掌編小説 | ナノ


▼第三十夜 「帰る場所」

下忍の皆はまだ経験がないだろうが、上忍にもなると、数ヶ月にわたる里外任務も回ってくる。
潜入捜査などは専門的な術を持つ者に回されることがほとんどだが、人手不足だとどうしても、不慣れな者が駆り出される場合もあってだな。

そのときも、昇格したばかりの者が、敵のアジトに潜入する任務を任された。
とはいえ、放棄されたアジトでの捜査だ。
対戦の危険はなく、ランクもAランクと伝えられていた。
しかし…本当に運がなかった。
たまたま現場に戻っていた敵とはち合わせたらしい。
見る間に激しい戦地へと変貌した。

忍術の掛け合いの最中に山火事にでもなったんだろう。
焼け跡はひどいありさまだったよ。
近くで別任務をしていたオレが、戦死の報告を里に送ったんだ。
間違いなく死亡を確認したはずなんだ。

しかし、オレが里に戻る頃になって、死んだはずの二人が無傷で帰ってきたという。
とんだ誤報だったなと、門番も笑って二人を通したらしいんだ。
だけどな、やっぱりそれ以降、そいつらの姿を見た奴はいなかった。

どこで死んでも、帰りたい場所はやっぱり住み慣れた里なんだろうな。
木ノ葉の墓地の一角にはそんな骨のない人たちの墓がひっそり建っている。

――たまにでいい。そういう人たちのおかげで、今の里があることを、思い出してやってくれ。

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