掌編小説 | ナノ


▼第三十七夜 「髪を洗う」

私、けっこう長いこと髪を伸ばしてたのよね。
だから久々に頭が軽いと、なんか不思議な感じ。
でね、聞いたときはどうってことなかったんだけど、今になって怖くなってる話があるんだ…。

ある女の子が、髪を洗っていたんだって。
髪の洗い方って二通りあるじゃない?
うつむいた状態で前からシャワーをかけるか、上を向いた状態で後ろからシャワーをかけるか。
その女の子はうつむいて洗う方だった。

いつものようにシャンプーを手に取って、泡立ててからうつむいて洗い流す。
慣れた流れのはずなのに、どうしてか違和感があった。
初めはその原因が分からなかったんだけど、丁寧に髪をといているときに気がついた。

私、こんなに髪が長くない。

うつむいているから視界が狭まっている。
目を開けたって何かが見えるとは限らない。
でもその子の脳裏に思い浮かんじゃったのよね。

――長い髪を垂らして覆い被さっている“誰か”のイメージが…。

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