掌編小説 | ナノ


▼第二十一夜 「幽霊に入る」

ここだけの話、心転身の術で、幽霊に入ったことがあるの。
十班のフォーメーションを練習していて、敵に見立てたアスマ先生を狙ったときだった。

どっと風が吹き込んだ気がしたけど、飛ばす精神は物理的な影響を受けない。
だから問題ないと思ってそのまま術を発動したんだけど…。
なんでか、よく周りが見えなかったのよね。

術が失敗したときの手応えともまた違って、感覚的にいうと、目が見えない人の中に入ってしまった感じだった。
目が見えないだけならまだよかったんだけど、暑さも寒さも感じない。
ただ、何十人もの人がうなりをあげている中をもがいている感覚がして、焦ってやみくもに動いていたら、急に視界が開けたの。

そこには他国の忍がいた。
私たちが演習している森のすぐそばで、血だらけの女の人を隠しているところだった。
すぐに術を解除して、アスマ先生に報告したら、その日のうちに潜入していた忍は捕まった。

あのとき、殺された女の人が、私たちに助けを求めにきたのかもしれない。
それ自体は怖くなかったんだけど、なんだか間接的に臨死体験をしたみたいで少し参ったわ。
死んだらもう、ひたすら死んだことしか考えられない、あの感覚がどうにも…。

――つくづく、寿命で死にたいって、思ったわね。

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