まるでヒナタ様のお話と同じですね。
その誰かは、ヒナタ様のお父様によく似た容姿をしていました。
修行が終わったばかり、膝に手をつきまだ息の荒いオレに近づいてこう言ったんです。

ネジ、よくやった。
これからはその術で、宗家をお守りするんだ。

それを聞いた瞬間は、頭に血がのぼったような感覚でした。
宗家だからという理由だけで、分家を盾にし、捨て駒のようにしか考えていないと思っていた宗家のやり方に、オレは反発をしていましたから。
人の努力も、結局は宗家の総力の底上げとしかとらえていない。
そう思い、憤然としました。

その憎しみから、息を整えるために伏せていた顔を勢いよく上げ、睨みつけました。
しかしそこにはオレの形相に驚いた顔をしたテンテンしかいませんでした。
本選で回天を披露したときも、ヒアシ様は驚いた顔をしていらっしゃった。
一度森でその術を見ていたはずなのだから、オレにはそれが不思議でなりませんでした。
が、ヒナタ様のお話でようやく分かりました。
あの人が自分の父であったと。

――ヒナタ様。父の思いは、しっかりと今のオレの中に生きています。

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