掌編小説 | ナノ


▼第二十九夜 「一次試験のカンニング」

中忍試験の一次試験の話だ。
問題が下忍に解けないものと分かってから、カンニング合戦となったあの試験だが…。
皆はオレが、白眼を使ったと思っているだろう。
もちろんオレもそのつもりだったが真相は違う。

あのとき、術を使うまでもなかった。
前の座席の人が透けていたんだ。

ぼんやりと、輪郭はあるものの、回答用紙が透けて見えている。
後になって、あれがカンニングさせるために仕込まれた試験官だと勘づいたが…実はあの日以来、その人を見かけていない。

二次試験のときも、木ノ葉崩しが終わった後も。
人手不足でさまざまな先輩方と組むことがあっても、どうしても試験会場にいたあの姿だけは見かけない。

もちろん下忍になりきっていたときとは違い、中忍のベストを着たら、雰囲気も変わるだろうが…。
なぜか、また会える気がしない。

――あのときの人は、今も無事に生きているんだろうか…。

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