掌編小説 | ナノ


▼第三十三夜 「自来也の原稿」

オレってば、中忍試験のとき、自来也っていうエロ仙人に修行を見てもらってたんだ。
なんかすンげー忍者らしいんだけど、イチャパラの作者らしくって。
取材とかいってノゾキばっかするから、すンげー頼りねー師匠って感じだった。

で、あまりに修行を見てくれないから、腹いせに悪戯をしたんだってばよ。
ほんの出来心だったんだけど…まさかあんな大事になるとは…。

ある日、エロ仙人は原稿の〆切に追われていた。
取材ざんまいのわりに原稿を書くのが遅いから、編集?って人が直々に受け取りにきてたんだ。
オレが口寄せを練習してる横で、原稿を散らかしながら執筆していた。
そんでたまに息詰まったと思ったら、こっち見てニヤケてきた。

なんだまだそんな小っせぇオタマジャクシなんか出しとるんかのォ!

これにはオレも密かにぶち切れた。
そんで、落ちてた原稿を拾うふりをして、書き換えてやったんだ。
内容は読んだらダメだと思ったから、登場人物の名前だけを。
好きな姉ちゃんの名前を叫ぶ場面で、その名前を、叫んでる男の人の名前にかえた。

すっげーナルシストみたいで、フインキ台無しって感じになった。
でもまあ、すぐにバレて直されると思ってたんだけど。
恐ろしいことに、本はそのまま出版された。
マジで編集の兄ちゃん、原稿受け取るしか仕事してないのかよ…って思った。

でもさ、やっぱり読者は気づくんだよな。
一週間もしないうちに修正版が出て、最初に棚に並んでた本は全部燃やされることになった。

――もしエロ仙人に原稿を確認されたら…字が違うから、ぜってーバレると思って、今でもヒヤヒヤすんだよな…。

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