掌編小説 | ナノ


▼第三十六夜 「死の森の主」

中忍試験の話がちらほら出てきたな。
実はオレも二次試験の死の森で妙な人影を見ていた。
真っ昼間に目の当たりにしたもんだから、他国の忍だろうとあまり気に留めてなかったんだが…。

ゴールの塔から東にある地点に、少しだけ開けた場所がある。
そこには頭ひとつでかい杉が植えられていた。
水場の確保のため、高いところから地形を確認しようと登っている最中だった。

突然ドスンと衝撃が走り、木が大きく揺れた。
何事かと確認すると、どうやら木の頂上に誰かが下り立ったらしかった。
同じようなことを考える連中はもちろんいるだろうとは思っていたが、まさかてっぺんにいきなり現れるとは。
不測の事態だったが、幸いこちらには気づいていないようだった。

そのまま息を殺して出方を窺っていると、現れたときと同様にいきなり気配が消えた。
いったいどういうことだ。
混乱するオレの耳に、またドスンと音が聞こえた。
十数メートル離れた場所にある杉の木が、大きく揺れているのが見えた。

ずいぶんと跳躍力のある忍もいるもんだ。
対戦したら厄介かもしれない。
そう思っていたが、奴が試験を通過することはなかった。
いやそもそも、受験者ですらなかったのかもしれない。

――オレの位置からは足元しかみえなかったが…そいつ、高下駄を履いていやがったんだ。

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