掌編小説 | ナノ


▼第十三夜 「砂手」

砂隠れに近い砂漠まで足を伸ばしたことがある。
やはり砂地だと足場は安定しにくい。
下手に歩くと変に体が傾いで沈んでしまうから、オレたちは一歩ずつ足元を確かめながら歩いていた。

ガイ先生は…確かいなかったよな。
先頭はリーだった気がする。
その次にオレが続いて、すぐそばにテンテンがいた。

初めに異変に気がついたのはリーだった。
足につけたおもりのせいだろう。
蟻地獄のように足が沈み込んでいって、すぐにその場から離れた。
しかしそれを合図に、そこら中の砂がだんだんと巨大な渦を巻いた。

幸い依頼人のいない、届け物をするだけの任務だったおかげで、身軽だったオレたちは簡単に脱することが出来た。
とはいえ、深いところで膝のあたりまで砂に埋まりかけていた。
だから落ち着いてから、砂を払おうと、各自で服をはたいていたんだが…テンテン、知っていたか?

あのとき、テンテンの足に、手形が残っていたんだ。

――あの砂が意識を持って襲いかかったように感じたのは、気のせいではなかったらしい。

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